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事業を抱え込むのは経営者の「エゴ」である

2017年02月08日 公開

鷲見貴彦(ベンチャーバンク会長)

【連載 経営トップの挑戦】 第16回
〔株〕ベンチャーバンク代表取締役会長 鷲見貴彦

 

 ベンチャーバンクは、『まんが喫茶ゲラゲラ』を皮切りに、ホットヨガスタジオ『LAVA』やバイクエクササイズの『FEELCYCLE』など、次々と新たな事業を生み出し続けて成長してきた企業だ。自らを「インキュベーション・カンパニー」と位置づけ、軌道に乗った事業を分社化しているのが大きな特徴。しかも、子会社として分社化するわけではないという、独特のスタイルを取っている。創業経営者の鷲見貴彦氏は、なぜ1つの事業に満足せずに多角化を進め、しかも、せっかく成長した事業を分社化してきたのか? お話をうかがった。

 

人材育成で差をつけて、後発他社を寄せつけない

 ――ベンチャーバンクグループは数多くの事業を展開し、2010年度の94億円から2016年度の360億円(予測)へと、売上げを大きく伸ばしています。とくに大きく成長しているのは、どの事業でしょうか?

鷲見 フィットネス事業です。『LAVA』や『FEELCYCLE』、ダイエットのためのトレーニングジム『REAL FIT』、また2016年に始めたトランポリンフィットネスの『JUMP ONE』など、さまざまなブランドで展開しています。


ホットヨガスタジオ『LAVA』

 


バイクエクササイズ『FEELCYCLE』

 

 ――どういう人が利用しているのですか?

鷲見 20~30代の女性が多いですね。

 ――成長の理由はなんでしょうか?

鷲見 ブランドによって違うので一概には言えないのですが、共通しているのは、総合型のサービスを提供するのではなく、ブランドごとに専門化したサービスを提供していることです。

「総合型から専門型へ」という流れは、世の中全体で起こっていると思います。小売業で言えば、以前は、店に商品がたくさんあって、その中からお客様がほしいモノを選ぶ時代でした。でも、今のお客様はひと通りのモノを使ってみた経験があって、そのうえで、自分が気に入っているモノだけを買うようになっています。だから、いろいろなモノを売っている店よりも、自分が気に入っているモノだけを専門的に扱っている店のほうに魅力を感じる。

 フィットネスクラブも同様で、これまではプールとジムとスタジオがそろった総合型が乱立していました。お客様はプールもジムもスタジオも万遍なく利用していたのです。しかし、総合型のフィットネスクラブだとスタジオは2つくらいしかありませんから、たとえばヨガが人気になっても、ヨガのレッスンは1日に3回くらいしかできません。すると、「ヨガをやりたい」というお客様にとっては魅力的ではなくなるわけです。そうなると、ヨガを専門にしているスタジオに軍配が上がりますよね。

 ――『LAVA』にしても『FEELCYCLE』にしても、他社に先行して市場に参入したことが勝因の1つであると、ご著書に書かれています。ただ、先行しても、後発の他社にキャッチアップされてしまう可能性はあります。そうならないために、どういうことをされているのでしょうか?

鷲見 後発が参入してくるのは、だいたい5年後です。この5年の間に、どれだけ先まで行くか、ということだと思います。

 ――5年間で市場を押さえてしまうということですか?

鷲見 それだけではなく、サービスのレベルやブランド価値など、すべてにおいて先に行くのです。

 我々がホットヨガ市場に参入した2004年当時、ホットヨガの専門店は他にありませんでした。だから、私たちは他社から学ぶことができなかったわけで、初心者でした。でも、後発でホットヨガ市場に入ってきた会社も初心者です。初心者同士の競争では、5年先に始めているだけでも決定的に有利なのです。

 ――御社がその5年間で築いた、他社には真似できない部分とは、具体的にどこなのですか?

鷲見 人作りです。インストラクターをいかに短期間で育成し、多く輩出するか、という部分ですね。

 当社には約1,500人のヨガのインストラクターがいます。それぞれが、たとえば100人ずつのお客様に教えられるとしたら、全部で約15万人のお客様に教えられることになります。ヨガの達人なら100人よりももっと多くの人に教えられるでしょうが、ヨガの達人は日本に何人もいません。他社がいくらヨガの達人を集めてきても、15万人には教えられないわけです。

 ――『LAVA』以外の事業についても同じ?

鷲見 同じです。たとえば、『FEELCYCLE』はこれまで日本になかったエクササイズですから、インストラクターは育てるしかありません。他社が「経験者募集」と広告を出したところで、経験者は当社にしかいないのです。

 ――短期間でインストラクターを育成するためのポイントはなんでしょうか?

鷲見 自分が提供しているサービスに対して意義を感じてもらうことです。「仕事だからやっている」ではなく、「このサービスでお客様を幸せにしたい」という動機づけができるかどうか。それにプラスして、もちろん、専門性を高めるための教育も行なっています。

 ――社員研修を頻繁に行なわれているということですが、そうした場で教育するのでしょうか?

鷲見 それもありますし、年に2回「称賛の場」というものを設けて、「そこで表彰されたい」と思ってもらうようにもしています。短期的な目標を設定することも重要です。

「称賛の場」というのは、事業ごとに全員が集まって、優秀者を表彰したりする場です。優秀な店舗のスタッフに海外研修の機会を与えたりもして、やる気を出してもらえるようにしています。

 

新規事業を生み出し続ける方法とは? >

iyashi

著者紹介

鷲見貴彦(すみ・たかひこ)

〔株〕ベンチャーバンク代表取締役会長

1959年生まれ。岐阜大学教育学部卒業後、名古屋の出版社に入社し、コンピュータ部門に配属。89年、〔株〕船井総合研究所に転職し、経営コンサルタントとして数々の実績を残す。 90年にベンチャーバンクの前身となる〔有〕トータルアクセスカンパニーを設立。94 年に〔株〕船井総合研究所を退社。その後さまざまな新規事業を立ち上げ、2005 年、〔株〕ベンチャーバンクを設立。インキュベーション・カンパニーとして、『LAVA』『FEELCYCLE』『まんが喫茶ゲラゲラ』『養蜂堂』『ゆずりは』『ファーストシップ』『REAL FIT』『Re:Bone』『mana Labo』『泰氣堂』『DanjoBi』『プラチナボディ』『天空の庭 天馬夢』『JUMP ONE』などの事業を創出する。著書に『i人経営 瞑想から生まれた新ビジネスモデル』(日経BP コンサルティング)、『僕の会社にもっと来なさい』(マガジンハウス)などがある。

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