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[仕事が速い人] “相手の時間軸”を尊重して仕事を組み立てる

2013年05月09日 公開

能町光香(人材育成コンサルタント)

『THE21』2013年5月号より》

確認事項があるときは声かけのタイミングに注意

 エグゼクティブ・アシスタント(重役秘書)として数々のグローバル企業で活躍した経験を持つ能町光香氏。上司とその周囲のあいだで「つなぎ役」を果たすなか、時間管理は最も重要なテーマだったと語る。

 多忙な上司の「承認待ち」をいかに素早く処理するか、短時間で的確な情報伝達を行なうにはどうするか――それを考え抜いた末に得た、独自の「仕事を速くする手法」とは、どのようなものだったのだろうか。 <取材・構成:林加愛/写真:まるやゆういち>

 「仕事の速さとは、言い換えれば『先読み力』。今後発生することを予測し、それに合わせて動くことです。そのために不可欠なのは、時間の捉え方を変えることです。自分の予定・自分の時間を中心に考えるのではなく、『相手の時間』をリスペクトし、それを基準に動く姿勢が大事なのです。

 たとえば『7日後までに書類作成を頼む』と言われた場合。ここで多くの人は、自分の予定を頭に浮かべて『7日後までにこう動こう』と考えるでしょう。でもそれを180度転換し、依頼した相手の予定を先読みするのです。相手がその日から数日間出張だとしたら、移動中は時間があるはず。この間に大枠を作ってメールしてOKをもらっておけば、出張終了後すぐに、完成したものを渡せる。結果、期限より早く提出できるというわけです。相手が時間を有効活用できる状態をこちらから作り出せば、仕事は速く回るものなのです」

 このような「相手の時間軸に合わせて動く」スタイルは、日常のコミュニケーションのすべてに反映させていくことができるという。

 「誰かがデスクから声をかけてきて『相談があるんだけど、あとで時間くれる?』と言われる場面がよくありますね。実はこの瞬間も、仕事を速くするチャンスです。声をかけてくるということは、その人はいまなら時間があり、かつその案件について考えているということ。つまり、ちょうどいいタイミングなのです。ならば『いまここで話しますか?』と答えてしまえば話が早い。内容によっては即決も可能です。

 こちらから話しかけるときも同じく、相手にとってベストなタイミングを見極めることが重要です。これを見誤ると『あとで』と言われたまま放置されるので、要注意ですね。

 伝達ツールにも工夫が必要です。通常ならメールにする場合でも、年齢の高い方など、メールを好まない相手なら面倒でも電話する。このひと手間が早い返事につながり、結果として時間短縮につながります」

相手と自分だけの伝達ルールを設ける

 このように、伝達には細心の注意を払ってきた能町氏だが、「相手の都合が良いとき」がなかなか訪れずに苦労したことも多かった、と振り返る。

 「一番もどかしいのは、承認待ちの時間です。上司の承認ひとつで何百人もの社員が一斉に動き始める準備ができている。そのサインをもらわなくてはならないのに、上司は多忙でなかなかつかまらない……という場面を、私もこれまで何度も経験しました。

 ここを切り抜けるにはいくつかコツがありますが、1つ言えるのは『会議から戻った上司のデスクに駆けつける』のはダメなやり方だということ。上司はタフな交渉の直後で神経が苛立っているかもしれない。あるいは『さあ、自分の仕事をするぞ』という態勢になっているかもしれない。その瞬問に話しかけられるのは、決して愉快ではないでしょう。

 そこで私か行なっていたのは、『緊急の場合は椅子の上に赤いファイルを置く』という方法でした。こうすれば座る前に手に取らざるを得ませんし、口頭で話しかけられる煩わしさも比較的少なくて済みます。

 これは、一般的な上司と部下のコミュニケーションとしてはやや常識外れと映るかもしれませんね。でも、それを『特別なルール』として合意していれば、失礼にはなりません。私はさまざまな上司とのあいだで、このような独自ルールを個別に設けていました。秘書だからできたことかもしれませんが、チームや部内で話し合い、共通するルールを設けることはできるのではないでしょうか。

 なかでも効果の高かったルールは、毎朝8時45分から9時の会議開始まで『ゴールデンタイム』です。この15分間を2人だけの時間と決め、その時点での案件をすべて意思決定してもらうのです。その数は、ときには80件にものぼりました。1秒も無駄にできないので、余計な会話は全部省略。書類は無言で渡し、上司も無言でサインします。第三者がこの様子を見たら、険悪だと感じたかもしれないくらいです。でも、これも我々のあいだでは、了解済みのコミュニケーションでした。信頼関係が成り立っていさえすれば、このようなやりとりも可能なのです。

 このレベルまで信頼関係を成立させるには、やはり『相手を尊重する姿勢』を徹底させることが不可欠です。相手の時間軸を基準に行動し、相手が快適に仕事できる環境を提供しつづけることが大事なのです」

