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拳骨拓史 韓国保守派を支援せよ

2017年01月20日 公開
2022年12月07日 更新

拳骨拓史(作家)

韓国と断交すべきではない理由

 韓国の現状をこのように分析してきたが、日韓関係が悪化するなか、保守派の多くから「日本は韓国と断交すべき」との論調が多く聞こえるのも事実である。

 気持ちはわかるが、私はその提案には同意しかねる。

 第1に安全保障の問題である。

 朝鮮半島は南北とも準戦時体制を維持し、平時としては最大限の兵力を投入しており、無理を重ねている。しかも南北ともに反日教育を徹底しており、ここから南北と国内団結の方便を見出している。

 ドイツが東西合併後に深刻な経済不振に見舞われたことを考え、北朝鮮の経済を立て直したあとでなければ、南北統一は難しいとの見解もあるが、数兆円ともいわれる統一費用を賄うことができれば不可能ではなくなる(その費用を日本に負担させようと韓国は活動しているようだが)。

 1980年に金日成主席は「高麗民主連邦共和国」の創設を韓国に提案したことがある。これは一民族・一国家・二制度・二政府の下で連邦制による朝鮮半島の統一を主張したものであるが、韓国で暗躍する従北派が画策する統一もこの一国二制度案である。先述した文在寅は2012年、大統領となれば北朝鮮の連邦制案を採用して南北統一を図ることを明言している。

 いずれにせよ歴史の流れは早晩、南北統一の方向に向かい、朝鮮半島には巨大な兵力と核兵器、中長距離ミサイルを有した反日国家が誕生することになるだろう。

 2012年11月、中国の代表団がロシア・韓国の代表と今後の対日戦略について話し合っている。そこで中国が提案した内容は、①中国・ロシア・韓国で「反日統一共同戦線」をつくる。②中露韓は一体となり、日本の領土要求(北方領土・竹島・沖縄)を断念させる。③「反日統一共同戦線」にアメリカも加える、ということであった。昨年12月15日に行なわれた日露首脳会談で、北方領土の返還が「0島」でありながら経済支援を急いだ理由は、強固になりうる可能性があるこの戦線を破る必要があった、という側面を忘れてはならない。

 いうまでもなく日本は縦に長く横に狭いため、敵からの侵攻に対して脆弱であり、そのうえ資源の乏しい国である。貿易立国でなければ生存できない致命的弱点をもつ。このような国が生き残るには、周辺の敵は少なければ少ないほどよい。敵の存在は、わが国の安全保障に深刻な影響を与えることは明白だ。

 日本の生存のために、そして反日統一共同戦線を打破するためにも、日本にとって韓国との友好関係はきわめて重要である。今後の東アジア情勢に鑑み、朝鮮半島、とくに半島南部の安定は日本に重要な意味をもたらす。

 朝鮮半島と日本を結ぶ対馬海峡を確保した国は、日本海を内海として利用することができる。中国が対馬を確保すれば日本は東シナ海だけでなく、日本海も戦域として想定しなければならなくなる(ロシアが対馬を確保した場合はより最悪の事態となる)。

 水上艦ならばまだ対抗できるが、潜水艦は中国海軍も能力を向上させており、ロシアは世界有数の潜水艦大国である。たとえ海上自衛隊が有能であっても行動が受動的になる以上、極度の緊張を強いられることになる。

 よって現代の日本にとって韓国の必要性は「対馬海峡の制海権の確保」にある。対馬海峡を確保できれば、日本の側面となる日本海を通過するすべての艦艇は一度、日本の監視下に置かれることになる、この優位性を得るため日本にとって韓国と最低限、安全保障では友好を確保する必要があるのだ。

 第2は韓国という国の問題である。

 1965年は日本と韓国が日韓基本条約を締結し、国交回復させた年であるが、それまで日本が歩んだ塗炭の苦しみを思い起こす必要がある。

 韓国初代大統領・李承晩は日本に対し、「反民族行為処罰法」による親日反民族行為者への処罰のほか、在日朝鮮人の北朝鮮への帰還事業を阻止するため新潟日赤センター爆破未遂事件(1959年12月)を指示するなど数々の暴虐を働いたが、その最大というべきものが「李承晩ライン」の制定であった。

