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河合雅司 著者に聞く『未来の年表』

2017年10月07日 公開

河合雅司(産経新聞社論説委員・大正大学客員教授)

移民やAIの活用で人口減少は解決しない

聞き手:編集部 写真:Shu Tokonami

 ――『未来の年表』では、日本の衝撃的な未来が示される「人口減少カレンダー」のなかで、高齢者人口がピークを迎え4000万人となる2042年を「日本最大のピンチ」と述べられています。どういう意味でしょうか。

 河合 2042年には、団塊世代に次いで人口ボリュームの大きい団塊ジュニア世代がすべて高齢者となっています。高齢者の絶対数が増えるのに、彼らを受け入れる施設や設備、スタッフもまったく足りていません。

 さらに、団塊ジュニア世代は数が多いだけでなく、バブル崩壊後の不景気に新卒者だった「就職氷河期世代」でもあります。非正規社員が増え始め、正社員であっても会社の経営状況が厳しく、賃金が不安定な場合が少なくない。すると老後に向けた貯蓄をもたず、低年金や無年金の老後を迎える高齢者が増加することになります。

 ――一方で、2042年に高齢者を支える若者の数はより少なくなっていく。

 河合 数少ない若者が貧しい高齢者を支える、という厳しい構造が顕在化する年として「2042年問題」があります。現在、政府は団塊世代が75歳以上となる「2025年問題」の対策に汲々としていますが、より厳しい課題が将来、待ち受けているのです。

 ――人口減少対策として、外国人労働者を中心とした移民の受け入れによって人口を補うことができる、という意見もあります。

 河合 経済成長には高度な人材の受け入れは不可避で、政府の試みをすべて否定はしません。ただ、数合わせのような受け入れは慎重であるべきです。やはり人口減少の根本的な解決にはならないでしょう。

 外国人の受け入れについて、われわれがイメージするのはベトナムなど東南アジア諸国や日系人の多いブラジルなどです。しかしこれらの国々は、あと数十年もすれば日本と同じく少子高齢化に直面するわけです。いずれ自分の国も日本と同じような状況になるとわかっているのに、若い労働者を他国のために手放すとは考えづらい。

 さらに、めざましい経済発展を続けてきており、東南アジア諸国同士でヒトやモノの往来が活発化してきた状況で、文化や言語の壁が高い日本を若者がわざわざ選んで来るでしょうか。本格的な人口減少対策として数十万人単位の外国人受け入れを考えるには、机上の計算だけでは難しいということです。

 ――人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)の発達を期待する声もありますが、これらは人口減少対策の切り札になりえないですか。

 河合 たしかに、人口減少を補う何らかのイノベーション(技術革新)が起こる可能性はありますし、私自身そういう未来に期待する気持ちはあります。部分的に人間の仕事が機械に置き換わることは、かなり実現していくことでしょう。しかし、それはあくまでも「作業の効率化」という水準であって、高齢者の増加がもたらす世代の歪みを解消するレベルなのか疑問です。AIやICTの開発者は、各作業の効率化はめざしても、人口減少対策のグランドデザインを想定して技術開発を行なっているわけではありません。

 加えて、技術的に可能ということと、実用化、さらには低コスト化して全国津々浦々まで普及することとは別次元であり、時間やコストにギャップが生じてしまう。普及してもAIが子どもを産むわけではありませんし、人びとが年齢を重ねていくことを止められるわけでもありません。将来の嬉しい誤算を期待しつつも、AI開発は人口減少問題を根本的に解決するものではないと認識すべきだ、というのが私の考えです。

(本記事は『Voice』2017年11月号「著者に聞く」、河合雅司氏の『未来の年表』を一部、抜粋したものです。全文は10月10日発売の11月号をご覧ください)

iyashi

著者紹介

河合雅司(かわい・まさし)

産経新聞社論説委員・大正大学客員教授

1963年、名古屋市生まれ。中央大学卒業。現在、内閣官房有識者会議委員、厚労省検討会委員、農水省第三者委員会委員を務める。拓殖大学客員教授などを歴任。2014年、「ファイザー医学記事賞」大賞を受賞。専門は人口政策・社会保障政策。主な著作に『日本の少子化 百年の迷走』(新潮社)、『地方消滅と東京老化』(共著、ビジネス社)などがある。

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