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熊本地震と他者への想像力

2016年06月29日 公開

清水 泰(フリーライター)

自由な空間がもたらす開放感が前向きに生きる原動力となる

熊本県益城町総合運動公園内のテント村(写真提供:野口健事務所)

 

避難所「三流国」日本

 2016年4月14日に発生した熊本地震では、16日に再び震度7の大地震を記録した。地震の発生地域は熊本、阿蘇、大分へと拡大し、余震もなかなか収まらない。自宅が倒壊したり、その恐れなどから自宅に戻れない多くの住民は、長期の避難生活を余儀なくされている。

 日本で災害時の避難所となるのは体育館や公民館といった地域の公的施設だ。だが、避難先である公的施設も2度の大地震、相次ぐ余震で被害を被るケースが少なくない。住民の多くはやむなく「車中泊」を選択した。

 そこで問題視されているのが、肺塞栓症いわゆる「エコノミークラス症候群」の発症だ。足を長時間動かさず、血流の悪化で生じた血の塊(血栓)が肺に達し、肺の動脈を閉塞させる病気で、最悪、死に至る可能性がある。発災5日目の18日には、自宅前で車中泊を続けていた熊本市の50代女性が同症候群で死亡した。

 しかし、車中泊でなければエコノミークラス症候群の発症リスクが低い、ということではない。阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災で避難所生活を送った多くの被災者が発症には至らないものの、同症候群に罹った事実が医学界から報告されている。よく歩き(足を動かす)、水分を十分摂取し、同じ姿勢を取り続けない、などが予防になるが、プライベート空間のない避難所で雑魚寝する居住環境がそれを妨げている。地震(災害)大国・日本の避難所が抱える構造的問題だ。

 欧米先進国では、同様の問題は第2次世界大戦中に解決済み。ロンドン大空襲で地下鉄構内の避難所に約18万人が避難した。雑魚寝したり座った状態で寝ていた市民のあいだでエコノミークラス症候群が多発したことから、イギリス政府は直ちに40万個の簡易ベッドを避難所に設置した。その結果、同症候群のほか、循環器や呼吸器疾患も減少したという。

 アルピニストの野口健氏は「アフリカの難民キャンプであれ先進国の避難所であれ、避難民の人権も考慮して(簡易)ベッドとテントが揃っているのが国際標準。仮設住宅に移るまでの半年間とかを雑魚寝で我慢する日本の避難所は、残念なことですが、海外の専門家から“三流”と見られています」と指摘する。

 もちろん、日本には布団文化という特殊要因はある。雑魚寝も世帯単位で間仕切りを設ける避難所が増えてはいるが、仮住まいだから、と全面個室化や生活環境の快適性を追求する動きは鈍い。こうした現実に一石を投じ、新たな避難所のモデルケースを提示したのが、野口氏が環境観光大使を務める総社市(岡山県)などの協力のもとに19日に立ち上げた「熊本地震テントプロジェクト」だ。

 

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