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社会人なら知らないと損する「お金の常識」とは?【前編】

2017年09月30日 公開

大江英樹(経済コラムニスト)

「お金が貯まる方法」はたった一つだけ!

 よく、雑誌の記事などで、「なかなかお金の貯まらない人にありがちな行動」だとか、「こうすればお金が貯まる法則」みたいな記事を見かけることがあります。中には財布の色がどうとか、お金の向きを揃えよう、とか私から見るとどう考えてもオカルトにしか思えないような珍説もあります。もしかしたら、それなりに心理的な効果はあるのかもしれませんが、実質的にはほとんど意味のないことばかりです。

 お金を貯める方法はただ1つしかありません。サラリーマンがお金を貯める唯一の方法、それは「給与天引き」です。もし勤め先にそういう制度がない場合、自分の給料が振り込まれる銀行口座から振り込み日には自動的に引き落とされる積立預金をするのがよいでしょう。

 実は、人間の脳の仕組みというのは本質的に貯金ができにくいようになっているのです。そもそも、貯金というのは今あるお金を使うことを我慢して将来のために残しておく行動です。ところが人間は、先の楽しみのために、今の楽しみを我慢しておくということが、本来はとても苦手です。

 経済学に「時間割引率」という概念があります。時間割引率の高い人、という言い方をしますが、これは遠い将来の価値よりも現在の価値の方を高く見積もりがちな心理です。つまり「せっかち度」を表しており、この時間割引率の高い人ほど、貯蓄ができにくいという傾向があるのです。たとえば小学校の夏休み、先に嫌な宿題を済ませてしまうか、最初に遊び呆けて最後の一週間で慌ててやるか。時間割引率の高い人というのは後者です。

 人間は多かれ少なかれ、この時間割引率の影響を受けます。いくら将来が大切だとか、老後の備えは必要だと力説されても、理屈ではわかるものの実際にその通りに行動することはなかなかできません。これは程度の差こそあれ、多くの人に共通する傾向です。

 だとすれば、お金を貯めるには、何らかの形で強制的にお金を分けて見えなくしておくしか方法はないのです。「お金を見えなくしておく」ということはとても重要です。面白いことに天引きされたお金は心の中では別の勘定に仕訳されてしまい、かつそれは忘れてしまいます。(これをメンタル・アカウンティング=心の会計)と言います。結果として最初からないものという認識で別の会計勘定で積み立てられていき、気が付いたら思いがけない金額が貯まっていたということになるのが「給与天引き」、または「自動引き落とし」の面白いところなのです。

 また、たとえば手取り20万円の給料で生活している人が、2万円を給与天引きで貯金し、残りの18万円で生活をするとします。最初は少し窮屈に感じるかもしれませんが、そのうちに慣れてきます。逆の場合も同じです。人間というのは意外と順応性が高いので、次第にそのレベルに合わせた生活に落ち着いていくものです。「余ったら貯蓄しよう」というのは実際にはかなり難しいことなのです。また、昇給があった場合はその分を上乗せして給与天引きに回せば、さらに増えていくことでしょう。

 くわえて、投資じゃなくて貯蓄でいいのか? という疑問があります。私は貯蓄でも構わないと思います。というよりも一定金額までは価格の変動を伴う投資ではなく、貯蓄で続けていくべきです。ある程度お金が貯まってきたら、そこから先は毎月の給与天引きの中でいくらかの金額を投資に回せばいいのです。

 実を言うと、投資の場合もまとまったお金を一度に投資するよりも毎月一定額をコツコツと積み立てながら、そのお金で投資をした方がいい場合が多いのです。特に投資を始めてまだ間がない人や、日々の仕事が忙しくて価格の変化を常にチェックすることができない人の場合は、天引きされた一定額のお金で毎月継続的に投資をしていく方法がベストです。株式でも投資信託でも、毎月一定金額で購入できるような仕組みが最近はたくさんあります。ある程度余裕ができ、まとまった資金が出来てきたら、給与天引きのうちの一部はこうした積立投資に回すのがいいと思います。

 ただ、これから貯蓄を始めようという人はそこまで考える必要はありません。とにかく「給与天引きでお金を貯めるという習慣を身につける」ところから始めるべきです。特に若い人であれば時間がたっぷりあります。資産形成というのは時間が多いほどアドバンテージがありますから、できるだけ早くから給与天引きや銀行自動引き落としによる貯蓄を始めるべきだということを強く言っておきたいと思います。

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著者紹介

大江英樹(おおえ・ひでき)

経済コラムニスト

1952年、大阪府生まれ。大手証券会社で個人資産運用業務、企業年金制度のコンサルティングに従事。定年後の2012年にオフィス・リベルタス設立。現在、年間140を超える講演、月12本の連載を抱え、多忙な日々を過ごす。著書に『定年男子 定年女子』(日経BP社・共著)など多数。

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