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「ゆるキャラ」に懸ける地域経済活性化事業の課題



2013年03月06日 公開

佐々木 陽一(政策シンクタンク PHP総研 地域経営研究センター 主任研究員)

「ゆるキャラ」と呼ばれる地元PRキャラクターを使って、地域経済活性化に取り組む自治体は1500を超えると言われる。そんななか、2月20日、熊本県は地元PRキャラクター「くまモン」を利用した商品の2012年の売上高が、少なくとも293億6200万円に達したと発表した。関係する1業者当たり2500万円の売上増に貢献した勘定だ。使用許諾も、1月末で約8200件と前年同月比3倍以上に急増した。蒲島郁夫知事は「年間のPR効果は1000億円ぐらいになると思う」と話した。くまモン人気沸騰の要因の1つは、商標利用の容易さにあるが、事業を継続させるためには、事業コストの適切なマネジメントも重要だ。

くまモンは、2011年3月の九州新幹線全面開業に向けた地域振興事業の一環として、10年3月、事業アドバイザーに就いた放送作家・小山薫堂氏(天草市出身)の提唱と、NTTドコモのクレジットサービス「iD」などで知られる水野学氏のデザインにより誕生した。本来ならば、くまモンは新幹線開通でその使命を終えていたはずだ。それが、知事の判断で新幹線開通後も県の統一PRキャラクターとして県産品のPR・広報に一役買うことになった。そして、11年に「ゆるキャラグランプリ」で優勝したのを機に人気が沸騰した。

成功要因の1つは、他の「ゆるキャラ」との管理方法の違いに求められる。第1は、くまモンの著作権を県(ブランド推進課)が保有している点だ。県は、10年度にデザイナーから著作権を買い取った。現在、県産品のPR向上に寄与すると判断されれば、ブランド推進課は、県内外の個人・企業を問わずキャラクター使用を許諾する。第2は、その使用料が無料であることだ。有料だったならば、個人・企業にとっては容易に利用しにくくなったはずだ。使用料金など申請者との折衝にかかる労力を省き、使用目的と許諾要件の照合だけに専念できるとの県の思惑があったのだろう。キャラクターを開放することで、ゆるキャラというよりも「売るキャラ」化させることに成功し、結果、地域にも一定の経済効果をもたらしたのは間違いない。

一方で、そうした経済効果と、維持管理などくまモン事業にかかるトータルコストとの検証は、十分ではない。くまモン誕生からこれまでの著作権購入、管理に伴う人件費、物件費などのコストの総計は、数千万~数億円は下らないだろう。何より、ゆるキャラの世界は、栄枯盛衰が繰り返され、泡沫キャラも数知れない。今後、くまモン事業が安定的に継続されるには、コストとのバランスがより重要になる。現在、県がくまモンの利用料を「当分の間、無料」としている理由は、短期的なくまモンの商標使用料収入よりも、それが生み出す中長期的な県税収入の増加の方が大きい、と判断しているからだろう。しかし、本当にそうだろうか。それは、くまモンの賞味期限次第だ。一定の商標使用料を徴収し、くまモン事業の限界費用と限界利益の均衡を目指す事業構造を構築すべき時期に来ているのではないか。これは、ゆるキャラビジネスに懸ける自治体全てに共通する課題でもある。

 <研究員プロフィール:佐々木陽一>☆外部リンク

 

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