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「若者の営業力」は本当に弱くなったのか? 

2016年08月02日 公開
2023年01月30日 更新

北澤孝太郎,石川明,常見陽平(千葉商科大学専任講師)

若手営業マンの成長機会を奪っているのは「エース社員」!?

営業ノウハウを自分で体得してきたオジサン世代と、効率的に知識として学ぶ若手。両者の意識には大きな差があり、そのギャップに悩むミドルのビジネスマンは少なくない。部下を指導する立場であれば、その苦悩はひとしおだろう。

常見氏  『人材が育つ営業現場の共通点』を読んで、新人にどう営業を教えればいいのかがわかったという反響があるそうですね。

北澤氏  時代とともに営業スタイルは変わっていきます。アポなしの訪問をしたり、接待を重ねて顧客との関係を深めたりするオールドスタイルの営業をしていた上司が、それを一方的に部下に押しつけても、部下は納得できません。若手は人に嫌われない営業をしたいのです。この本では、そうした若手にどう寄り添い、どうコミュニケーションを取ればいいのかについて書きました。コミュニケーションがうまく取れれば、お互いの営業の質を高められます。

石川氏  若手にとって成長機会となる大きな仕事を、先輩社員が奪ってしまうという問題も起こっていますよね。経済が上向きの時代であれば、大きな仕事が向こうからどんどんやってきますから、若手にも任せられた。失敗しても「良い経験になった」と言えたわけです。しかし、低成長時代に入ると余裕がなくなって、ノルマ達成のために、どうしても勝率の高い先輩社員が大きな仕事を担当するようになった。そのために新人が成長する機会を奪われています。

北澤氏  そのとおりです。結果は大切なのですが、行きすぎた成果主義によって、若手に成長機会となる仕事を任せられない。大きな仕事はエース社員が担当し続けるので、エース社員は疲弊してしまう。そういう悪循環が生まれています。

常見氏  日本企業の強みは、人が人を育てる連鎖にあったはずなんですけどね。そう考えると、私が働いていたことのあるリクルートは、若手への機会の与え方がうまかったです。

北澤氏  しかも、きちんと結果を出させることで、成長をさらに促していましたね。

常見氏  この本で印象的だったのは、一人ひとりの部下を見極めて機会を与える方法や人材が育つ環境作りについて言及している点です。たとえば、評価が決して高くなかった人材をあえて起用したエピソードが印象に残っています。

北澤氏  僕が課長になったときに、横浜で燻っていた人材を自分の係長に起用したエピソードですね。彼は営業部隊のエース社員になって、年間MVPももらいました。

石川氏  営業マネージャとして、勇気が必要な起用ですね。彼のどんなところを評価したんですか?

北澤氏  ごまかさずに、仕事に対して誠実に向き合っている姿勢です。実力はあるのに、なんらかの要因で成績不振に陥っている営業マンは多いのです。成績不振なのは実力がないからなのか、別の要因によるのかの見極めが重要です。

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人が育つ営業現場は安全を保障している >

著者紹介

北澤孝太郎(きたざわ・こうたろう)

レジェンダ・コーポレーション〔株〕取締役

1962年、京都市生まれ。85年、神戸大学経営学部卒業後、〔株〕リクルートに入社。20年にわたり、営業の最前線で活躍。2005年日本テレコム(現ソフトバンク)の執行役員営業本部長を経て、現在、東京工業大学大学院で特任教授を務める。著書にベストセラー『営業部はバカなのか』(新潮新書)、『優れた営業リーダーの教科書』(東洋経済新報社)がある。

石川 明(いしかわ・あきら)

新規事業インキュベータ石川明事務所代表

リクルート社の新規事業開発室のマネージャ、株式会社オールアバウトの創業を経て独立し、企業の新規事業開発に特化した支援業務を行なう事務所を設立。社内起業提案制度の設計などボトムアップの仕組み作りが得意領域。著書に『はじめての社内起業』(ユーキャン学び出版部)がある。

常見陽平(つねみ・ようへい)

千葉商科大学専任講師

1974年生まれ。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。㈱リクルート、㈱バンダイ、㈱クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て、2015 年より現職。働き方をテーマに執筆・講演などを行なう。『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社新書)など、著書多数。

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