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星野リゾートの現場力(8)トマムの「雲海テラス」

2017年02月03日 公開

星野佳路(星野リゾート代表)

「日常風景」が観光の目玉となった

日本を代表するリゾート運営会社・星野リゾートでは、「遊び」や「楽しみ」の中に仕事のヒントを見つけたり、逆に仕事をきっかけとした趣味を楽しんだりしている社員が多いという。本連載では、そのような「遊びと仕事」の融合の事例を、代表の星野佳路氏のコメントとともに紹介。第8回は、「星野リゾート トマム」から、トマム歴27年の「雲海仙人」が案内する「雲海テラス」をリポート。《取材・構成=前田はるみ》

 

標高1088mで働く、通称「雲海仙人」

北海道の中央に位置する「星野リゾート トマム」は、夏は山や川など北海道の大自然を堪能できるファミリーリゾートとして、冬は上質な雪を楽しめるスノーリゾートとして、観光客に人気の滞在型リゾートである。

こうした山岳リゾートで働く人には、アウトドア好きが多いというが、トマム勤務歴27年の鈴木和仁氏もその一人。「釣りが好きで、川釣りを楽しみにここで働いています」と笑う。

トマム山頂に程近い標高1088m地点が、鈴木氏の職場である。主な仕事はリフトやゴンドラの整備だが、夏は雲海テラスの運営に加え、「雲海仙人」としてゲストの案内役も担う。

雲海テラスは、5月から10月にかけて発生する雲海を見下ろすことができる山のテラス。かつてはゴンドラの整備スタッフだけが知る絶景スポットだったが、2005年からは夏の集客の目玉として営業を開始した。鈴木氏はそこで、雲海が発生するメカニズムや雲海の様子などをゲストに説明している。

今でこそ「雲海仙人」を名乗るが、最初から雲海について詳しかったわけではない。1種類だけだと思っていた雲海は、北海道大学との協働観測の結果、3種類あることも判明した。「雲海も、私が好きな釣りも、水が命です。雲海について勉強するにつれ、これまで以上に自然の雄大さや大切さが身に染みるようになりました」と話す。

 

「見慣れた風景」が一大観光スポットに

整備スタッフの仕事といえば、決められた整備の仕事を担うのが一般的だが、星野リゾートでは、すべてのスタッフが施設や地域の魅力作りに参加することが求められる。今や年間約13万人が訪れ、北海道を代表する人気コンテンツに発展した雲海テラスも、もとは整備スタッフの発案だった。

「私たちにとって見慣れた風景だった雲海が、ゲストにとっては『非日常』だったことは新鮮な驚きでした。整備だけを担当していた頃よりも仕事が増え、大変なことも多いのですが、自分たちのアイデアが形になり、お客様が喜ぶ様子を見ると、仕事に張り合いが出ます」

昨年は、雲海テラスの新スポットとして、まるで雲の上を歩いているかのような感覚が楽しめる「クラウドウォーク」をオープンした。最近は他社も雲海テラスを模倣し始めているといい、「新たな魅力を付加して、雲海テラスをさらに発展させていきたい」と意気込む。

雲海テラスが好評のため、「釣りをする時間もないほど忙しいのが悩み」だという。とはいえ、仕事の面白さには代えられないようだ。「自分たちにとっては日常でも、お客様にとっては非日常と感じられることが北海道にはまだまだあるはず。それらを見つけて提供していきたい」と抱負を語った。

 

星野佳路氏の視点――進化し続けるために >

iyashi

著者紹介

星野佳路(ほしの・よしはる)

星野リゾート代表

1960年、長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。日本航空開発(現・JALホテルズ)に入社。シカゴにて2年間、新ホテルの開発業務に携わる。89年に帰国後、家業である㈱星野温泉に副社長として入社するも、6カ月で退職。シティバンクに転職し、リゾート企業の債権回収業務に携わったのち、91年、ふたたび㈱星野温泉(現・星野リゾート)へ入社、代表取締役社長に就任。

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