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「お金の悩み」をすべて自動で解決するサービスを

2017年01月25日 公開
2022年05月25日 更新

辻 庸介(マネーフォワード社長CEO)

 

成功のために最も重要なのは「パッション」

 ――経営者としてのあり方は、どこかで学ばれたのでしょうか?

 マネックス証券で松本さんの下で9年間ほど働いていたので、松本さんの影響が大きいと思います。あとはドラッカーの本を読んだりもしました。本は好きですね。

 ――松本さんからはどんなことを学ばれましたか?

辻 たくさんあるのですが、松本さんほど優秀な人でもあんなに働くんだ、というのが一番印象的です。誰よりも考え、誰よりも動いていました。チャレンジしないと成功はないということです。

 他にも、信頼は1日でできるものではないとか、経営者はいつも笑っていろとか、楽観的であれとか、本当にたくさんあります。

 ――事業を成功させるために一番大事なことは、なんだと思われますか?

 パッションが大切だなと、最近は思っています。「ここに市場がある」とか「これをやると儲かりそうだ」とか「世の中にこういう流れがある」とかを考えて事業を始めると、続きません。「世の中をこう変えるんだ」というパッションがないと。当社の新サービスも、やりたい人がいるかどうかで、やるかどうかを決めています。

 ――創業当初よりも、今のほうが、パッションの大切さを強く感じられる?

 感じますね。「市場があるから参入しよう」と考えても、新しい事業をやろうとすれば必ず壁があるんです。市場があるのに誰も手をつけていないということは、参入障壁があるということですから。その壁を越えるには、結局はパッションしかありません。

 別の言い方をすると、みんなと同じことをしていても成功はできないということです。成功するためには、みんながムリだと思うことをやるしかない。

 ――社員をモチベートする施策はされているのですか?

 コミュニケーションの量と質を高めることが重要だと思います。ですから、会社が向かっていく方向をきちんと伝えるようにしていますし、社員が思っていることをアンケートで聞いたりもしています。私がひたすら質問に答える「CEOナイト」という会を開いたり、MVP社員にご馳走をする「MVP会食」をしたりもしています。時間も労力もかかりますが、みんなが肚落ちして、同じ方向を向いて働けることが大事ですから。

 よく「willとcanとmust」という話がありますよね。「やりたいこと」と「できること」と「やらなければならないこと」が重なったときに、人は一番能力が発揮できる。それを実現するにはどうすればいいのか、人事部と一緒に考え続けています。

 

 

世界の人たちの人生を変える挑戦

 取材前、マネーフォワードには「FinTechの隆盛」という時代の流れに乗った寵児というイメージを持っていた。しかし、辻氏の口からは泥臭い話が次々と出てくる。精神論には否定的なニュアンスを漂わせながらも、「パッション」という言葉が何度も発せられた。継続して成長し、雨後の筍のように現われたFinTechサービスのベンチャー企業の中でもひときわ頭角を表わすことができたのは、そのパッションがあってこそなのだろう。

 お金は人生と密着している。もし、テクノロジーによって本当にお金の悩みをなくせるのなら、人々の人生は大きく変わるはずだ。マネーフォワードの挑戦は、人々の人生をダイレクトに変えようとする挑戦だと言えるだろう。その日はいつ来るのか。そして、その先に、人々はどんな世界を作っていくのか。実に楽しみだ。

 

《人物写真撮影:まるやゆういち》

著者紹介

辻 庸介(つじ・ようすけ)

〔株〕マネーフォワード代表取締役社長CEO

1976年、大阪府生まれ。2001年、京都大学農学部卒業。11年、ペンシルバニア大学ウォートン校MBA修了。ソニー〔株〕、マネックス証券〔株〕を経て、12年、〔株〕マネーフォワードを設立。個人向けの自動家計簿・資産管理サービス『マネーフォワード』およびビジネス向けクラウドサービス『MFクラウドシリーズ(会計・確定申告・請求書・消込・給与・マイナンバー・経費)』などを提供している。

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