 なお、これらの「相手本位の姿勢」は、他者にイニシアチブを委ねてしまうこととは決してイコールではない、と能町氏は断言する。

 「相手に合わせるのは、そのほうが仕事を迅速に運べるからです。そのための最適な方法を実践しているこちら側にこそ、実はイニシアチブがあるといっていいでしょう。

 たしかに相手視点に立つと、自分の都合で動くよりも仕事は複雑になります。多くのことを同時に考えなくてはなりませんし、切り替え力や柔軟さも必要です。ですから、慣れないあいだは大変かもしれません。でもいったん、その試みによってスピーディに仕事が回っていく瞬問を体験できれば、大きな喜びを感じられるでしょう」

親しい関係の構築が時間のロスを防ぐ

 能町氏の語る「仕事の迅速化」とは、自分の処理能力の向上だけでなく、チームや組織のスピードアップも視野に入っている。その過程では、複数の関係者をつなぎ合わせる気づかいも欠かせない。

 「外資系企業では、外国人社長と日本人役員とのあいだにギャップが生じることがしばしばあります。この小さなズレを放置すると、やがて部門間の対立など、大きな溝に発展することにもなりかねません。

 それを防ぐには、やはり対話が一番。関係者のスケジュールを素早くすり合わせ、ランチやコーヒータイムを提案するのも私の大事な役割でした。

 こうした仕事は、秘書ならではのものかもしれません。しかし、『人と人をつなぐ』という視点はすべてのビジネスマンの方々に持っていただきたいですね。一見スピードと無関係に思える作業ですが、パフォーマンスを上げるには、これが非常に効果的なのです」

 人とのつながりを、仕事に反映させていくことの重要性を説く能町氏。そのためには、まずはどのような工夫をすれば良いのだろうか。

 「第一歩はごく簡単。あいさつ、笑顔を欠かさないこと、そしてできるだけ多くの人に、こまめに声をかけることです。

 私はコピーなどで席を立つたび、すれ違う人に声をかける習慣を持っていました。

 『こないだは助かりました!』『ありがとうね!』などなど、歩きながら声をかけることで相手との距離が縮まります。頼みごとをした相手には、『昨日お送りしたメールの件、お願いします!』とリマインドもできて便利です。

 次に、部署や部門を越えた知り合いを増やしましょう。同期会の幹事を務める、同好会やクラブを立ち上げて参加者を募るなど、社内の交流を意識的に増やすこと。そこで普段接しない部署の人と積極的に関わり、仲良くなっておくのです。そうすることで、『わからないことを聞ける相手』が増えるでしょう。こうした人脈は、守備範囲外の出来事や予想外のトラブルに遭遇したときの助けとなります。

 このように、日頃からさまざまな相手と親しくなっておくと、一緒に仕事をするときの『頼みやすさ』が格段に違います。丁寧なメールを、時間をかけて打つ必要はナシ。用件だけ書いて送ればOK。関係を築けていれば、堅苦しい形式を踏む手間を省略できるのです。

 注意したいのは、頼みやすさと比例して『頼まれやすさ』もアップすること。結果、仕事が増えることもあるでしょう。しかし、そこはあえて引き受けて仲間を募り、連携して当たりましょう。チームの団結や成長を促すきっかけになるので、長い目で見ると得策です。

 仕事を速くすることは、それ自体が目的なのではありません。最終目的は、チームや組織の生産性を上げることです。人の視点に立ち、周囲と交流するのも、その目的に向けた行動です。

 それは言わば、生産性を上げるための最初の一石。先々を見越したうえでその一石を投じられる人が、真の意味での『仕事の速い人』と言えるのではないでしょうか」

 

能町光香

(のうまち・みつか)

人材育成コンサルタント、〔株〕リンク代表取締役

青山学院大学卒業後、商社勤務を経てオーストラリアへ留学し、大学院卒業。さらに慶應義塾大学MCCビジネスマネジメントコースで学んだ後、2000年より重役秘書としてティファニー・ジャパン・インク、シーメンス〔株〕等数々の外資系企業に勤務。現在は人材育成コンサルタント・著述家としてセミナーや講演、執筆活動で活躍。ベストセラー『誰からも「気がきく」と言われる45の習慣』(クロスメディアパブリッシング)、『「気がきく」人がやっている53のこと』(ダイヤモンド社)など著書多数。


<掲載誌紹介>

THE21 2013年5月号

[今月号の読みどころ]
先が読めない時代は、自ら問題を発見し、アイデアを出し、解決できる人だけが生き残れる時代です。そのためには目の前にある仕事を早く片づけるだけでなく、仮説から検証まで、仕事のPDCAを高速回転することが不可欠です。しかし、「仕事が多すぎて、考える余裕がない」「段取りが苦手で、雑事に振り回される」などの悩みを抱える人も多いようです。そこで今月号の特集では、各界の最前線でご活躍されている方々に、仕事の効率化から「すぐやる人」に変わる方法、賢い24時間の使い方までをうかがいました。これを読めばできるビジネスマンに変わること間違いなしです。

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