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タイトル「13.5文字」で惹きつけるには…読み手を唸らせる“キャッチコピー”術

2021年03月01日 公開
2023年02月21日 更新

鎮目博道(映像プロデューサー)

鎮目博道氏

報道記者や番組プロデューサー、ABEMAの立ち上げなどを経験したのちにテレビ朝日を辞めて独立し、現在は番組やその他の動画を制作する他、ライターや大学の先生もしている鎮目博道氏。

「私は天才ではなかった」と言う鎮目氏が、その経験を通して得た「どんなジャンルの動画でも面白く作るコツ」の一端を教えてもらった。

※本稿は、鎮目博道著『「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

 

「13.5字文字に要約する訓練」をしてみよう

みなさん、「13.5文字」という文字数を聞いたことがあるでしょうか? 実はこの数字は、ある意味最近のニュースの世界で「標準」となっている文字数です。実はこれ、Yahoo!トピックスの見出しの文字数です。

ご存知の通り、Yahoo!ニュースと言えば、現在国内で最も影響力のあるニュースサイトのひとつと言われています。様々なメディアが発信したニュースを読むことができて、非常に便利。

私もYahoo!ニュース個人のオーサーとして、メディアについての記事を書かせてもらっています。

そしてなかでもYahoo!トピックス、通称ヤフトピに取り上げられると、その記事は大きな注目を集めて、多くのPV(ページビュー)数を獲得することができる、つまり多くの人に読んでもらえます。

その影響力絶大なヤフトピの見出しが「13.5文字」なのです。

このことから、今ある意味「表現の世界」では「13.5文字」、つまり13文字と1つの半角スペースで、いかに読む人の心をつかむ見出しをつけるか、というのがひとつの表現の基準のようになっています。

短い文字数でパッとわかりやすく、webのタイトルにちょうど良いからです。

ちょっとお手元のパソコンやスマホで、ヤフトピを見てみてください。意外と13.5文字って短いな……と感じたら、あなたはなかなか鋭い感覚の持ち主です。

実はこの「短さ」に、我々テレビニュースの制作者は長年苦しめられてきました。本当に、何かを表現しようとすると、とても短いのです。

かつてテレビニュースのタイトルも、このくらいの長さでした。かつてというのは、地上波がまだアナログだった時代の話です。この時代はテレビの画面が4:3の大きさだったので、タイトルはだいたい13文字くらいで収めないと読みにくくなってしまうのです。

ちなみにデジタル化してからは16:9の大きさになったので、15~20文字くらいになりました。

実際にやってみると、13.5文字というのは「何かを要約して表現する」のには、嫌になるほど短い! と痛感します。

こんなことをいくら言われてもあまりピンと来ないでしょうから、実際にやってみましょう。

何でも良いのですが、例えば昨日あなたが食べたものについて記事を書くつもりで、その記事の見出しを考えてみてください。

記事の内容は「こんな珍しいものを食べた」でも、「誰々と久々に会って、食事しながら話が盛り上がった」でも、「忙しくてコンビニで済ませた」でもいいです。

 

長い固有名詞があったらアウト!の世界

さあどうですか? 上手く13.5文字で見出しがつけられましたか?

驚くほど短いでしょ? やってみるとつくづく実感しますよね。

もしあなたが昨日食べたのが「カレー」とか「うどん」なら3文字でOKですが、もし「ビーフストロガノフ」でも食べていたら悲惨です。料理の名前だけで9文字!

残り4.5文字しかありませんけど、どうしますか?

これまでで一番美味しいビーフストロガノフだったとしても、「人生最高のビーフストロガノフ」とは書けません。14文字になってしまい、0.5文字オーバーです。さあ、どんな表現にしましょうか?

うーんと、4文字だから「超絶美味」とか「絶品すぎ」とかくらいなら書けますね。0.5を活かして、半角スペースを空ければ読みやすそうです。

ほかに方法は……「ビーフストロガノフに男泣き」とかでもいいかなあ? 大げさ? とか、いろいろ考え込んでしまい、すぐ時間が経ってしまいます。

このように、「単に記事の内容を要約して13.5文字にする」だけでもかなり難易度が高いことがわかると思います。

もう本当に、長い固有名詞があったらアウト! の世界なのです。しかも、記事の見出しは、記事の内容を要約すればそれで良いのか? というとそうではありません。

肝心なのは、「記事を読んでみよう」と思ってもらえるかどうか、ということです。13.5文字で、記事の内容の概要がわかり、しかもその記事を「面白そうだから読んでみよう」と思わせなければならないのです。

この2つの要素を超短文で満たさなければならないのですから、まるで俳句を考えているような気分になってしまいます。

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