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何度言っても同じミスをする部下の「叱り方」

2015年08月05日 公開
2023年05月16日 更新

吉田幸弘(リフレッシュコミュニケーションズ代表)

管理職

人格ではなく「行動」にフォーカス

何度注意しても改善されない。厳しく叱っても、モチベーションを下げたり、関係が悪くなったりするだけで、肝心の行動が変わらない。そんな部下に悩む上司は少なくないだろう。部下にすぐに行動を変えてもらうための「叱り方」を、管理職へのコンサルティングの専門家・吉田幸弘氏にお聞きした。

 

何気ないひと言の中の「怒りの感情」に注意

上司が部下を注意するときについやってしまいがちなのが、自分の感情をむき出しにしてしまうこと。部下を「叱る」のではなく、「怒る」になってしまう上司が多いのです。前者は相手に適切な行動改善を促す行為ですが、後者は単に自分の感情を相手にぶつけているだけです。

上司がいつも怒っていると、部下は何か言われたときに「この場をどうやって切り抜けようか」「どうやって逃げようか」と後ろ向きの発想しかしなくなります。「どうすれば改善できるか」という前向きな発想が出て来ないのです。

怒りの感情は、ちょっとした言い回しに現われます。たとえば、よく上司が使うのが「前も言ったよな」というひと言。部下が同じミスを繰り返したときなどに、ついイラッとして口にしがちなフレーズですが、部下にしてみれば「一度言われたことを改善できない自分はダメな人間なのだ」と感じてしまいます。

もっとストレートに、「だからお前はダメなんだよ!」と言う上司もいますが、それはただの人格否定です。部下が作った資料に問題があるとき、本当はそのうちの一部を修正すれば問題は解決するのに、「お前はダメだ」と言われた瞬間に、部下は自分のした仕事すべてが否定されたと感じてしまう。営業成績は良いのに報告書の書き方が雑な部下を、上司がいつも「お前はダメだな」と叱っていたら、良かったはずの営業成績まで落ち込んでしまうという例もあります。人格を否定されて自信を失うと、人はできていたことまでできなくなってしまうのです。

大事なのは、部下の「人格」と「行動」をきちんと切り分けること。もっと積極的になってほしい部下がいても、「そんなに大人しいとリーダーは務まらないぞ」と人格を叱るのはNG。「君にこのプロジェクトを引っ張っていってほしいんだ」というように、あくまで「どのように行動してほしいのか」に置き換えて話すようにしてください。

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「クッションフレーズ」を用い、落ち着いて叱る >

著者紹介

吉田幸弘(よしだ・ゆきひろ)

リフレッシュコミュニケーションズ代表

成城大学卒業後、大手旅行会社、学校法人を経て、外資系専門商社へ転職。メンバーとのコミュニケーションに苦心し3度の降格人事を経験、クビ寸前の状態になる。その後、異動先で出会った上司から「伝え方」を学ぶことで営業成績が劇的に改善、マネジャーに返り咲く。現在はコンサルタントとして独立し、累計3万人のリーダーを育てている。

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