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本を読まずに参加する読書会「Read for Action」に行ってみた

2020年01月22日 公開
2023年07月12日 更新

『THE21』編集部

最前線の「学びの場」で起きていることとは?

 

 職場でも家庭でもない「第3の場所」での学びに興味はあるけれども、どんなところなのかわからず、気が引けて一歩が踏み出せない……。そんな人も少なくないだろう。そこで今回、編集部は、「Read for Action」という読書会の様子を取材した。

 

約300人が参加! 日本最大級の読書会

 東京・表参道の一角にある瀟洒な建物。夕刻、そこへ三々五々訪れる人たちがある。その目的は、Read for Action――「行動する読書」と銘打たれた集いに参加することだ。

 この読書会には、際立った特徴がある。

「取り上げる本を未読で参加してOKという点です。事前に読んで感想を共有する、通常のスタイルとは一線を画しています」

 と、会のファシリテーターを務める木村祥子氏。会の主目的は本の熟読ではないとも話す。

「本の概要だけ知ってから、参加者がその内容に即して自分なりの問いを立てます。本のテーマやメッセージを自分の抱えている課題と結びつけ、答えを探すのです。答えがつかめれば、どう行動すればいいかもわかります。読書を行動につなげることが、この会の目的です」(木村氏)

 2011年に発足したこの読書会は、日本最大級の規模を誇る。表参道の会場に訪れるのは10人前後だが、オンラインでも同時参加が可能。取材時は、さらに全国13カ所のサテライト会場と中継がつながり、総勢約300人が参加する一大イベントとなっていた。

 Read for Actionの発起人は、経営コンサルタントで作家の神田昌典氏。木村氏は、神田氏が行なっていた「フォトリーディング」の講座の参加者だった。Read for Actionに立ち上げ時から参加し、現在は事務局長を務めている。

「参加者はビジネスパーソンが中心です。年齢層は実に多様で、学生もいれば60代の経営者もいます。まるで違う立場にいる人たちが、本を中心にフランクなコミュニケーションを取る場となっています」(木村氏)

 

否定や反論ナシで価値観を語り合う

 その言葉通り、会場では開始前からそこここで談笑する人たちが見られた。二つ設置された大きなテーブルには、付箋などの文房具の他、お菓子やおもちゃも。柔らかいゴム製のボールは、発言をするときに持つためのものだ。

「手触りの良いものを握ると、発想力が喚起され、リラックス効果も期待できます」(木村氏)

 今回取り上げる本は、〔株〕リブ・コンサルティング著『モンスター組織』(実業之日本社)。組織改革の様々なケースが挙げられており、組織が迷走に陥る理由と、その解決策を詳述した1冊だ。

 取材した会は、取り上げる本の著者によるミニ講演会もある「エキスパートカフェ」という特別版で、同書の監修者である、同社常務取締役・権田和士氏も会場に。

「エキスパートカフェは18年から始め、19年8月から月1度の定例となりました。2時間のうち、前半が本を読んで話し合う時間、後半が講演と質疑応答です」(木村氏)

 参加者は前半で本の内容を知り、問いを立てる。しかし、それぞれに問いを立てると、議論が混乱することはないのだろうか。

「この会では、議論ではなく、ダイアローグを行なうんです。物事の正誤を決めたり、妥協点を探ったりする議論と違い、ダイアローグでは、それぞれの価値観を語り合います。多様な価値観を知り、驚きや発見、楽しさを味わうのです」(木村氏)

 その場を作り出すのがファシリテーターの技術。リードフォーアクションには全国約300人のファシリテーターが在籍し、それぞれが独自に行なう読書会でも、フォーマットに則ってダイアローグを促しているという。

「否定や反論ナシの場作りがファシリテーターの役割です。進行する中で、そうした仕掛けを随所に組み込んでいます」(木村氏)

 

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