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メンタルダウン・リスク急増時代!

2017年07月12日 公開

大室正志(医療法人社団同友会 産業医室 産業医)

まずは小さな対処法を知り、
ときには「逃げる」選択も

なぜ今、メンタルヘルスという言葉がこんなにも注目されるようになったのか? メンタルダウンのリスクが誰にでもある以上、知っておくべきセルフチェックの方法とは? 業界・規模もさまざまな約30の組織で産業医を務める大室氏にお話をうかがった。〈取材・構成=中村富美枝、写真撮影=まるやゆういち〉

 

なぜ、メンタルの問題は増加しているのか?

今、業界を問わずメンタルへルスの問題が増加しています。増加の背景にはいくつかの理由がありますが、一つめには「流動性の上昇」が挙げられます。

終身雇用の時代には「会社を辞める」選択肢がなかったため、八方ふさがりになりやすく、重度のうつ病を発症するようなケースが多くありました。こうした傾向は、地方の工場など非常にドメスティックな職場で今も見られますが、どちらかというと減りつつあります。

一方、現在クローズアップされているのはむしろ、流動性が高くなったことによる「やや軽めの症例」です。当然、放置すれば深刻な事態に進展します。流動性の高い企業では、年齢にかかわらず「入社一年目」の人が常に存在します。転校生がクラスに馴染みにくいのと同じで、心を病むのは圧倒的に一年目が多いのです。

人間にとって最も難しいのは、環境変化に対応すること。たとえそれが栄転や昇進であっても、環境変化にストレスを感じるのは動物の本能です。
外資系やベンチャー企業でとくに目立ちますが、最近は社会全体で流動性が上がっているため、誰にでもメンタルの問題が起こりうる時代になったというわけです。

 

「モバイル化」で週末も仕事モードに

メンタルヘルス問題が深刻化したもう一つの背景は、「仕事の複雑化とモバイル化」です。仕事自体が複雑化するのと並行してモバイル機器が発達し、これが明らかにストレスを増加させています。

かつて携帯電話などのモバイル機器は、上級社員が“決裁権とセット”で会社から与えられていました。決裁権とモバイル端末のセットで、彼らの仕事の効率は上がったでしょう。外出先でメールを受信し、「もうちょっとこうして」などと返事ができるのですから。

しかし、現代の部下は決裁権もないのにモバイルを持たされています。「あの件はどうなっている」と、週末でもお構いなしに追い立てられているのです。上司は「週末といっても、一度しかメールしていないよ」と思うかもしれません。しかし、その一回がいつ来るかわからない部下は、仕事モードの頭をシャットダウンできません。

PCと同じく人間の脳も、シャットダウンできずにいればどんどん負荷がかかります。負荷がかかれば動作が遅くなり、能率が下がるのは言うまでもありません。

また、仕事の複雑化にともなう上司と部下の関係変化も、マネジャーのメンタルを脅かしています。今の中間管理職は、プレイングマネジャーです。しかも、仕事のプロジェクト化が進み、事案ごとにチームのフォーメーションが変わるため、自分はマネジャーなのかプレイヤーなのか、アイデンティティが常に揺らいでいるのです。

そのため、マネジャーに徹するべき場面でつい、「自分のほうがうまくできる!」と、優位を示すべく部下に“マウンティング”してしまうことも。
こういうタイプは一見強そうに見えて、部下からのフィードバックで自分への批判を目にすると、ひどく傷つく傾向があります。

マウンティングの原因は不安です。本来ならマネジャーとしての自覚を持ち、部下に対抗するようなことは避けるべきですが、当の本人は不安を自覚できておらず、「部下のため」と思っていたりするのでやっかいです。

そのマウンティングを真に受けて病んでしまう部下も増えています。マウンティングや、それが行きすぎパワハラ化しているようなケースでも、声を上げられない部下は多いもの。「上司は自分の成長のためにああいう態度をとってくれているのだ」と自分に言い聞かせていても、ある日限界がきて突然会社に来られなくなったりもします。

今、職場では、年齢や立場にとらわれず実力を発揮しやすくなった一方で、役割が複数化・複雑化し、みなが不安定になっているのが現状です。

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著者紹介

大室正志(おおむろ・まさし)

医療法人社団同友会 産業医室 産業医

1978年生まれ。産業医科大学医学部医学科卒業。専門は産業医学実務。ジョンソン・エンド・ジョンソン㈱統括産業医を経て現職。メンタルヘルス対策、インフルエンザ対策、放射線管理など企業における健康リスク低減に従事。現在、日系大手企業、外資系企業、ベンチャー企業、独立行政法人など約30社の産業医業務に従事。

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