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歳出増加を招く消費増税



2012年07月05日 公開

宮下量久(政策シンクタンク PHP総研 政治経済研究センター 主任研究員)

 消費増税関連法案が衆議院で可決された。今年度の基礎的財政収支は約22兆円の赤字になる見込みであり、政府は2020年までの黒字化を目指している。5%の消費増税は約13兆円の税収増になる見込みだが、それだけでは赤字を解消できない。増税の当初目的は社会保障の安定財源確保と財政健全化であった。ただ、民主・自民・公明の三党合意による修正法案は、新たな歳出増加を招く恐れがある。その理由は、法案に次の一文が追加されたからである。

 「税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、我が国経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分する」。

 法案によると「税制の抜本的な改革」には消費増税が含まれる。このため、機動的に対応できるほど財政余力があるならば、増収分は社会保障財源や財政健全化だけでなく経済成長や防災・減災にまで配分されるとも解釈できる。実際、自民党は災害に強いインフラ整備のために、3年間で15兆円を集中投資する国土強靭化基本法案を今国会に提出している。総選挙後、自民党政権が誕生した暁には、公共事業を大幅に拡大させる可能性が高い。
 増税負担を和らげるために手厚い対策も施される。政府は定額の現金支給を想定しており、その実施に毎年約4000億円を要すると見込んでいる。さらに、住宅購入に伴う消費税は高額になるため、増税時の住宅取得支援策の検討も法案に明記された。法案成立が優先されるあまり歳出規模が拡大することで、財政はかえって悪化するかもしれない。

 また、政府は増税への不満を回避するために、歳出増加策を相次いで打ち出しているフシがある。例えば、合併特例債の発行期限が今国会で延長された。合併特例債とは「平成の大合併」で合併した自治体で発行できる地方債である。合併自治体は、公共施設の建設費の95%を合併特例債で賄い、その元利償還金のうち最大70%を地方交付税によって国から補助される。発行期限はもともと10年であったが、東日本大震災で被災した合併自治体で10年、被災地以外でも5年延長される。特例債現在高は5年間で約3兆円にまで累積しており、地方交付税の増額が予想される。発行期限の延長により、各自治体は特例債をより増加させていくと思われる。

 さらに、国土交通省は北海道、北陸、九州新幹線の未着工区間の整備を認可した。総事業費3兆円のうち公費は2兆円にのぼる。格安航空会社の参入によって安価な国内移動が可能になりつつある中で、巨額歳出を伴う新幹線整備の必要性が問われるだろう。2兆円規模の補正予算編成も話題にあがっている。赤字国債発行法案などが成立しておらず、本予算の財源がいまだ確保されていない。それにも関わらず、補正予算を議論するのはやや拙速ではないだろうか。不満を軽減するための歳出拡大は、増税の意義を損なうことになる。
 参議院の法案審議では、財政再建に対する国民の理解が深まるよう、歳出削減や成長による税収増を含む建設的議論を期待したい。

<研究員プロフィール:宮下量久>☆外部リンク

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