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<連載>「パラアスリートの肖像」第3回 「理由のないルールって嫌い」 <一ノ瀬メイ(パラスイマー)>前編

2017年11月12日 公開

山田清機(ノンフィクション作家)、写真=尾関裕士

パフォーマンスあってこそ

 近大のプールで、水上競技部の監督を務める山本貴司の話を聞いた。山本はアテネオリンピック200mバタフライの銀メダリストである。胸板が厚い。

「メイの練習量は、高校のときに比べると倍以上に増えたんと違うかな。だからここまでは、練習量の増加によってすーっと伸びてきたと思う。でも、ここから先は大変やろね。世界とはまだだいぶ差があるから、問題はどれだけメダルに執着できるかやね」

 一ノ瀬はリオパラリンピックに出場しているが、得意の200m個人メドレーで13位と、決勝に残ることすらできなかった。悔しさに打ちひしがれながら、「勝たなおもろない」という言葉の意味を噛みしめたという。勝つためにいま、何が必要なのか。山本が言う。

「いまは、どんだけ泳いでも故障しない体を作ることが先決やけど、3年経つのは速い。東京まで時間がない。この先、自分自身でどれだけ変われるかやね」

 アトランタ、シドニー、アテネと3つのオリンピックに出場し、3度目の正直でメダルをとった山本の言葉だけに重みがある。一ノ瀬が言う。

「練習量だけでは伸びなくなった。これからは頭を使って練習の仕方を考えないといけないんやと思います。いままでは、パラを知ってもらうために発信することを大事にしてきたけど、これからはパラを知ってくれた人がファンになってくれるような競技力をつけたい。競技を見た人が『すごい』って驚いてくれるようなパフォーマンスができるようになりたいです」

 世界との差は大きく、東京パラまでの時間は短い。果たして一ノ瀬は、「世界」に手を掛けられるだろうか。
 

〈続く〉

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著者紹介

山田 清機(やまだせいき)

ノンフィクション作家

1963年、富山県生まれ。1987年、早稲田大学政治経済学部卒業。鉄鋼メーカー、出版社 勤務を経て独立。著書に『卵でピカソを買った男』(実業之日本社)、『青春支援企業』(プレジデント社)、『東京タクシードライバー』『東京湾岸畸人伝』(ともに朝日新聞出版)など。

一ノ瀬メイ(いちのせ めい)

パラスイマー

1997年生まれ。京都市出身。近畿大学体育会水上競技部。イギリス人の父と日本人の母を持つ。2010年、中学2年生でアジアパラ競技大会に最年少13歳で競泳日本代表として選出され、50m自由形で銀メダル。現在、パラの日本記録を4つ保持している。2016年、リオデジャネイロパラリンピック出場。また、高校3年生の時に行なわれた全英連第8回全国高等学校英語スピーチコンテストで優勝している。  

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