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大都市制度の見直しで問われる地域の構想力



2012年06月06日 公開

荒田英知 (政策シンクタンク PHP総研 地域経営研究センター長)

 大阪府と大阪市を統合する大阪都構想に端を発した大都市制度の見直し論議が、ここに来て全国に広まっている。全国に20ある政令指定都市では、共通する将来像として府県からの独立性を高める「特別自治市」を検討してきた。しかし、一口に政令市といっても、人口規模や中枢性、土地利用など都市の特性には大きな違いがある。したがって、特別自治市の具体像は一様ではなく、個々の政令市によって異なるものとなろう。

 5月15日に開催された全国政令指定都市市長会では、「多様な大都市制度の早期実現を図ることを強く求める」とするアピールを採択した。国の第30次地方制度調査会が、大都市制度に関する法改正を検討していることを睨んで、アピールは「各地域の実情に応じた選択可能な制度とすることが必要」と求めている。今後は、個々の政令市が将来像をどのように描くかが注目される。

 これまで、特別自治市の議論をリードしてきた横浜市は、府県からの独立性を最も強く主張してきた。これに対抗するかたちで、神奈川県の黒岩祐治知事は「一国二制度のような神奈川独立国を目指す」として4月に検討チームを発足させた。今後、双方の見解が対立する可能性もあるが、横浜市と同じく政令市である川崎市の阿部孝夫市長は「両者の発想は矛盾しない。政令市は県からの独立性を高め、県は国からの独立を高める。これが実は道州制」と両者の間を取り持つ発言をしている。

 大都市制度に関しては、政令市と府県が同じテーブルについて、議論を深めることが欠かせない。その一例に「新潟州構想」がある。これは2011年1月に、新潟市の篠田昭市長と新潟県の泉田裕彦知事が共同で発表したものである。その後、検討委員会が置かれ、今年5月には「新潟モデルの実現に向けて」と題した報告をまとめている。道州制時代に存在感を示すには、県市双方のリソースを有効活用して、日本海側での拠点性を高める必要があるという問題意識を共有することで、県市の足並みが揃ったとみることができる。

 一方、浜松市の鈴木康友市長と静岡市の田辺信宏市長は「しずおか型特別自治市」の共同研究を進めている。政令市の中でも人口規模が小さく、市域に過疎地域が含まれるなど「国土縮図型」政令市の立場から、基礎自治体の自立モデルを示そうとするものだ。これに対して「府県制度の廃止と道州制への移行」を持論とする静岡県の川勝平太知事も理解を示し、今年度から両市に県も加わった検討会議が行なわれることになった。道州制に向けて県の役割はどう変わるのかが注目される。

 もう1つ、わが国の大都市制度を考える際に、忘れてならないのが東京都制度の見直しである。人口や税財源が圧倒的に集中する東京に、他の地域と横並びの制度を適用することには無理がある。将来の道州制の区割りにおいては、東京を特別州にするなどの工夫の余地があろう。その際、首都圏の一体性という観点からは「東京の範囲」が大きな論点になるものと考えられる。東京の税収面の突出した地位は、東京都全体でも23特別区でもなく、都心数区によってもたらされているからだ。東京こそ大都市制度の本丸といって良い。

 このように大都市の将来像にはそれぞれ固有の事情がある。国が1本の法律で変えるよりも、地域が独自に構想を描いていくことの方が望ましいことは明白だ。だからこそ、地域の構想力が問われている。

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