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つらい仕事も楽しみに変わる5つの方法

2017年09月07日 公開
2022年12月19日 更新

泉谷直木(アサヒグループホールディングス〔株〕代表取締役社長兼CEO)

頭一つ抜け出すことでやりがいはグッと高まる

会社員になって最初の10年を「修行」と捉えることで、目の前の仕事へのモチベーションにつなげることができる。では、その次の30代から40代は、どうやって仕事への意欲を高めればよいのだろうか。

「30代から40代は、自分の強みを確立する時期。余人を持って代え難い何かを持つことが、仕事を面白くしてくれます。

私は30代半ばで広報部に配属され、コーポレートアイデンティティ(CI)活動の担当を任されました。当時は弊社の業績が低迷しており、企業のイメージやカルチャーを変えることでお客様との関係性を改善していこうという全社的な改革運動が始まっていて、その専従担当になれと言われたわけです。

ところが私は、しばらく労働組合の役員を務めていて、会社に戻ったばかり。それがいきなり、何のことやらよくわからないCIというものを任されてしまった。人によっては、不安や自信のなさからモチベーションが下がる場面かもしれません。

でも、私はこう考えました。『CIに詳しい人はまだ社内にいないから、自分が少し勉強すれば、頭一つ抜け出せるぞ』と。そして実際に、自分で勉強を始めてみたところ『CIなら泉谷が社内で一番詳しい』と周囲から評価されるようになり、役員からも質問を受けるようになりました。

すると、聞かれたことに答えるために、また必死に勉強する。こうして、CIが私の強みとなっていきました。CIの仕事をしたことでコーポレートコミュニケーション戦略に関心を持ち、会社に掛け合って新しい課を立ち上げたこともあります。こうしてやりたいことができたのも、自分の強みを確立したからです」

 

「運」ではなく「機会」という言葉を使おう

泉谷氏の考えに一貫しているのは、「モチベーションは誰かが与えてくれるのではなく、自ら主体的に生み出していくものだ」ということだ。

「自分のやる気に火をつけられるのは、自分しかいない。他人にいくら頼んでも、自分の気持ちを変えることはできません。私がCIに携わっていた時期、仕事は非常にハードでした。実は最初の頃はCIの専従スタッフは私1人。

しかも1986年1月に新しいコーポレートマークを世間にお披露目すると決まっていたので、時間も限られている。結局それまでの約半年間は、ほぼ休みなしで仕事をこなしました。

『こんなに忙しいのに、部下もつけてくれないなんて』と不満を言ったり、腹を立てたりすることもできたでしょう。でも私は、先ほどのモチベーション管理術を実践していたので、『このプロジェクトが成功したら、アサヒビールは一気に変わるんだ』と、ワクワクしながら仕事を楽しむことができました。

日本人はよく『運が悪くて、なかなかチャンスが来ない』という言い方をしますが、外国の人は 運やチャンスという前に『opportunity』という言葉を使います。

運が悪いように思える場面でも、実は『機会』はいくらでもあり、それをチャンスに変えられるかは自分次第。そう考えれば、大変なときもモチベーションを失わず、チャレンジを続けられるのではないでしょうか」

(※『THE21』2017年10月号特別企画 [「やる気」を自在に引き出す20のコツ]より)

 

著者紹介

泉谷直木(いずみや・なおき)

アサヒグループホールディングス〔株〕代表取締役会長兼CEO

1948年、京都府生まれ。京都産業大学法学部卒業後、朝日麦酒㈱[89年にアサヒビール㈱に社名変更、2011年に純粋持株会社アサヒグループホールディングス㈱]に入社。1986年、広報企画課長。95年、広報部長。98年、経営戦略部長。2003年、取締役。06年、常務兼酒類本部長。09年、専務。10年、アサヒビール㈱社長。11年、持株会社制への移行により、アサヒグループホールディングス㈱社長に就任。16年3月より現職。

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