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星野リゾートの現場力(16)界 川治の「里山体験」

2017年07月01日 公開

星野佳路(星野リゾート代表)

「限界集落」への問題意識から観光業界へ

日本を代表するリゾート運営会社・星野リゾートでは、「遊び」や「楽しみ」の中に仕事のヒントを見つけたり、逆に仕事をきっかけとした趣味を楽しんだりしている社員が多いという。本連載では、そのような「遊びと仕事」の融合の事例を、代表の星野佳路氏のコメントとともに紹介。第16回は、「界 川治」より、大学院での研究をきっかけに「里山」の魅力に気づき、里山体験のアクティビティに携わるスタッフをレポート。<取材・構成=前田はるみ>

 

里山の魅力を伝えて地域活性化に貢献したい

栃木県北部の自然に囲まれた里山に佇む温泉旅館「界 川治」。ここでは、水車や石臼、火鉢など昔ながらの生活の知恵に触れられるアクティビティが用意されており、現代では珍しくなった里山暮らしを体験できる。

里山に魅了され、その魅力を多くの人に伝えたいと星野リゾートに入社してきたのが、入社2年目の吉田郁子氏だ。「界 川治」で接客やハウスキーピングなど通常のサービス業務を担うかたわら、里山体験の一環としてゲストに提供する、地元特産品の野州麻を使った紙すき体験も担当する。

大学で建築史を学んだ吉田氏は、古民家再生の研究を通じて限界集落の存在を知り、里山に興味を持った。研究のため訪れた房総半島の集落で、人が自然と共存してきた長い歴史や暮らしの知恵があることを知り、心を惹きつけられた。と同時に、「産業構造の変化で林業が衰退し、人が離れ、集落が消えていくことに衝撃を受けた」と話す。

失われつつある里山の魅力を、観光の力で甦らせ、地域活性化に貢献できないか――。そんな思いから今の仕事を選んだ。

 

 

地元の人から教わった里の土産「とち餅」

「里山」をテーマに掲げる「界 川治」は、吉田氏にとって希望どおりの職場だといえる。川治には川治の歴史や暮らしがあり、それを知るにつれ、川治を好きになっていった。川治の魅力をゲストにもっとわかりやすく伝えられないだろうかと、奮闘する毎日だ。

持ち前の好奇心と行動力で地域に溶け込み、サービスのヒントを得ることも多い。

たとえばこんなことがあった。今年の正月、ゲストに里帰り気分を味わってもらおうと、餅つきなどの催しを企画した。ただ、帰り際に手渡す「里の土産」のアイデアがなかなか思いつかない。そんな時、地元で親しまれる「とち餅」を教えてくれたのは、ラーメン店の女将だった。とち餅は、あく抜きしたトチの実を混ぜてついた餅で、正月祝いなどでも作られる地元料理だ。

「地元では当たり前の文化でも、外から来た私たちが発掘することで、この土地でしか味わえない魅力としてゲストに伝えることができる。このことを改めて実感しました」

自分が好きなことだから、想像が膨らんでいく。「好き」は、仕事を楽しむだけでなく、その人ならではの発想や視点を仕事に生かすコツでもあるようだ。

 

 

「現地発の進化」に日本旅館の強みがある >

iyashi

著者紹介

星野佳路(ほしの・よしはる)

星野リゾート代表

1960年、長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。日本航空開発(現・JALホテルズ)に入社。シカゴにて2年間、新ホテルの開発業務に携わる。89年に帰国後、家業である㈱星野温泉に副社長として入社するも、6カ月で退職。シティバンクに転職し、リゾート企業の債権回収業務に携わったのち、91年、ふたたび㈱星野温泉(現・星野リゾート)へ入社、代表取締役社長に就任。

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