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ケント・ギルバート 『菊と刀』で展開されたトンデモ比較論とは

2017年06月09日 公開

ケント・ギルバート(米カリフォルニア州弁護士)

戦後の「日本人論」に大きな影響を与えた『菊と刀』。しかし著者は、じつは来日経験すらなかった。そこで展開された「日本人論」は正しいものだったのか。


 戦後、占領軍の一員として日本にやって来た東洋史学者のヘレン・ミアーズ女史は、数百年にわたって世界各地を植民地にして暴利をむさぼった欧米諸国の日本に対する貧しい理解と、その著しい偽善ぶりに激しく反発しました。

 戦前に日本を二度訪れ、フィールドワークも行なった経験から、日本のことを、そして当然、祖国アメリカのことも深く理解していた人物です。帰国後、『アメリカの鏡・日本』と題した本を出版したのですが、この邦訳版の出版申請をGHQは却下しました。マッカーサーは、本書はプロパガンダであり、公共の安全を脅かすものだとし、日本人には読ませないとまで述べました。それだけ当時の欧米の欺瞞を、鋭く突いていたのです。

 ミアーズと比べた場合、日本でも有名なルース・ベネディクト氏(コロンビア大教授)は正反対の存在です。来日経験さえない彼女が著した『菊と刀』は、当時の連合軍が作った戦後政策用プロパガンダの典型でした。西洋は「罪の文化」であり、内面の良心に従って行動できるが、日本は「恥の文化」なので、外部からの強制でしか動けないという、トンデモ比較文化論を展開したのです。

 2011年の東日本大震災時、東北の被災民の自制心がどれだけ世界を驚かせ、感動させたかを思い出せば、ベネティクト氏の日本人像がいかにデタラメかがわかります。それに、西洋人が本当に「罪の文化」をもち、内面の良心に従ってつねに行動できるのであれば、焼夷弾による日本全土への無差別空襲や、広島と長崎への原爆投下について、彼女はどう理解したのでしょうか。

 彼女はまさに「米国版御用学者」とでもいうべきでしょう。

 私の日本人の友人には、大学受験の予備校で「入試に出る可能性が高い」という理由で、この『菊と刀』を徹底的に読まされたという人がいます。おそらくその予備校講師は、WGIP(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム:日本人に戦争責任の罪悪感を刷り込む宣伝計画)の優等生であり、自虐史観を刷りこまれた「無自覚サヨク」だったのでしょう。悪質なプロパガンダを熟読しなければ大学に入れないと脅迫される日本の高校生は、本当に気の毒だと思いました。

(本記事は『Voice』2017年7月号、「皇室が尊いと思う理由」から一部、抜粋したものです。続きは6月9日発売の7月号をご覧ください)

iyashi

著者紹介

ケント・ギルバート(Kent Sidney Gilbert)

米カリフォルニア州弁護士

1952年、米アイダホ州生まれ、ユタ州育ち。71年に初来日。80年、国際法律事務所に就職して東京に赴任。83年、TV番組『世界まるごとHOWマッチ』に出演し、 一躍人気タレントへ。『夕刊フジ』金曜日連載「ニッポンの新常識」、まぐまぐメルマガ「ケント・ギルバートの『引用・転載・拡散禁止!』」などで論陣を張る。好評既刊『まだGHQの洗脳に縛られている日本人』『やっと自虐史観のアホらしさに気づいた日本人』に続く第三弾『いよいよ歴史戦のカラクリを発信する日本人』 (いずれもPHP研究所)が発売中。 『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社+α新書)は発売4カ月で40万部のベストセラー。 

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