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「氷の国」だけに情熱が足りない!?(アイスランド)

2016年11月03日 公開
2021年08月23日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(15)石澤義裕(デザイナー)

最果ての金満国家にて

先行き不透明なこの時勢に、終わりなき世界一周を続けて11年。老後の話を一秒もしない、未来予想図のない夫婦ものです。
先日、北極圏の玄関口で結婚18周年を迎えました。2年後の結成20年には、解散してもいいくらいの絶妙な夫婦仲です。

 

スープ1杯1,500円のワンダーランド

ときどき白クマが流氷とともに流れ着く北の最果て、アイスランドに上陸。
島の北東にある港から最寄りの町まで、絶望的に禿げた大地。苔むした黄土色のうぶ毛が、寒々しいです。

神々さえ立ち寄りそうにない地球規模的限界集落アイスランドですが、日本をはるかにしのぐ金満国家。
今から数十年前に、国民ひとりあたりのGDPが独英仏を抜き、ヨーロッパ一を誇った国際競争力。
驚異的な物価高のお陰で、行きたくても行けない秘境だったわけですが、2008年のサブプライムローンの津波を喰らい、マクドナルドが撤退するほどのダメージを被ります。
通貨クローネが半額に暴落したことで、ボクらのような平民でも旅行ができるようになったわけで、よその国の金融危機はウェルカムです。

とはいえ、消費税25.5%。日本の3倍以上。
為替的に半分になっても、財布がいくつあっても足りません。

実は、結婚記念日は妻Yukoの誕生日でもあるダブルアニバーサリー。
奮発した食事が、ブロッコリーの入っていないブロッコリースープという現実。それでも1500円もしますから、スープ一杯が精一杯。
肉のあるステーキなんか頼んだら、いくらするのか想像もつかないワンダーランドなのです。


これが噂の一杯1500円のスープ。パンが2枚付きます。

 

殺伐とした大地に住むお金持ち国民たち

人が住むまで、キツネしかいなかった極地の島。
国土の10%が氷河。
以前は25%が樺の森林でしたが、伐採し過ぎて0.3%まで禿が見える化。

アイスランドの名に恥じぬ島に変わり果てたものの、インターネットの普及率は世界一。
よくぞここまでの先進国にしたものです。

殺伐とした大地が広がりますが、どこを走ってもぜんぜん貧乏臭さがありません。
アイスランド人はおそらくそうとうの働き者、努力家なのでしょう。

ただ一度はお金を転がして財を成したせいか、商売に情熱が足りない感があります。
なんとなく愛というか、「ぬくもり」が感じられないのです。


伝統的な雑草で断熱する屋根。

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著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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