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千葉雅也 著者に聞く『勉強の哲学』 

2017年06月21日 公開

千葉雅也(立命館大学准教授)

まともな紙の本を読んで勉強すること

聞き手:編集部 写真:Shu Tokonami

 ――『勉強の哲学』では、勉強の基本は読書だと述べられています。千葉さんはどんな読書の方法を勧めますか。

 千葉 その人の読書量によって変わってきますが、まずは言葉の繋がりや論理構造をしっかり捉えて読むことですね。本に書かれている「A」というキーワードと「B」というキーワードが反対の関係になっていて、この著者は「A」をプッシュしようとして、「B」を否定しようとしている、というような構造を考えながら読む。こうした精読をしていくことが初学者には求められます。

 ただ、すべての本を精読する必要はなく、自分にとって重要な本は精読し、少し情報が欲しいぐらいのものは斜め読みでもいい。精読と斜め読みを組み合わせて読書習慣を付けるのです。これを4年、5年と続けていけば、自ずと読書のスピードも速くなるでしょう。

 ――すでにある程度の知識を身に付けてきた大人が本を読む際に気を付けるべきことは?

 千葉 いままでの自分を「破壊」することに臆病にならないことです。ある程度のキャリアを重ねてきたビジネスパーソンは、これまでの価値観に依拠して本を読みがちですが、自らの経験を否定されるようなことを喜んで受け入れる度量がなければ、読書の価値は半減してしまいかねません。読書とは、自分のプライドを乗り越える修行であるといってもいいでしょう。

 ――勉強のための読書というと、時間の「有限性」を意識して、どうしても効率を重んじたくなりますが。

 千葉 だからこそ、「勉強の有限化」が必要になってきます。有限化は、『勉強の哲学』の重要なキーワードです。たとえば、僕はもう現代数学を究めるのは無理ですが、概要ならばある程度は学べるでしょう。だから、いろんな興味関心を3日坊主的に渡り歩くのでいいと、本書では提案しているんです。大事なのは、自分はありとあらゆることをマスターできると思わないこと。完璧をめざすと不安になって、精神的にもよくない。
「やらなければいけない」ではなく、「やりたい」という感覚が横滑りするのに任せるんです。誰かが経済学に詳しくて、自分は詳しくなかったとしても、それはそれ。できる範囲のことを学べばいいのです。

 ――そのほうが勉強も楽しいでしょうしね。

 千葉 ただ先ほども述べたように、何を勉強するにしても共通しているのは、きっちりと本を精読することです。それが、基本的な思考力を上げる最も効率的な方法です。脳トレやパズル、それから目の動きを速くする類いの速読術をしても、ほとんど意味はないでしょう。まともな紙の本を読んで勉強していくことが、脳トレの王道なのです。歴史的に評価されている書物を読み、それを軸に深く考える。これを地道に続ければ、人生そう大きくは間違えないと思います。

(本記事は『Voice』2017年7月号、「著者に聞く」から一部、抜粋したものです。現在発売中の7月号では、勉強の方法に加え、近年の言論空間についても語っていただいています。ぜひご覧ください)

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著者紹介

千葉雅也(ちば・まさや)

立命館大学准教授

1978年、栃木県生まれ。東京大学教養学部卒業。パリ第10大学および高等師範学校を経て、東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻表象文化論コース博士課程修了。博士(学術)。現在は、立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授。著書に『動きすぎてはいけない:ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』(紀伊國屋じんぶん大賞2013、第5回表象文化論学会賞)、『別のしかたで』(いずれも河出書房新社)など。

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