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「藻谷浩介と行く南三陸鉄道講演ツアー」同行取材ルポ 前編

2015年06月09日 公開

藻谷浩介(日本総合研究所主席研究員)

 2011年3月11日に発生した東日本大震災と、それに伴う巨大な津波によって、大きな被害を受けた南三陸地方。直後には頻繁に現地の様子がニュース映像などで伝えられたが、4年以上が経ち、報道されることは少なくなった。しかし、復興はまさに進行中であり、これからの道のりもまだまだ長い。現状を見るため、今年4月18日、NPO法人ComPus地域経営支援ネットワークが主催した「藻谷浩介と行く南三陸鉄道講演ツアー」に同行取材した。藻谷氏は同NPO法人の理事長であり、『デフレの正体』や『里山資本主義』(共著)などの著書がある。

《写真撮影:まるやゆういち》

[釜石市]
中心市街地は壊滅するも、住宅が多く残った街

 ツアーの始点はJR新花巻駅。補助席まで含めて満席の60人乗り大型バスで出発した。

JR新花巻駅前から大型バスで出発。

 復興の前線基地となった遠野市を経て、三陸海岸へと向かう。近代以前は、遠野から海へのメインルートは大槌に通じていたそうだ。しかし、日本で数少ない鉄鋼山のある釜石が、明治以降、製鉄所を中心に発展。鉱山から海岸へ、日本で3番目の鉄道(現在のJR釜石線)が敷かれ、やがてそれを延長する形で花巻~遠野~釜石のルートが整備された。我々が乗るバスも、鉄道とほぼ並行する幹線道路を通って釜石に入った。

 その道路や鉄道に沿うように、釜石の街は山の谷間から海へと向かって細長く伸びている。海のそばの飲食街が津波によって壊滅的な被害を受けた一方、谷間の奥に伸びる住宅地のほとんどは壊されずに残った。

山の谷間にあり、津波の被害を免れた釜石市の住宅。

「人口が最盛期に比べ半減している釜石には空き家が多いので、それらを活用すれば仮設住宅は建設しなくてもいいと、震災直後、私は主張しました。しかし、結局は、いくらか建設されましたね」(藻谷氏)

釜石市役所に近い天神町に建つ仮設住宅団地。

 津波が止まったのは、ちょうど新日鐵住金釜石製鉄所が建つ辺り。釜石製鉄所は一部が浸水被害を受けた。

 現在、釜石では鉄鉱石の採掘は研究目的以外では行なわれていない。鉄鉱石から鉄を取り出すための高炉の火も止まった。それでも、今も釜石製鉄所は釜石最大の工場である。

「作っているのは、自動車タイヤ用のスチールコードというワイヤーです。実は、原料の板は千葉県の君津製鉄所から船で運び込み、製品も君津へ運び出しています。それなら、君津に生産設部を移したほうが効率的ですよね。それなのに、なぜ釜石製鉄所を維持しているのか? それは、この製鉄所と東北地方の大学や工業高等専門学校の間で、地元出身・地元志向の優秀な人材を採用するためのネットワークができあがっているためです」(藻谷氏)

 釜石にはSMCという東証一部上場の機械メーカーの工場もあり、製造品出荷額等は昭和60年代よりも増えている。一方、人口は震災のずっと前から減少し続けていて、最盛期の9万人が、今では4万人を切るまでになっている。

「つまり、地方に先端工場を誘致することは、もはや人口増加策にはならないということです。機械化されたラインを少数精鋭の工員が動かす時代ですから」(藻谷氏)

 中心市街地では徐々に新しい建物が建てられてきているものの、かつて飲み屋街として栄えた通りには、その面影は残っていなかった。空地も目立つが、これから訪れる各地ほどの大規模なかさ上げ工事は見受けられなかった。

 

[釜石市鵜住居]
集落が丸ごと消滅した中、「釜石の奇跡」が起きた現場

 釜石市中心部から北上して、国道45号線の鳥谷坂トンネルを抜ける。険しい山が海岸まで迫っている三陸地方では、こうしたトンネルが開通する昭和40年代まで、沿岸の集落の間は船で往来していた。

[大槌町] 海に沿って広がる街を全面的にかさ上げ工事 >

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著者紹介

藻谷浩介(もたに・こうすけ)

〔株〕日本総合研究所主席研究員

1964年、山口県生まれ。日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)、米国コロンビア大学留学などを経て、現職。2000年頃より地域振興について研究・調査・講演を行なう。10年に刊行した『デフレの正体』(角川新書)がベストセラーとなる。13年に刊行した『里山資本主義』(NHK広島取材班との共著/角川新書)で新書大賞2014を受賞。14年、対話集『しなやかな日本列島のつくりかた』(新潮社)を刊行。



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