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業績をV字回復させた学研社長の「やる気」の出し方

2017年10月25日 公開
2017年11月14日 更新

宮原博昭(学研ホールディングス社長)

状況が悪いときこそ、明るい未来を想像する

売上げが下がり続ける経営危機の状態の中、火中の栗を拾う形で社長になった学研ホールディングスの宮原博昭氏。その後見事に業績をⅤ字回復させた。同社の柱である教育事業や出版事業のマーケットが縮小傾向にある中で、どのような戦略を取ってきたのか。何よりもまずは、社員のモチベーションを高めることを重視したという宮原氏にその方法について詳しくうかがった。《取材・構成=杉山直隆、写真撮影=まるやゆういち》

 

「まだ巻き返せる」と何度も訴え続けた

売上高がピーク時より半減する経営危機から、奇跡的なⅤ字回復を果たした学研ホールディングス。宮原博昭氏は経営がドン底状態だった2010年に社長に就任し、見事に復活へと導いた。どう立て直したのか。宮原氏は「いかに従業員のモチベーションを高めるかを第一に考えた」という。

「いくら緻密な戦略を立てても、従業員のモチベーションが上がらなければ、機能しません。外から社員を採用する余裕もないので、現有戦力のモチベーションを高めるしか方法はありませんでした。社員に底力があることはわかっていました。ゆえに、やる気が倍になったら、それだけで勝てるとも考えていました」

当時、従業員のモチベーションは著しく下がっていた。社長就任前には希望退職で人が大幅に減った上、残った人の賞与は大幅にカット。多くの社員が未来に不安を感じていた。そこで、最初に宮原氏が行なったのは、「明るい未来が訪れる可能性を見せること」だ。

「『コンテンツは日本一のものがたくさんあり、巻き返せる』。そのことを、全体ミーティングや社内報、社員との食事会など、ありとあらゆる場で話し続けました。能力はあるのですから、まずは自信を取り戻してほしかったのです。夢物語だけでなく、今後の戦略と共に、根拠のある形で伝えていきました。会社の問題点などの話もしましたが、最小限にとどめました」

その上で行なったのは、やる気のある人にチャンスを与えることだ。社員から新事業企画を募る「G‐1グランプリ」を実施。このプログラムから既に2社が起業している。また、未来の幹部を鍛える研修制度などを整え、若手や女性を積極的に登用した。

「ベッドのシーツは、1カ所を引っ張ると、他も引っ張り上げられていきますよね。このように、人材も、どこか1カ所を引っ張れば、他の人もついてくると考えていました」

成果を出した従業員は、しっかり褒めるようにした。

「『見える学力』と『見えない学力』という話があります。前者はその科目に関する知識や計算力などを指す一方、後者は『やりきる力』のような見えない能力を指します。結果を出すためには、この『見えない学力』が非常に重要なのですが、仕事も同じ。『表にあらわれない努力やプロセス』が仕事の成果を大きく左右します。そこを見つけてほめるようにしていました」

そうすれば、従業員は「自分の頑張りをしっかり見てもらえている」と感じ、さらにモチベーションを高めるわけだ。

 

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著者紹介

宮原博昭(みやはら・ひろあき)

〔株〕学研ホールディングス 代表取締役社長

1959年、広島県生まれ。82年、 防衛大学校卒業後、貿易会社に勤務。86年、㈱学習研究社入社。2003年、学研教室事業部長。07年、執行役員。09年、㈱学研ホールディングス 取締役(事業戦略、CSR推進担当)。10年、取締役(経営・事業戦略、CSR推進担当)等を経て、同年12月より現職。

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