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圧倒的なスピードを実現するソフトバンク流の「時短」とは?

2017年09月14日 公開

冨澤文秀(ソフトバンクロボティクス代表取締役社長)

「考え抜くこと」が圧倒的なスピードを生む

では、冨澤氏が大事にしている「勘所」とは何か。それは「事前に徹底的に考え抜くこと」だ。それが結局、圧倒的なスピードにもつながるのだという。

「商品を世に出すときに、中途半端な完成度では、必ず後発企業とのシェア争いに巻き込まれます。これでは、いくら他社に先駆けて商品化をしたところでいたちごっこになり、意味がありません。
だから、その前に競合の動きを予想して、『どのような商品だったら競合を完全に突き放せるか』を徹底的に考えます。そのうえで、『これなら絶対に負けない』と確信を持てるまでに完成度を高める。そうすれば、競合が後追いしてもパクリ商品しか出せませんし、パクリ商品は怖くありません」

この「事前に考え抜くこと」を社員に徹底するための仕組みがある。それは「会議でひとつの議題は15分から30分で終わらせる」というルールだ。

「30分はあっという間ですから、時間内で結論に導くには、入念な事前準備が必要です。議論が脇道にそれればもちろんアウトですし、私がある議題について『これはこうじゃないの?ああじゃないの?』と尋ねたとき、答えを用意していなければあっという間に時間切れです。
だからこそ事前に、『冨澤さんがああ言ったら、この材料を提示して説得しよう』といったストーリーを考えうる限り出しておき、具体的な数字と一緒に山ほど答えを用意しておくわけです。このように、あらゆる選択肢を考える習慣をつけることで、思考のスピードも精度も高まっていきます。
もちろん、慣れないうちは会議の準備だけで相当の時間がかかるでしょう。それでも繰り返すうちに、早くできるようになる。考えるというクリエイティブな作業も、訓練によってスピードアップできるのです」

「あらゆる選択肢」というと、具体的にはどのくらい用意しておく必要があるのか。冨澤氏によれば「3案くらいでは全然不十分」だという。

「たとえば、ある目標を達成するための手段として、A案、B案、C案を思いついたとしても、それだけでは不十分。常識や自分の経験値の範囲内に留まらず、それこそ手段を選ばずD案、E案、F案と、あらゆる選択肢を考えてはじめて、不可能と思えることをも可能にすることができます」

ただし、注意したいのはその案が「技術的に可能なのかどうか」。不可能なことにこだわりすぎると、かえって労力がムダになるからだ。

「現在の技術でできることと、できないことがあります。わかりやすい例で言えば、人間と同じレベルのコミュニケーションができるロボットを目指しても、今はまだ技術はそこまで発達していません。
それを判断するためには、世界の最新技術を常にチェックする他ありません。実現可能な範囲でどこまで挑戦できるのかを考えたゴール設定が重要です」

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「できない」という議論は時間のムダ >

著者紹介

冨澤文秀(とみざわ・ふみひで)

ソフトバンクロボティクス[株]代表取締役社長

1972年生まれ。NTTを経て、2000年、ソフトバンク・コマース入社。ソフトバンクモバイル プロジェクト推進部長、ソフトバンク事業推進統括部 統括部長などを歴任したのち、11年10月よりロボット事業責任者。14年8月より現職。

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