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ケント・ギルバート 問われる官僚の資質と戦後教育のあり方

2017年07月12日 公開

ケント・ギルバート(米カリフォルニア州弁護士)

 


「森友学園疑惑」がようやく落ち着いたと思ったら、今度は「加計学園疑惑」で永田町やメディアは大騒ぎをしています。渦中の文科省前事務次官は、出会い系バー通いは若い女性の貧困調査のためだったと釈明していますが、その貴重な調査結果は、日本の教育行政にどう活かされたのでしょうか。

 官僚や大学教授、大手メディアの幹部など戦後日本のエリートたちは、ペーパーテストの成績は抜群によくても、国家観や倫理観、あるいは人間味に欠ける人が多いという指摘があります。自分は頭がいいから特別待遇を受けるのが当然だと考えている。公費の乱用が露見し、辞職に追い込まれた前都知事などは、歪んだ戦後教育が生み出したエリートの典型例に映りました。

「国家よりも自分の天下り先やお金が大事」と考えるエリートが多いことを背景に、戦前の「修身」に相当するような道徳教育の強化を叫ぶ人もいます。たしかに道徳を教えること自体は必要です。ただし、教育は学校だけで行なうべきものではないというのが私の持論です。

 アメリカ社会は、学校以上に家庭(両親)と教会(宗教)の教育的役割が大きいのです。日本の場合は、アメリカで教会が担う役割を、地域社会が担ってきたといえるでしょう。この三方向からの導きがあって、初めて子供たちは、社会規範の何たるかを理解します。

 たとえば、物を盗むことについて、学校の教師が「法律に違反している。人の物を盗んだら犯罪者として刑務所に入れられます」と教える。夕食のとき子供がこの話題を持ち出すと、父親が「他人さまの物を盗むなんて人間失格だ。絶対に許されない」と熱く語る。日曜日に教会に行くと神父や牧師が「人のものを盗むことはモーセの十戒にそむいている。悔い改めなければ地獄に落ちる可能性がある」とさとす。このように、学校、家庭、教会がそれぞれ異なる視点から「物を盗むな」と教えることで、強固な倫理規範が子供たちの心に刻まれるわけです。

 残念ながらアメリカでも現在、セキュラリズム(政教分離の世俗主義)の影響で、宗教離れが進んでいます。教会に通う習慣のない家庭が増え、神父や牧師から説教を聞く機会がないまま大人になる人が多くなっている。

 さらにセキュラリズムが問題なのは、宗教だけでなく、家族の価値すら否定することです。結婚しなくてもいいとか、専業主婦はダメだという。その結果、アメリカではいま、未婚の母親による出産(婚外子)の割合が、約40%にも上ります(合衆国疾病予防管理センターの「人口動態統計レポート」より)。日本ではまだ約2%(厚生労働省の「人口動態調査」より)ですから、アメリカでいかにシングルマザーが多いかがわかるでしょう。

 教育における家庭の役割を軽視してはいけません。たとえば女の子の教育にとって、父親の役割はとても大きい。とくに、男の子との付き合い方を父親からきちんと教わらないと、未成年が望まない妊娠や出産に至るなど、その後の人生に負の影響を及ぼします。実際、アメリカではそのような十代が増えており、社会問題化しています。また、男の子の場合は、健全な父親像を示してくれる男性が近くにいないと、たとえば地元のギャングの親玉がその役割を果たすことになったりします。

 繰り返しますが、道徳教育の実践で重要なのは家庭であり、とくに父親の果たす役割を見直すべきです。伝統的な家族の価値観を否定するリベラル思想の蔓延で、父親の権威が日米ともに揺らいでいるのは嘆かわしいです。

(本記事は『Voice』2017年8月号、「GHQに奪われた国史と神話」から一部、抜粋したものです。続きは現在発売中の8月号をご覧ください)

 

iyashi

著者紹介

ケント・ギルバート(Kent Sidney Gilbert)

米カリフォルニア州弁護士

1952年、米アイダホ州生まれ、ユタ州育ち。71年に初来日。80年、国際法律事務所に就職して東京に赴任。83年、TV番組『世界まるごとHOWマッチ』に出演し、 一躍人気タレントへ。『夕刊フジ』金曜日連載「ニッポンの新常識」、まぐまぐメルマガ「ケント・ギルバートの『引用・転載・拡散禁止!』」などで論陣を張る。好評既刊『まだGHQの洗脳に縛られている日本人』『やっと自虐史観のアホらしさに気づいた日本人』に続く第三弾『いよいよ歴史戦のカラクリを発信する日本人』 (いずれもPHP研究所)が発売中。 『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社+α新書)は発売4カ月で40万部のベストセラー。 

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