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世界を股にかける「レアメタル王」の出張術とは?

2016年09月10日 公開
2023年05月16日 更新

中村繁夫(アドバンスト マテリアル ジャパン社長)

「とにかく身軽に」を実現するテクニックの数々

レアメタル専門商社を経営し、自身も日々、世界中を飛び回っている中村繁夫氏。世界の猛者たちを相手に交渉をまとめ上げるためには「いかに出張のストレスを減らすか」が大事だという。現場体験に裏打ちされたその出張ノウハウを明かしてもらった。

 

必ず「月曜の午後」に出発する理由とは?

「レアメタル王」の異名を持つ中村氏。年間出張回数は20回以上、年の約半分を国内外への出張で過ごすという。その行先も、ロシア、中国、欧州、アメリカなど多岐にわたり、今まで訪問した国は104カ国にも及ぶ。

「ロシアでレアメタルを買いつけ、中国で加工し、欧州で販売する……といったことはしょっちゅうですし、資源産出国だけでなく、学会への参加でアメリカに行くことも多く、出張先は世界各国に及びます。とくに、今後は資源国として注目を集めるアフリカのルワンダやコンゴ、イランといった国への出張が増えていくでしょう。

出張の予定を組む際に心がけているのは、なるべく予定を『パターン化』することです。2~3週間の長期出張は仕方がありませんが、近距離の出張の場合、なるべく月曜の午後に日本を経ち、金曜まで4泊5日で仕事をこなすようにしています。

理由の一つは、月曜に社内で定例会議を行なっているからです。出張でほとんど会社にはいないので、この会議には必ず出席することで、社員たちの様子を見たり、相談に乗ったりすることが大切なのです。
そして、その日のうちに飛び立つことで、出張先での夜の会食に間に合わせることができます。とくに『一緒に食事をすること』がビジネスの重要な要素を占める中国では、月曜の夜を会食に使えるのは大きなメリットです」

 

ストレスを溜めないため、機内ではひたすら休む

中村氏が出張において心がけていること。それは「なるべくストレスを溜めない」ことだ。

「そもそも出張するということは、わざわざ現地まで行かねばならない案件ということですから、基本、タフな交渉になります。移動で疲れ果ててしまっては、現地に着いてから力を発揮できませんよね。
ですから私は極力、飛行機の中で仕事はしません。執筆のアイデア出しくらいはしますが、基本、睡眠を取ったり、本を読んだり、映画を観たりと、思い思いの時間を過ごしてリラックスします。とくに映画に関しては、新作映画はほぼ、機内で網羅しているほどです。

また、海外出張の敵である『時差』の予防にも、睡眠が一番の薬です。ただ、西回りは機内の睡眠で十分対応できますが、東回りの場合、フライト中の睡眠に加え、到着後ホテルのベッドで仮眠をとり、シャワーを浴びて頭をシャッキリさせるようにしています」

また、現地でも自分なりの「楽しみ」を用意しておくことが重要だという。

「ホテルはなるべくサウナやスパ、フィットネスなどリフレッシュするための施設が充実しているところを選びます。また、時間ができればなるべく現地の美術館や博物館へ足を運んだり、現地のおいしいレストランに行ったりするのも、同じ理由から。ハードに仕事をするからこそ、自分への癒しの時間を用意しておくべきなのです」

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著者紹介

中村繁夫(なかむら・しげお)

アドバンスト マテリアル ジャパン代表取締役社長

1947年、京都府生まれ。大学院在学中に世界35カ国を放浪。専門商社の蝶理に入社し、以後30年間レアメタル部門で輸入買い付けを担当する。2004年、部門ごとMBOを実施し、日本初のレアメタル専門商社アドバンスト マテリアル ジャパンの代表取締役社長に就任する。著書に『レアメタル・パニック』(光文社)、『中国のエリートは実は日本好きだ!』(東洋経済新報社)、『中国との付き合い方はベトナムに学べ』(SB新書)などがある。

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