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「大人の話し方」があなたのビジネス人生を変える

2012年06月27日 公開

矢野 香 (現役報道アナウンサー)

『THE21』2012年7月号特集より 》

話題のベストセラー『その話し方では軽すぎます!』 (すばる舎:刊)の著者、矢野香氏は、政治家や経営者などエグゼクティブ向けの話し方指導を手がける一方、現役の報道アナウンサーとして活躍している。なぜ、いまこの本の需要が高まっているのだろうか。また、「大人の話し方」の条件とは。(取材構成:杉山直隆/写真:まるやゆういち)

 

軽い話し方のビジネスマンは信用されない!

面白おかしく話そうとしない

 「『その話し方では軽すぎます!』 というタイトルにドキリとさせられたよ」。私の著書を読んでくださった経営者や管理職の方から、そんな感想をいただくことがよくあります。経営者になったり、管理職に昇進したりしたとき、多くの人は、「その地位にふさわしい『大人の話し方』を身につけたい」と考えることでしょう。

 そして、そのニーズは以前にも増して高まっていると思います。この本に対する反響から、私はそう実感しました。

 なぜ、ニーズが高まっているのでしょうか。私は、その理由の1つは、昨年の東日本大震災にあると考えています。この震災を経験したことで、多くの日本人は、危機管理の意識を高めました。身の回りの情報に関して、無条件に信じ込まず、信頼性や正確性を自然とチェックするようになっています。そんな風潮から、いい加減な話し方は好まれなくなってきたのです。その空気を敏感に感じ取った人が、自分の話し方は信用性がないのではないか、と危うさを感じているのでしょう。

 また、記者会見で事態を悪化させた不祥事が相次いでいることも、理由の1つに挙げられます。記憶に新しいところでは、大手食品メーカーの産地偽装事件や飲食チェーンの賞味期限偽装、焼肉店の食中毒事件など。ごまかそうとしたり、逆ギレしたりしたことで、当事者たちは、より一層、世論を敵に回してしまいました。そんな姿をみて、「話し方1つで、取り返しのつかない事態を招く」ことに気づき、自分の話し方を見つめ直した人が多いのでしょう。

 ところで、「大人の話し方」とは、どのような話し方でしょうか。私が考える「大人の話し方」の定義は、「確実性、信頼性を重視し、落ち着いた、重みのある話し方」「自分が公人であることを意識した、責任感のある言動」です。このような話し方をしていれば、顧客や部下などから信頼を得ることができます。

 しかし、大人の話し方ができる人は少数派。私が指導している経営者や管理職の方も、本のタイトル同様に、「重みのない、軽すぎる話し方をしている」方は少なくありません。

 「そうッスね~」などといった若者言葉で話すのは極端な例だとしても、発言があいまいだったり、大げさだったりと、軽薄な話し方をする方は、社会的地位の高い方でも見受けられます。その原因はいろいろありますが、意外と多くの方に共通しているのは「聞き手に興味を抱かせようと過剰にしすぎていること」です。

 「淡々と話していては、相手に聞く耳をもってもらえないし、心に残らない」。そんな意識が強く、あれこれ脚色したり、ゼスチャーをしたりして、面白おかしく話そうとするわけです。しかし、そうした“虚構”を入れてしまうと、ほとんどの場合、話の正確性が損なわれます。だから、軽薄な印象になってしまうわけです。

 私は、大人の話し方を身につけたいなら、面白おかしく話すことなど考えないほうがいいと思っています。むしろ、大切なのは、面白みはなくても、話を正確に伝える話し方を身につけることです。テレビでいえば、「ニュース番組の話し方」ですね。つまらない話し方かもしれませんが、これを身につければ、発言に信頼性や重み、責任感などを醸し出すことができます。流暢に話せなくても、相手の信頼を勝ち取ることができます。ぜひ習得してください。

話に感情や評価を交えないほうがいい

 大人の話し方を身につけるために、最初に意識してほしいのは、話す前に「何を伝えたいか」というメッセージを明確にすることです。それがあいまいなままでは、相手は困惑するだけ。信頼感を抱く人はまずいません。

 伝えたいメッセージを明確にしたら、右の表にある7つのポイントを意識して、話すようにしましょう。すると、相手に話を正確に伝えることができ、信頼感を生みだせます。

 これらのなかで習得しつらいのは、〔1〕の「具体的に発言する」です。話す内容すべてを正確に発言するという意味なのですが、やってみると簡単ではありません。

 たとえば、「弊社は取引先のお客様は日本中にいらっしゃいます。最近はアジアの国々からも問い合わせがあります」では抽象的。「弊社の取引先のお客様は、関東をはじめ、名古屋、大阪、札幌、と全国にいらっしゃいます。担当者によると、2年前からは中国や韓国といったアジアの国々からも問い合わせがあるということです」というくらいまで、落とし込むことが必要です。

 ポイントとしては、正確な数字・固有名詞を使うこと。また、誰かから聞いた情報なら、「~によりますと」と情報源を明らかにすることが大切です。

 〔2〕の「感情や評価を交えず、事実のみを話す」ことも、重要なポイント。仕事の話をしているときに、「むかつく」「苦しい」など個人の感情を交えることは誰でもあることでしょうが、そんな姿をみれば、相手は、あなたを「感情に左右される人」だと判断し、話の内容も信用しません。感情は排除することが不可欠です。

 一方、「評価」とは、何らかの主観が入った言葉のこと。たとえば、「イベントには家族連れなど700人もの大勢の人が集まりました。わざわざ大阪から参加された方もいました」という一文でいえば、「もの」「大勢の人」「わざわざ」などが、評価の言葉です。こうした表現を使うと、客観性がなくなり、信頼に足る言葉ではなくなります。よくみせたい気持ちがあっても、それを抑えて、事実だけで構成するようにしましょう。そのほか、「よい」「多い」「やっと」「成功した」なども評価の言葉です。

 これらのポイントは、ただたんに心がけるだけでは、なかなか改善されません。私が実践してきたのは、自分の話を録音し、文字に起こして、点検すること。自分の話し方の欠点を、まざまざと実感させられるはずです。

 録音当日に点検作業を行なうと、冷静にみられないので、1週間程度、間を空けてから点検するとよいでしょう。

 相手に信頼感を与える話し方をするには、みた目を整えることも重要です。どんなに立派なことをいっても、みた目の雰囲気と一致していなければ、信頼できません。私の場合、じつは今日着てきたスーツと同じものを3着もっています(著書の帯に使っている写真と同じ服装)。もっとも、私はこの服を気に入っているわけではなく、むしろ似合わないと思っています。それでもあえて選んでいるのは、『その話し方では軽すぎます!』と叱りそうな雰囲気を出したかったからです。こうした自己演出も、必要なことです。

 

矢野 香

(やの・かおり)

ニュースキャスター

信頼を勝ち取る「正統派スピーチ」指導の第一人者。長崎県生まれ。NHKでのキャスター歴16年。主にニュース報道番組を担当し、番組視聴率20%超えを記録した実績をもつ。大学院では心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究し、修士号取得。現在は、政治家、経営者、上級管理職を中心に、要職にある社会人に必要な「信頼を勝ち取るスキル」を指導。
<著者のブログ>http://ameblo.jp/kaoriyano/

 

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