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人気作家が朝4時起きで執筆する理由とは?

2016年12月19日 公開
2022年09月21日 更新

江上剛(作家)

時間の「量」を減らすより「質」を高める工夫を

同じ時間働くなら、夜より朝のほうが効率はいい。日本版サマータイムなど、夜の時間を朝にシフトさせる動きも活発だ。ただし、江上氏は「単に残業時間を早朝に付け替えただけなら意味がない」と指摘する。

「残業の代わりに社員を朝早く出社させるのは、学校に行きたくない子供を無理やり学校に行かせるようなもの。本人が好きで早朝出社するならいいですが、仕事があるから仕方なく早く行くというのでは、これまでと何も変わりません。

大切なのは、時間の量ではなく質にフォーカスすること。私は13時間かけて百キロマラソンを完走しましたが、好きで走っているから精神的にまったく苦にならない。仕事も同じで、法定労働時間を遵守することは当然ですが、人間は自分が楽しいと思った仕事なら、長時間働いていても案外平気なものです。ゲームなんか何時間でもやり続ける人がいますからね。

逆に、たとえ短時間でも、人から無理やりやらされているだけの仕事はつらいものです。先日も、広告代理店の女性社員が自殺する痛ましい事件が起きましたが、被害者は単純に長時間労働だったから死を選んだわけではないでしょう。パワーハラスメントの要素があったから、働くことがつらくなったのではないでしょうか。

ビジネスマンは、たとえ会社にいなくても、24時間ずっと仕事のことが頭の片隅にあるものです。それが苦になるかどうかは、好きで取り組んでいる仕事なのか、人にやらされている仕事かによります。まずは、仕事を楽しめるようになること。それが本当に必要な働き方改革ではないでしょうか」

(『THE21』2016年12月号特集「今より1時間早く仕事が終わる働き方」より)

 

著者紹介

江上 剛(えがみ・ごう)

作家

1954年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。77年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。人事、広報等を経て、築地支店長時代の2002年に『非情銀行』で作家デビュー。03年に同行を退職し、執筆生活に入る。
主な著書に、『会社人生 五十路の壁』『ラストチャンス 再生請負人』『庶務行員 多加賀主水が許さない』『我、弁明せず』『成り上がり』『怪物商人』『翼、ふたたび』『クロカネの道』『奇跡の改革』『住友を破壊した男』『百年先が見えた男』などがある。

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