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プロレス再興の立役者・棚橋弘至が語る「やる気の自給自足」術

2015年04月13日 公開
2023年02月01日 更新

棚橋弘至(プロレスラー)

 

モチベーションは2段階でマネジメント

 仕事に対する使命感、待っているチャンスと困難への冷徹な認識。それに加えて、棚橋氏は独自のモチベーションの理論でやる気を高めていく。

 「モチベーションには2種類あると、僕は考えています。

 1つ目は、幸せのハードルを下げることによって得られるモチベーションです。

 プロレスの世界では、若い頃に1人で海外遠征に行くという伝統があります。たとえばメキシコに行くと、地方巡業では自分で移動して、ホテルを取って、さらに次の仕事も取ってこなくてはいけない。そこまでしてもファイトマネーはすごく低くて、怪我をしたら何の保障もない。そういう環境を経験すると、日本は恵まれているなと痛感するわけです。

 日々の仕事の中でも、昨日まで談笑していた仲間が怪我で突然いなくなる、といったことがこの世界では日常茶飯事です。長い巡業になると、控え室が唸っている選手だらけで、まるで野戦病院のようになっている……といったこともよくあります。

 こんなふうに、厳しい環境、大変な思いをしている人をたくさん見ているからこそ、『今日も食べられた』『試合ができた』『朝、ちゃんと起きられた』といったことに心から幸せを感じることができる。『自分は恵まれているな』と感謝できる。すると、モチベーションはあっという間に上がります。

 このように、ある意味では自分より恵まれていない人に目を向けることによって得られるのが第一のモチベーションです。

 そのうえで、今度は自分より頑張っている人、自分より結果を出している人などを見ることによって、『よし、もっと頑張ろう』と思う。これが第二のモチベーションです。

 このように、モチベーションには2種類ある。モチベーション向上も2段階で行なうといいでしょう」

 もちろん、こうしてモチベーションを上げて仕事に取り組めたとしても、結果はそう簡単にはついてこない。すると、いったんは盛り上がったモチベーションもしぼみがちだ。こうしたピンチにも、棚橋氏は極めてロジカルに対処する。

 「すぐに結果が出ない努力が、実は大きな意味を持っている、という経験は、誰でも大人になる前にしているはず。わかりやすい例が学校の勉強で、『こんなの、社会に出てからいつ使うんだよ』と思っていたけれど、大人になった今では『もっと勉強しておけば良かった』と思う……そんなことはよくありますよね。

 僕自身の経験で言えば、プロ野球選手になりたくて筋トレに取り組んだことや、大学卒業の肩書きを手に入れたことが、全く違うプロレスラーの道に進んだ今、役に立っています。

 同じことは、今やっていることについても言えるはず。たとえすぐには結果につながらなくても、長期的に見たら必ず必要なことなんだと。そう考えれば、やる気は出てくるはずです」

 

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