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コミュニケーションは「相手本位」を意識しよう

2017年05月23日 公開
2023年09月08日 更新

能町光香(リンク代表取締役)

焦って距離を縮めようとすると失敗する

とくに社外の人に対するときに心がけてほしい習慣が、「助走期間を置くこと」です。急に距離を近づけようとせず、最初は挨拶などだけにとどめるなどの「助走期間」を置くという考え方です。

たとえば新商品のプロモーションをかけたいとき、「突然思い出したように」訪問するのはいい印象とは言えません。小さな用事を作って一、二度訪問し、三度目くらいにその話題を出すほうが、相手もいい印象を持ってくれます。これまた、相手が心地よく感じるタイミングを尊重した「相手本位のコミュニケーション」の手法と言えます。

誤解されがちなのですが、こうした相手本位のコミュニケーションは、決して「自分を犠牲にする」ことではありません。上司に唯々諾々と従ったり、部下に甘い評価を下したりするのは、相手本位ではなく単に「嫌われたくない」という気持ちの表われ。自分の意見はきちんと持った上で、周囲の状況に応じて「言うべきか、黙っているべきか」を判断する、トータルな視点が大切なのです。

人に嫌われなくないという人は、「コミュニケーションはあくまで手段」と割り切ってしまいましょう。仕事上の関係構築は成果を上げるための手段。「嫌われることもあって当たり前」という覚悟を持つべきでしょう。

マニュアルを超えた「プラスα」で勝負

コミュニケーションには「こんなときにはこうすべし」といった「正解」はありません。相手のニーズ、周囲の状況、そして自分の見解。各場面で異なるそれらの情報を瞬時にすり合わせ、ベストと思われる答えを出す――コミュニケーションとは、そうした判断の連続です。

ここで意識してもらいたい習慣が、「プラスαを加える」こと。たとえば当たり前の褒め言葉の後に、「あのときのご指導があったから成長できました」といった、相手独自の人柄や行動に即した言葉をプラスするのです。
真のコミュニケーションの達人は、マナーや良識を踏まえながら、マニュアルを超えた自分らしいコミュニケーションを取ることで、「この人と仲良くなりたい」と思わせるのです。

私の元上司の例を挙げます。年末に部下への労いとして職場でちょっとしたクリスマスパーティーを開きました。そのとき元上司は、シャンパンに一人ひとりへの感謝の言葉や褒め言葉を書いたカードを添えて手渡したのです。「あのプロジェクトは、あなたのおかげで成功しました」「○○の件で頑張ってくれましたね」などとそれぞれに宛てた慰労のメッセージに、部下は感動。まさに、マニュアルにないコミュニケーションで、こういう人にこそ部下は「ついていきたい」と思うのではないでしょうか。
こうしたプラスαの気遣いを習慣化し、「この人と仲良くなりたい」と思われるような人を目指したいものです。

 

《『THE21』2017年5月号より》

著者紹介

能町光香(のうまち・みつか)

〔株〕リンク代表取締役/日本秘書アカデミー代表/人材育成コンサルタント

青山学院大学、The University of Queensland大学院卒業。京都大学経営管理大学院(MBA)在学中。留学後、10年間にわたり、外資系企業数社にて、経営層を補佐するエグゼクティブ・アシスタント(社長・重役秘書)を務めたのち、独立。現在は、企業研修や講演、執筆活動を行なう。。21万部のベストセラー『誰からも「気がきく」と言われる45の習慣』(クロスメディア・パブリッシング)、『なぜ一流のリーダーは東京-大阪間を飛行機で移動するのか』(扶桑社新書)など著書多数。

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