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北関東はなぜ家電王国なのか?



2012年09月20日 公開

THE21編集部

「ヤマダ電機」「ケーズホールディングス」「コジマ」が産声を上げたのは、群馬、茨城、栃木の3県だ。その北関東を地盤にするこれらの家電量販店が業界を牽引している。「街の電器屋」だった3社は、「YKK戦争」とも称された激しい販売競争で覇権を争い、いまや再編相次ぐ業界の主要プレーヤーである。なぜ、家電量販店は、北関東勢が強いのか。その謎に迫る。
『THE21』2012年10月号より/取材・構成:金澤匠>

「街の電器屋」から郊外型量販店へ変貌

 3社の歴史をみてみる。

 「ヤマダ電横」は山田昇社長が1973年、群馬県前橋市に開いたヤマダ電化センターが始まりだ。

 「ケーズホールディングス」の創業は1947年で、加藤修一会長(兼CEO)の父、馨氏が茨城県水戸市で始めた加藤電気商会が前身だ。「コジマ」の起源は1955年に故・小島勝平氏が栃木県宇都宮市で創業した小島電気商会である。

 3社とも、ごく普通の「街の電器屋」だった。では、急成長の理由は、何だろうか。

 最大の理由は、郊外に大型店を出すという戦略モデルをいち早く確立したことである。地元の足場を固め、県境を越えた多店舗化を推進したことで勢いづいていった。

 販売競争は激しく、のちに3社の社名の頭文字をとって「YKK戦争」と呼ばれた。その「戦争」で、先行したのは「コジマ」だった。

「コジマ」は1970年代に、宇都宮市の郊外に駐車場つきの店舗を構えた。それまでの駅前戦略を見直した格好だ。住宅地が広がったことが背景にある。客が商品を持ち帰ってくれることで、配送コストを削減できるようになり、さらなる値引きが可能になった。

 「コジマ」は1984年に「ケーズ」の地元である茨城県に進出する。以降、栃木県以外の出店を加速していく。北海道や大阪など北関東以外に攻め入り、1998年3月期に売上高 3,000億円を突破して、「ベスト電器」(福岡県福岡市)を抜き、業界トップに躍り出る。

 1987年、「コジマ」は「ヤマダ電機」の地元である群馬県高崎市に侵攻する。「安値日本一への挑戦」を掲げる「コジマ」の安値攻勢と出店ラッシュを前に、「ヤマダ電機」は防戦を余儀なくされたという。

 だが、「コジマ」の店は、大規模小売店舗法の規制下で出店していたことから、その多くは売り場面積が500平方メートル未満だった。そのため、「コジマ」は、やがて店舗の建て直しを迫られることに。「ヤマダ電機」はその機会を見逃さなかった。

大店法の規制緩和による大規模店舗化への転換

 1974年施行の同法は、地元商店街との調整が目的だったものの、自国企業の日本進出を視野に入れる米国が規制緩和を求め、1994年に1,000平方メートル未満は自由化となり、2000年には法律が廃止される。これを機に、「ヤマダ電機」は 3,000平方メートル以上の大型店の出店に乗り出したのだ。

 「ヤマダ電機」は1989年に株式を店頭公開、マーケットから調達した資金で大型店の全国展開を進めた。1990年代に、家電だけでなく、パソコンを主力商品に位置づけたことが消費者をつかみ、2002年に「コジマ」から業界首位の座を奪った。

 もう1つの雄、「ケーズホールディングス」は、1970年代に現在の基盤を築く。プライベートブランドの家電を引っ提げたダイエーなどが茨城県に進出してくるが、その店舗を取り囲むかのように、郊外店をつくった。

 販売時点情報管理(POS)をいち早く導入するなどして、ロー・コスト経営を実現。同業他社を傘下に収め、フランチャイズ店も増やし、独自の販売姿勢を貫く。そのひとつが、業界では当然視される会員向けポイントカード制度を導入しない戦略だ。「その場で安くするほうが、お客さんのためになる」との思いがあるという。

「半端な価格」では秋葉原に負けてしまう

 道路沿いの郊外店の拡大が、3社の躍進を助ける。そこには、「クルマ社会」の到来という時代の“後押し”もあった。

 地盤の北関東は、公共交通機関の便はあまりよくなく、移動はクルマに頼らざるを得ない。3社は郊外の道路沿いに駐車場つきの店を構え、日本各地に新たな店を展開する。全国の道路整備が進み、郊外の大型店に広域からの集客を図るビジネスモデルが、実を結んだといえるだろう。そして、「YKK戦争」は、他社より1円でも安く売る、という競争が熾烈だった。この安値販売は、なぜ起こったのか。北関東という地理に、その理由を見い出せるだろう。

 それは、世界有数の電気街・秋葉原が、3社にとってのライバルだったことが大きい。YKKの地盤である前橋、宇都宮、水戸の各駅から秋葉原までは、JRの普通列車で片道約2時間。安売りで名を馳せる秋葉原との競争は、避けられなかったのである。地元の住民たちは、秋葉原の安値を知っている。半端な価格でごまかすことはできない。だからこそ、YKK戦争に先行した「コジマ」は「安値日本一への挑戦」を定款にしたためたのだろう。3社の安売り競争は、横並びの古い業界に衝撃を与えた進取果敢な行動だった。

 加えていま、業界再編が加速している。

 7月、首位の「ヤマダ電機」は8位の「ベスト電器」(福岡市)を買収する方針を明らかにした。5月には「ビックカメラ」(東京都豊島区)は7位の「コジマ」を傘下に収めることを発表している。

 「ヤマダ電機」の昨年度(2012年3月期)の売上高は1兆8,354億円。昨年度(2012年2月期)の売上高が2,617億円の「ベスト電器」を買収することで、売上高2兆円を超えることになる。

 今年度(2012年8月期)の売上高 5,300億円を見込んでいた「ビックカメラ」は、昨年度(2012年3月期)の売上高が3,703億円だった「コジマ」を買収したことで、売上高は 9,000億円規模にまで拡大して業界2位に浮上する。北関東3社は、2組の再編後に、その売上高が単純計算で、首位(「ヤマダ電機」+「ベスト電器」=2兆971億円)、2位(「ビックカメラ」+「コジマ」= 9,824億円)、4位(「ケーズホールディングス」7,260億円)となる。

 2件の大型買収劇に続き、「ケーズホールディングス」の動向も注目される。最終的に北関東の天下を取るのは、果たしてどの企業なのだろうか。

 

◇掲載誌紹介◇

『THE21』2012年10月号

<今月号の読みどころ>
世界の動きが速くなり、グローバル化も進むなか、ビジネスの環境は激変しつつあります。「これまでどおり」が通用しない時代にビジネスマンに必須となるのが、自ら考えて行動するための「論理力」です。論理的であるということは、たんに頭の回転が速い、理屈っぽいということではありません。今月号の特集では、問題を発見する力から相手を説得する力まで、実践で活きる「論理力」について、第一線で活躍する一流のビジネスマンたちのノウハウをご紹介します。

 

THE21

 

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