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日本一のチームを作り上げた「指導をしない」マネジメント

2017年02月14日 公開
2023年03月23日 更新

栗山英樹(元プロ野球選手、監督)

 

監督はリーダーではなく「マネージャー」

「本当にこの選手のためになることはなんだろうか」を常に考え、時には厳しい決断を下す栗山監督。ただしそれには、リスクが伴うこともあるはずだ。たとえばいくら監督が、その選手のことを思って2軍行きを命じたとしても、選手のほうはそれですっかり自信を喪失し、潰れてしまうかもしれない。

「そうですね。だからこそ一人ひとりの選手の性格や、心身の状態を把握しておくことが大切になります。僕は選手に技術的な指導はほとんどしません。選手のちょっとしたしぐさや表情、練習中の態度などをひたすら見ています。

 そして選手の性格や精神状態を踏まえたうえで、どんな態度で接するか、言葉がけをするかを考えます。人によって、褒めたほうがいい、叱ったほうがいいなど違いがあるうえ、同じ人でも立場や状況によっても変わってきます。一概に、どうすることが正解というのがないので、よく見ることが大切なのです。

 僕は『教える』という感覚はあまりなく、選手が持つ良さを引き出し、適材適所で輝くようにマネジメントをしているだけです。引っ張っていくリーダーというよりは、マネージャーのような役割が近いかもしれません。

 もう一つ心がけているのは、『自分の考えが正しい』とは絶対に思わないことです。『これがその選手のためになる』と思ったとしても、もしかしたらその考えは監督の独り善がりかもしれません。そうして他人の意見にも素直に耳を傾け、そのうえで『これで本当にいいのだろうか』と、自分自身に深く問いかけてから結論を出すようにしています」

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優勝したからこそあえてチームを「崩す」 >

著者紹介

栗山英樹(くりやま・ひでき)

北海道日本ハムファイターズ監督

1961年、東京都生まれ。東京学芸大学を卒業後、84年に内野手としてヤクルト・スワローズに入団。1年目で一軍デビューを果たし、88年には、3割3分1厘と活躍。89年にはゴールデングラブ賞を獲得。90年の引退後はスポーツジャーナリストとして幅広く活躍。2012年、北海道日本ハムファイターズの監督に就任し、1年目にしてリーグ優勝を果たす。16年、11.5ゲーム差を逆転し、4年ぶりにリーグ優勝。日本シリーズも逆転優勝した。著書に、『未徹在』(ベストセラーズ)など。

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