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2045年に仕事がなくなる?「AI時代に生き残るスキル」とは

2017年08月08日 公開
2023年03月24日 更新

神野元基(COMPASS CEO)

学校では教えてくれない検索リテラシーが重要に

能動思考は、あくまでもマインドの話です。では、スキルとしては何が必要になるのでしょうか。

共通して求められるのは、情報を調べる力です。何かを解決したいという思いが強くても、そのやり方がわからないという人が少なくないからです。

具体的には、検索リテラシーを磨くべきです。どのようなキーワードで調べれば、役に立つ情報にアプローチできるのか。また、SNSでの情報収集力も重要です。今や一国の大統領でもSNSで発信する時代ですから、一流の人の発信を見るだけでも世の中の動きがわかります。

 

多くの仕事で必須になる「STEM」とは?

ビジネススキル以前の根本的な能力としては、STEMが今後は必須になるでしょう。

STEMとはScience(サイエンス)、Technology(テクノロジー)、Engineering(エンジニアリング)、Mathematics(数学)の頭文字から作られた造語で、ハイテク産業で求められる知識やスキルを指します。

なぜSTEMが欠かせないのか。前提として、シンギュラリティを迎える頃には、世界中でベーシックインカム(最低所得保障)が導入されると予想します。支給額は月7~8万円程度かもしれませんが、さまざまなことが機械化されて生活コストが下がるので、それで十分です。

たとえば漁業では船が勝手に漁に出かけて、ドローンが魚を運び、ロボットが調理してくれる時代になります。よって、この時代に必要とされるのは、一連のシステムを作る力であり、システムを作る力を育むのがSTEM教育というわけです。

STEMの中でもとくに重要なのは、エンジニアリングの1つであるプログラミングです。先ほど漁業の例を挙げたように、今後すべての産業がテクノロジーによって変貌を遂げます。最先端のテクノロジーによって自分の業界がどう変わっていくのかわからないと、時代から取り残されるばかりです。

もっとも、人工知能時代の仕事のうち、機械化や自働化に関する仕事は6~7割くらいです。最低限の生活が保障される時代になれば、人々の関心は物質より精神の充足に向かいます。

その結果、残りの3~4割は精神や頭を満たすサービスで占められるようになります。こちらの仕事で生きていく人は、STEMよりも、人間とは何かと探求していく教育が必要になるでしょう。

 

もうすぐ、外国語を学ぶ必要がなくなる!

テクノロジーが進むことで、逆に不要になるスキルもあります。たとえば英語をはじめとする外国語です。

今年1月、Google翻訳が劇的に進化しました。英語の論文なら、かなりの精度で正しい日本語になります。

ニュースなどの堅めの文章も、助詞が多少間違っている程度で、実用には問題ない。口語はまだ難しいところがありますが、これも時間の問題。今の中学生が大人になるころには、言語の壁は完全に消えてなくなるでしょう。

10年後を見据えると、もはや単語や文法を教える英語教育は不要です。それよりも大切なのは異文化理解です。

たとえば、日本では20歳以上であれば飲酒は自由ですが、飲酒を不道徳なものとしたり、禁止する国や地域もあります。外国人とコミュニケーションを取るときには、単語や文法を覚えるより、こうした文化や常識の違いを知ることのほうがずっと役に立ちます。

さらに長期的に見れば、外国語以外にも不要になるものはたくさん出てきます。世界的起業家のイーロン・マスクは、脳の中にチップを埋めてコンピュータを制御する「ニューラル・レース」の研究を始めました。この技術が実用化されれば、現在学校で行なわれている教育の大部分がいらなくなる可能性すらあります。

これから大人になっていく子供たちに対しては、テクノロジーの進展を踏まえた長期的な視点で教育を行ないたいものです。

 

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著者紹介

神野 元基(じんの・げんき)

〔株〕COMPASS CEO

慶應義塾大学在籍中、ラスベガスで行なわれたWorld Series Of Pokerにて19位。その後㈱PokerFaceを立ち上げ、自身も電子出版業界で年間4億円の売り上げを達成。シリコンバレーにて感情センシングサービスSmileBacks.incを設立。2045年に起こるシンギュラリティを考え、子供たちに未来を生きる力を身につけて欲しいとの思いから、12年より学習塾COMPASSを設立。人工知能型教材Qubenaを開発し、学校教育に比べ7倍の学習効果を実現。

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