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野口悠紀雄の「ブロックチェーン」講義 第2回「2つのブロックチェーン」

2017年02月13日 公開

野口悠紀雄(経済学者)

新ビジネスが続々と立ち上がりつつある

あらゆるビジネス、組織の在り方、さらには私たちの働き方にまで本質的な変革をもたらすという「ブロックチェーン」。

野口悠紀雄氏による前回の講義では、ブロックチェーンへの注目度を一気に高めた日本のメガバンクによる独自の仮想通貨構想が、実はブロックチェーンとは似て非なる「まがいもの」を用いていることが指摘された。

それは一体、どういうことなのか。この問題を考えることで、ブロックチェーンという革新的技術がどんな考え方で成り立っているのかをより深く理解できるはずだ。

 

プライベートブロックチェーンは「まがいもの」?

――前回、「銀行が独自に進めている仮想通貨発行は、確かにブロックチェーンを使っているが、ここまで説明してきたブロックチェーンとは似て非なるものだ」というお話をうかがいました。具体的にはどういうことなのでしょうか。

野口 前回、その仕組みを解説したブロックチェーンは、誰が入っているかわからない、誰でも自由に入れるコンピュータの集まりによって運営されるというものでした。ビットコインの場合には、世界中で7千から1万のコンピュータが参加していると言われています。このように、誰でも自由に入れるブロックチェーンは「パブリックブロックチェーン」と呼ばれます。

これに対して、三菱東京UFJ銀行などが行なおうとしているのは、「ネットワークに入るコンピュータを自分たちが決める」というものです。そして、ブロックチェーン全体を自分たちがコントロールする。誰もが自由に入ることのできるP2Pとはまったく違います。これは「プライベートブロックチェーン」と呼ばれます。

プライベートブロックチェーンは、ネットワークに含まれるコンピュータの数が少ない。たとえば、日本取引所グループがプライベートブロックチェーンを証券業務に応用する実証実験を行っていますが、参加しているコンピュータは10台以下です。

――パブリックブロックチェーンとプライベートブロックチェーンの差は、参加しているコンピュータの台数ということなのでしょうか。

野口 そもそも、根本思想が違います。ブロックチェーンは、これまでインターネット上では不可能だった「信頼の確立」を可能にしたと言いました。ブロックチェーンという仕組みがあり、そこに十分に多いコンピュータが参加していることで、悪いことをしようとしても割に合わなくなる。だから信頼できるというのが、パブリックブロックチェーンが起こした「革命」です。何を信頼しているかというと、ブロックチェーンの仕組みを信頼しているのです。

一方、プライベートブロックチェーンでは、「三菱東京UFJ銀行は悪いことをやらないだろう」「日本取引所は悪いことをやらないだろう」という、企業や組織への信頼がベースとなります。これは「amazonのサイトだからクレジットカード情報を入力しても大丈夫だろう」という、従来のインターネット上での信頼の仕組みとまったく同じです。

――つまり、組織を信用しなければならない、ということですね。

野口 そうです。社会革命と呼ぶべきパブリックブロックチェーンに対して、プライベートブロックチェーンを「革命」と呼べるかどうかは疑問です。両者はまったく違うものです。ただ、新聞などの報道・解説で、その点が指摘されることはあまりありません。

マウントゴックス破綻で証明された「ビットコインの信頼性」 >

iyashi

著者紹介

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)

早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問/一橋大学名誉教授

1940年、東京都生まれ。63年、東京大学工学部卒業。64年、大蔵省入省。72年、イェール大学Ph.D(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2011年より現職。著書に、『「超」整理法』(中公新書)、『超「超」整理法』(講談社)など、ベストセラー多数。

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