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五感を使った仕事を意識する 錺簪職人 三浦孝之

2017年05月10日 公開
2023年07月12日 更新

<連載>一流の職人に学ぶ「仕事の流儀」第6回

五感を使った仕事を意識しよう

 わずかなバランスが、作品の良し悪しを決定する厳しい世界。微妙な差を感じ取るために心がけていることはあるのだろうか。

「動植物をモチーフとしているから、ということもありますが、できるだけ自然に触れるようにしています。その中で、昆虫や植物などをよく観察していると、わずかな変化に気がつくのです」

 私たちは、デジタルに囲まれた生活に慣れ過ぎてしまって、何かを察知する感覚や感性が鈍っているのだと、孝之氏は指摘する。

「画面を通して花を見ても、匂いや柔らかさはわかりませんから、作品に質感が生まれません。本物に触れないと、こうした差はわからないでしょう」

 日々アンテナを立てて、五感を働かせてみる。これは、私たち一般的な仕事をするものにも、役立つのではないだろうか。小さな変化を見過ごさないために、五感を働かせた仕事を心掛けていきたい。

自分で納得した作品でお客様に喜んでもらいたいと語る孝之氏。凝りすぎる余り、予算以上の時間や手間をかけてしまわないよう気をつけていると言う。「仕事の手をどこで止めるか」も仕事の大事なポイントだという

 

2017年6月号 一流の職人に学ぶ「仕事の流儀」

写真撮影 永井浩

著者紹介

三浦孝之(みうら・たかし)

錺簪(かざりかんざし) 職人

1967年、東京生まれ。デザイン専門学校を卒業後、広告代理店で、デザイナーを志す。25歳のとき、祖父の死をきっかけに家業である錺簪の仕事を継ぐことを決意。歌舞伎や日本舞踊といった舞台用の簪の製作を中心に活動している。

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