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孫正義はなぜ「未来」を予測できるのか?

2015年08月31日 公開
2015年09月11日 更新

三木雄信(ジャパン・フラッグシップ・プロジェクト社長)

 

そもそもなぜ、孫社長はIT業界を選んだのか?

この3つのポイントは、聞いてしまうと「なんだ、そんなことか」と思うかもしれません。しかし実際は、多くの人がこの点についてまったく考えずに物事を決めています。

とくに「当たりの多そうなくじ箱を選ぶ」というのは、成功するための基本ルールとも言っていいものですが、それを意識している人はとても少ないと感じます。

そもそも孫社長がITの分野で起業したのは、「これから発展するのが確実な業界だ」と考えたからでした。

その裏づけとなったのが「ムーアの法則」です。これは簡単に言えば、「コンピュータの性能は18カ月から24カ月ごとに倍になる」というものです。インテルの共同創業者であるゴードン・ムーアが1965年に唱えた経験則で、現在に至るまでこの法則が破られたことはありません。

当時からムーアの法則を知っていた孫社長は、いつかコンピュータが人間の脳を超える処理能力を持つ日が来ることを想定し、IT業界は今後も永続的に発展すると考えました。つまりIT業界で起業することは、「上りのエスカレーター」に乗るようなものだと確信したのです。

孫社長は決して「未来を予測」しているわけではありません。ただ、「上りのエスカレーター」を見つけ、それに乗ってきた。だからこそより多くの「当たり」を手にすることができ、周りの人からは孫社長が「未来が読める」ように見えるのです。

もちろんこの考え方は、仕事はもちろん、「結婚相手を探す」などというプライベートなことまで、あらゆるものに応用できます。

ぜひ、皆さんも意識してみていただければと思います。

(写真撮影:まるやゆういち)

著者紹介

三木雄信(みき・たけのぶ)

トライオン〔株〕代表取締役社長

1972年、福岡県生まれ。東京大学経済学部卒業。三菱地所㈱を経て、ソフトバンク㈱に入社。27歳で同社社長室長に就任。孫正義氏の下で「Yahoo!BB事業」など担当する。 英会話は大の苦手だったが、ソフトバンク入社後に猛勉強。仕事に必要な英語だけを集中的に学習する独自のやり方で「通訳なしで交渉ができるレベル」の英語をわずか1年でマスター。2006年にはジャパン・フラッグシップ・プロジェクト㈱を設立し、同社代表取締役社長に就任。同年、子会社のトライオン㈱を設立し、2013年に英会話スクール事業に進出。2015年にはコーチング英会話『TORAIZ(トライズ)』を開始し、日本の英語教育を抜本的に変えていくことを目指している。2017年1月には、『海外経験ゼロでも仕事が忙しくでも 英語は1年でマスターできる』(PHPビジネス新書)を上梓。近著に『孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術』(PHP研究所)がある。

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