「李承晩ライン」とは1952年1月、サンフランシスコ講和条約発効直前に突如として韓国政府が一方的に海洋資源の独占と領土拡張のため、島根県の竹島を取り込んで軍事境界線・排他的経済水域を公海上に引いた事件である。

 日韓漁業協議会『日韓漁業対策運動史』によれば、日本漁民を拿捕すると彼らは漁民たちに拷問を加え自白を強要し、その獄中生活も雑居房には20数名が押し込められ身動きができないうえに、食事も腐敗した物を与えられ、栄養失調となり餓死する者まで現れた。

 日韓基本条約締結にともない請求権、経済協力協定、日韓漁業協定が締結されるまでのあいだ、日本漁民3929名が不当に抑留され、拿捕時に射殺された漁民は44名、物的被害額は当時の金額で約90億円に及んだ。

 国交断絶するということは、対話のチャネルを謝絶することであり、現在の北朝鮮と同じ状況になることだ。

 国交断絶したのちの韓国が日本に対して〝理性的な行動〟を取ることを前提にしているならば、論者はよほど韓国を信頼しているのだと皮肉りたくもなる。

 いまの日韓関係に憤りを感じるのは私も同じだ。しかし一時の感情に身を任せ国交断絶を提唱し、すべてを白紙に戻すような論調を言論人が行なうことは、ハーメルンの笛吹きとなり国民を誤った道へと誘うことになるのではないか。日韓の歴史に鑑み、国益を損なうことがあってはならない。

 

日本が「強い国家」へ変貌すればよい

 では韓国が北朝鮮化していくことを、日本は止めることはできないのだろうか。断っておくが、私の考える韓国との友好は、韓国への従属ではない。

 1972年、アメリカのニクソン大統領は、中国の周恩来に「北も南も韓国人は感情的で衝動的な人びとだ。その衝動的で好戦的な人びとが事件を起こさないようにしなければならない」と語ったという(『朝鮮日報』2013年11月13日)。感情的、衝動的、好戦的が韓国人の民族性であるというニクソンの指摘は傾聴に値する。

 一方で、韓国人を称して「ひまわりの国」という見方もなされている。ひまわりの国とはつねに太陽(自分より強い者)のみに低頭するという意味であり、強い者にモミ手、おとなしい者には居丈高に出るという韓国人の本質を端的に表している言葉だといえる。

 近代史を見てみれば、清が強いときは清を崇め、ロシアが強いときはロシアを崇め、日本が強ければ日本を崇めてきたことはすぐにわかる事実である。
 この国民性を利用することで、韓国の世論を変えることができるはずだ。

 つまり従北派を黙らせ、韓国を親日にするには日本が「強い国家」へと変貌を遂げる必要がある。

 悪と戦うためには、自らが正義であることだけでは不十分であり、強くなければならない。日本が強い国家となれば、韓国の世論は親日へと転じ、北朝鮮と中国の謀略を打ち破れる公算は高い。当初は反日一辺倒だった朴政権が、末期になるにつれ〝親日的〟になったのも日本政府が圧力に揺るがなかったからにほかならない。

 大事なことは、日本は歴史戦などによる圧迫は毅然と突き放す一方、韓国国内の世論工作に取り組むことである。韓国と断交することを考えるのならば、私が以前より主張しているように、韓国国内で少数ながらも日本を信頼し、日韓友好が必要だと信じている人士を支援し、現状の打開を進めるほうがはるかに有益であると付言する。

 韓国の保守勢力は、韓国の主要機関に巣食う従北派をどのように駆除していくかを考えている。彼らは韓国が戦後発展できたのは、日米と共に自由主義陣営の一員として生きてきたからだと知っている。

 これまで世界の警察として君臨してきたアメリカは、その役目を終えた。これに代わって世界を主導できるのは、世界第3位の経済力を有する日本にほかならない。かつて有色人種を支配し、不死の半神と思われた白人をアジアから駆逐し、世界に独立の光を差し込んだ光輝ある日本人の精神をいまこそ再起させることが、緊張感を増す東アジアの安定のため必要な喫緊の課題だと考えるのである。

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