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とにかく読者を楽しませたい~ベストセラー作家 百田尚樹インタビュー



2013年04月09日 公開

同じ世界観で書いたら、作家として停滞する

 木村 50代での転身を経て、デビューされて6年。小説を書きはじめるきっかけは何だったのでしょうか。

 百田 いちばん大きかったのは、50歳という年齢。いまでこそ寿命は長くなりましたが、昔は「人生50年」でしたよね。で、半世紀という区切りもある50歳を迎えたときに、初めて自分の人生を振り返った。それなりに楽しくおかしく、充実した人生やったとは思うのですが、あらためて、自分は何かコレといえるものを命懸けでやっただろうか、と問いかけたら「……うーん」となった。じゃあ、人生50年で一度目の人生は終わったと考えてみて、次の人生では、何かその命懸けになれるものに向かう、違う生き方をしてみようかな、と。それで小説を書き出しました。

 木村 いま、作品づくりに関しては、どのようなことを考えていますか?

 百田 まだたった6年ですからね。だから、小説って何をどこまでできるものか、自分にとっては、まだわからないところがある。自分はどこまで書けるのか、いまは模索している最中です。だから毎回、小説を書くたびにジャンルを変えています。チャレンジが終わったら、何でも「終わり」やと思ってもいますから。

 『永遠の0』では、大東亜戦争を舞台に、生きるとは、死ぬとは何かという物語を書いた。その舞台、世界観で書くのは、ある意味たやすい。でもそれをやれば、僕は作家としては停滞する。だから新しいものを、と。

 それから、作家になる前にはテレビの放送作家として、バラエティ、ドキュメンタリー、クイズ番組といろいろやってきたからでもあるんですが、とにかく僕は小説でも読者を楽しませたいと思っています。大きく笑うのでもいいし、「いい話だなぁ」としみじみ思ってもらうのでもいい。楽しみって意味はいろいろありますからね。

 木村 百田さんは、読者が「いいものを読んだな」と思える読後感を大事にされているようにも感じられますが。

 百田 そこはぼくのなかの目的の一つとして、読んだ人が「人生って素晴らしい」「生きるってなんて素敵なことなんや」と思ってくれたらいいなというのがあります。

 立派な仕事を営々と続けておられる市井の人たちっていますよね。魚を獲るのでもいい。コメをつくるのでもいい。いま、目の前にある机をつくるのでもいい。あるいは、たとえでいうなら、うちのオヤジは大阪市水道局の職員でした。漏水課というところにいて、ずっと、しょっちゅう破裂しては水が漏れる管を直し続けていた。オヤジは大阪市内じゅうを歩き回るその肉体労働者としての仕事を死ぬまでやっていたオッサンでしたが、そういうのって「いい仕事やな」と思うんですね。

 翻ってみて、いま自分のやっている小説という仕事は、「……何や、これは?」と思うんですね。大した仕事じゃない。豊かな社会が生み出してくれたものだろう、と。さっきいったような、ちゃんとした仕事を一生懸命してくれる人たちがいるからこそ成り立つ稼業や、と。そういう人たちが余ったおカネと時間を使って楽しんでくれるのが小説というもの。だったら、そういう小説家という職業を支えてくれる人たちには、僕は作品で恩返しをしたい。だから、せめて読んでくれた人たちには「ええもん読んだな」「じゃあ、オレも明日から頑張ろう」と思ってもらえる材料になるものを、と思って書いているところがあるんですよね。



著者紹介

百田尚樹(ひゃくた・なおき)

作家

1956年大阪生まれ。同志社大学中退。人気番組「探偵!ナイトスクープ」のメイン構成作家となる。2006年『永遠の0』(太田出版)で小説家デビュー。09年講談社で文庫化され、累計450万部を突破。13年映画化される。同年『海賊とよばれた男』(講談社 単行本12年、文庫14年)で本屋大賞受賞。著書に『至高の音楽』(PHP研究所 CD付単行本13年、新書15年)、『大放言』(新潮新書15年)、『カエルの楽園』(新潮社単行本16年、文庫17年)、『鋼のメンタル』(新潮新書16年)、『雑談力』(PHP新書16年)、『逃げる力』(PHP新書18年)、『クラシック 天才たちの到達点』(PHP研究所 CD付単行本18年)など。

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