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残業ゼロの企業に学ぶ「業務効率化のための6つのルール」

2017年08月14日 公開
2022年12月22日 更新

岩崎裕美子(ランクアップ代表取締役)

岩崎裕美子

「仕事の棚卸し」と「6つの社内ルール」

当初は、残業ゼロに反対する声も多かった。子供がいない社員も多く、何より仕事の量が多すぎて定時に帰れるはずがないというのだ。そこで実施したのが、仕事の棚卸しである。

「どの仕事にどれだけ時間をかけているかを一覧にしてみると、ムダは一目瞭然でした。たとえば、週に1度の会議の資料作成に、週8時間もかけていたことがわかりました。

最初は作成時間の短縮も考えましたが、思い切って会議自体を月2回に削減。『やったほうがいい』というレベルの仕事は思い切ってやめる。やめて不都合があれば、戻せばいいのです。棚卸しは年に2回、定期的に行なっています」

また、自分たちよりも専門家に任せたほうがいい仕事は、どんどんアウトソーシングした。これも、残業ゼロを達成できた大きな要因だった。

「私たちは、採用活動、ホームページ作成、コールセンター、配送業務など、多くの仕事をアウトソーシングしています。餅は餅屋、プロに任せるほうが精度が上がり、効率的です」

アウトソーシングを成功させるコツは、理念の共有だという。

「やみくもに外注しているわけではありません。パートナー企業には、私たちの企業理念や考え方を最初に伝えます。目的を共有すれば大きな仕事も任せられますし、そのうえでパートナー企業同士をつなげれば、より高次の効率アップも可能です。

たとえば、コールセンターと配送会社を引き合わせ、配送トラブルが起きた場合は私たちを介さずやり取りし、迅速に解決してもらっています。
すべては信頼関係があるからこそできることです。

以前の広告代理店時代は、お金がもったいないからとなんでも内製化していました。ただその結果、深夜残業の日常化、女性社員の離職が続いた経験があるので、今ではパートナーとの仕事の共有は欠かせません」

業務スピードを上げる「6つの社内ルール」も制定した。

ランクアップの≪ムダをなくす6つの社内ルール≫
(1)社内資料は作りこまない
(2)会議は30分
(3)メールで「お疲れ様です」は使わない
(4)社内のスケジュールは勝手に入れる
(スケジューラーに空きがあれば、相手が社長でも勝手にアポ入れ可能)
(5)プロジェクト化
(仕事はプロジェクト化し、少人数で回す)
(6)社内の根回し
(仕事の質アップと問題の早期発見のため、企画の初期段階から他部署の意見を募る)

「『会議は30分』は、社員からの提案です。昔は会議に2時間かけ、結論が出たと思ったら翌日に変更、なんていうこともしばしば。これには私も社員も疲弊しましたね。今はどんな会議も30分と決めているので、速やかに結論が出ます。結局、30分で決まらないことは、2時間かけても決まらないのです。

『社内メールに"お疲れ様"と書かない』も社員の提案。取引先に対しては別ですが、社内では挨拶なしでいきなり用件を書きます。また、社員間は『さん』づけです。新入社員などは人の役職を確認するだけで大変で、それこそ時間のムダです。

社員の意見も取り入れながら職場の環境改善を進めることで、社員のモチベーションも上がっていきました」

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著者紹介

岩崎裕美子(いわさき・ゆみこ)

[株]ランクアップ代表取締役

1968年、北海道生まれ。短大卒業後、大手旅行代理店勤務を経て、広告ベンチャーの取締役営業本部長に就任。2005年、ランクアップ設立。ヒット商品「ホットクレンジングゲル」は累計販売数750万本を超え、現在社員数51名で約85億円を売り上げる。2013年には東京都の「東京ワーク・ライフ・バランス認定企業」の育児・介護休業制度充実部門に、通信販売業界で初めて選ばれた。著書に『ほとんどの社員が17時に帰る10年連続右肩上がりの会社』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

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