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30分に1度、20メートル歩くだけでオフィス疲れは軽減できる!

2017年11月09日 公開
2023年03月23日 更新

梶本修身(東京疲労・睡眠クリニック院長)

あらゆる疲れの原因は「自律神経」にあった!

一流の人は、休息の取り方にも工夫や哲学をもっている。しかし、心身の休息は一朝一夕に達成できるものでない。そこで本インタビューでは、「そもそも人はなぜ疲れるのか」を部位別に学び、さらに、「なぜ40代を超えると疲れやすいうえに疲れが抜けにくくなるのか」を知ることで、個人個人がより良い休息を取るための一助としたい。「疲れ」の専門家、医師の梶本修身氏に、疲れのメカニズムについてうかがった。(取材・構成=林 加愛)

 

疲れの根本原因は「脳」にある!?

人はなぜ疲れるのか。これに対し、今までは「乳酸の増加」「肝臓機能の低下」などの説明がなされてきました。しかし最新の医学では、それらの説をすべて覆くつがえす、根本的な原因が判明しつつあります。
それはズバリ、自律神経の機能低下。この自律神経の機能低下率が、体力や持久力の低下とほぼイコールであることがわかってきたのです。

自律神経とは、あらゆる体内活動の司令塔です。脳内の視床下部と前帯状回にピンポン玉大の自律神経中枢があり、呼吸、心拍、血圧、体温調節、ホルモン分泌まで、すべてを制御しています。この小さな拠点が絶えず全身に注意を払い、零コンマ何秒ごとに指令を発します。

頭や身体を使い活動量が多くなるほど、指令の数も増えます。すると自律神経の細胞は、大量に酸素を消費します。ここで発生するのが活性酸素。これが自律神経細胞を「錆びさせる」ことで、機能が低下します。この「自律神経細胞の錆び」こそが、疲労の正体です。

つまり、疲れは「身体」ではなく、「脳」で起きているのです。
「でも、1日働くと腰は痛いし、肩もバリバリ。疲れているのは、あくまで身体では?」と思われるかもしれません。しかし実は、凝りや痛みの原因も自律神経にあります。直接的原因は血流とリンパ液の循環が悪くなることですが、これらを司るのは、そう、自律神経です。ちなみに、肩凝りは自律神経失調症の典型的症状のひとつです。

「それでも、運動後の疲労はやはり筋肉の疲れなのでは」と思うでしょうか。ここで「3キロ歩く」ことを考えてみましょう。気候の良い日に歩くのと、炎天下で歩くのでは、どちらが疲れるか。当然、後者ですね。
筋肉を動かした量は同じなのに、なぜ違いが出るのか。答えは、炎天下でも身体の恒常性を保てるよう、自律神経中枢がフル稼働するからです。体温の上昇を防ぐために汗を出し、脳に酸素を送り込むために呼吸数を上げ、脈拍数を上げ……と次々に指令を出し、歩き終えた頃にはヘトヘトになっているわけです。

 

身体は「鍛える」よりも「いたわる」

それなら、自律神経を鍛えればいいということになりますが、これはほぼ不可能です。ちまたでは「適度な運動が自律神経を強くする」と言われますが、「適度」の基準は人それぞれ。鍛えるつもりが「オーバートレーニング」になる可能性も少なくありません。過剰な運動が続くと危険です。一時的な「疲労」が、「老化」というステージに進んでしまうからです。

前述のとおり、疲労の原因は神経細胞の「錆び」。通常の疲労なら、睡眠で錆びは取れます。しかし錆びがこびりつき慢性化すると、身体は老化します。ですから、自律神経は「鍛える」よりも「休める・いたわる」アプローチがお勧めです。

ひと言で言うと、身体の欲求に素直に従うこと。自律神経の余計な仕事を増やさず、眠ければ眠り、食べたければ食べ、活動したければするのが究極の理想です。
とはいえ、これはなかなか難しい。せめてもの対策としては「日中は交感神経の仕事を減らし、夜は睡眠中に働く副交感神経の仕事を減らす」ことです。そのためにできる工夫はいろいろあります。本誌24~25ページでは、「40代・50代の疲労の傾向と対策」についてお話ししますが、ここではまず身体の部位別に、「何をすると、なぜ疲れるのか」を解説しましょう。

次のページ
<身体の部位別疲れの原因とその対策> >

著者紹介

梶本修身(かじもと・おさみ)

医学博士 /東京疲労・睡眠クリニック院長

1962年生まれ。大阪大学大学院医学研究科修了。東京疲労・睡眠クリニック院長、大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授。2003年より産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者を務める。ニンテンドーDS『アタマスキャン』のプログラムに携わる。近著『なぜあなたの疲れはとれないのか?』(ダイヤモンド社)ほか著書多数。

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