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プライドはヨーロッパ。へ理屈はアジア(トルコ)

2016年09月06日 公開
2021年08月30日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(13)石澤義裕(デザイナー)

アジアとヨーロッパの狭間にて


夕方になると、女性は家の前で涼んでおしゃべり。

社員ゼロのミニマム会社を経営し、“赴任先を探す”海外出張に出て11年。世界90カ国で納期に追われる実践ノマド・トラベラー。社会保険を払い続ける、勤勉なバガボンドです。

見るからに頼りない軽自動車に股がり、稚内からツンドラの大地を走り抜けて33,000km。その昔はヨーロッパの3分の1をも制覇した帝国でありながら、いまだEUに入れてもらえぬトルコに突入しました。

うっかりするとイラクやシリアに迷い込みかねませんが、無事にイスタンブールでクーデターに遭遇。銃声とアザーンの二重奏は、絶望的な世紀末感です。

 

お金すら受け取ってもらえない? 度を越した親日ぶり

世界三大料理の一角を担うトルコにいながら、生憎のラマダンです。休みのレストランが多いため、朝、昼と断食すること多々。日没後の晩餐は、気取らず、気負わず、奇をてらわずの素朴な料理ながらも、毎晩、宴会のような盛り上がりです。初代大統領は酒豪で有名でしたが、世俗主義とはいえ基本的にムスリム。酒抜きなのが無念です。

トルコ人の親日ぶりは、やや度を超しています。

中国人と勘違いしているうちはミジンコほどの愛想も見せてはくれない彼らは、日本人だと名乗れば油断も隙もありません。手当たり次第にご馳走してくれます。

熱いチャイを奢られて、胸を熱くする日々。
アイスクリーム屋やレストランはお金を受け取らず、ときには平身低頭してお代を払う始末です。
ガソリンスタンドは無料で洗車してくれ、宿では洗濯が無料になり、カフェでは隣の客がケーキをご馳走してくれ、終いには手みやげを持たされます。

血相を変えた連中が追いかけて来たときは、マフィアに誘拐でもされるのかと怯えたものですが、お菓子を握らされました。
これ、食ってくれ!って。

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ドライブマナーはすでに「EU入りレベル」 >

著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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