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官民一体で集金に励む「経済大国」(ナイジェリア)

2017年09月09日 公開

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(25)石澤義裕(デザイナー)

外務省公認?の「修羅の国」へ

旅を始めた12年前、新宿の歌舞伎町で客引きに励んでいたナイジェリア人。

目だけは笑っていない馴れ馴れしいスマイルと、あの無駄にゴツいカラダ。自分本位の営業。

我輩の人生とはコンマ1秒も関係のない連中だと思っていましたが、このタビ、不本意ながらも貴殿の国にたどり着いてしまいました。

外務省のホームページに、「どのような目的であれ、渡航はやめてください」と言わしめる修羅の国、ナイジェリア。

阿修羅を避ければ、ニジェール→チャドという前人未到のカタストロフが待ち受けています。

引くに引けないマイカー旅の身の上。僭越ではございますが、お邪魔いたします。

南へ向かえば、オイル企業の欧米人を狙う武装ゲリラ地帯。北へ逃げれば、「西洋の教育は罪」とするイスラム過激派。Wikipediaが保証する、アルカイーダの関係者です。

生粋の道産子として生まれ、隙間のないアジア人顔のボクらです。胸を張って襲撃される理由はありませんが、念のため小細工をいたします。

パソコンや高額紙幣は車の奥底に隠し、壊れたパソコンや骨董品級のスマホをこれ見よがしに配置する印象操作。カツアゲされたときの保険として、ポケットに小銭を忍ばせ、いざ出陣!

金ならいくらでも出す!

忌憚のない負け惜しみで、臨みます。

 

角材を持ったヘビメタ警官登場!

ナイジェリアに突入して、10分。

早くも迎えたクライマックスです。

路傍で手招きする怪しい輩を無視したら、突然目の前に突きつけられた、五寸釘がぎんぎんに飛び出た角材。

はうわっ!

急ブレーキっ!

駆け寄ってくる、顔だけで有罪になりそうな愚連隊。

よくて強盗、普通でゲリラ。最悪、イスラム過激派。

胸に溢(あふ)るる、人生詰んじまった感。

走馬灯に浮かぶ、ボクらのマヌケ顔が載った新聞雑誌、テレビやネット。こだまする、不埒な旅生活へのご批判の数々。

ブログやSNSには勝負写真だけ載せておくものだなと後悔していたら、あろうことか、彼らは警察官でした。

Tシャツ姿のおまわりさん。

助かった~と思ったのは、早合点。

「なぜ逃げたのかーーーっ!」

逃亡罪でお叱りを頂戴するわけです。

でもね、そりゃ逃げますって、おまわりさん。そんなヘビメタTシャツで手を振られたって、怪しくて停まれませんって、普通。

人は見た目が9割なんですから、制服ぐらい着てくださいと心の奥底でお願いしたら、翌日から、制服組みが絡んだ官民一体のカツアゲが始まりました。

私服検問は、単なる前戯だったのです。

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あちらこちらに現われる「自称」検問の数々 >

著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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