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「英語を話すのに英文法は要らない」は大間違いだ

2011年03月01日 公開

市橋敬三(アメリカ口語表現の第一人者)

《 『THE21』編集部編: 『海外経験ゼロでも「英語ができる人」はどのように勉強したのか?』 より 》

30年以上のキャリアから導き出された結論

「英文法を知っているだけではなく、使いこなせるようにすること」そう、英会話上達の秘訣を語る市橋敬三さん。100冊以上の本を著し、数えきれないほどの英語熟達者を育ててきた「英会話教育界の第一人者」だ。会話における英文法の重要性を説く彼に、英語学習の最短ルートを伺った。

インターネット総合サービスの「楽天」やユニクロを展開する「ファースト・リティリング」など、社内公用語を英語にする企業が増えてきました。ズバリ、英語学習にとって、そのような試みは有効なのでしょうか。

市橋 今後、日本企業はいっそう海外に進出せざるを得なくなり、そうなると英語は必須です。ですから、社内公用語を英語にする企業が増えて当然でしょう。そしてそれは、ビジネス英語を学習する動機付けとしてとても有効だと思います。ただし、学習の方法が問題で、一歩間違うと英語に対する劣等感を強めることになりかねません。
 ビジネスマンの場合、一日も早く英語を使えるようになりたい。しかし、学習する時間をたっぷり取れるわけではありません。ですからついつい 『聞き流しているだけで、ある日突然、英語が話せるようになる』というような謳い文句に乗せられがちです。
 たしかに、そういった学習法でうまくいく人もいるでしょう。しかし実際には、『いくら聞いていても話せるようにならない』『挫折した』という声が多いのも事実です。

また、英語を「読む」ことはできるものの、聞き取りや会話はできない。時間とお金を投じて長い間英会話学校に通い続けているのに、なかなか話せるようにならないと悩んでいる人も少なくないようです。

市橋 30年以上、英語教育の研究に携わってきた経験から言うと、われわれ日本人が英語力を高める鍵は、英文法です。具体的には、中学校の英文法の例文を算数の九九のごとく、何も考えなくても口をついて出るようになるまで暗記する。これに尽きるのです。
 中学1~3年の教科書に載っている英文法の例文を暗記すると、頭の中に英語思考回路ができ上がり、目で見るもの耳に入ってくることをすらすらと英語で表現できるようになる。大げさでも何でもなく、夢さえ英語で見始めるようになります。

しかし、巷には「日本人が英語を話せないのは、最初に英文法を勉強するからだ」と英文法を目の敵にする風潮がありますが...。

市橋 英文法は英語の構造、家で言えば土台、柱です。これを無視していては、本当の意味での英語力はつきません。
 英語を話す環境に身を置けば、とくに英文法を学ばなくても大丈夫だろうと思うかもしれません。たしかに、夫婦生活などを送るぷんにはさほど問題ないでしょう。
 しかし、ビジネスの場で、英語圏の人々と対等につきあっていこうと考えるなら、英文法のマスターが大前提。それができて初めて、相手と対等に会話ができ、英語をビジネスに生かせるようになるのです。

文法を「理解すること」と「身につけること」は違う

ただ、中学生の英文法というと、「そんなものはとっくにマスターしている」と反論が聞こえてきそうです。

市橋 そう言う方も、はたしてきちんとマスターできているでしょうか。私の指導経験では、社会人の99%が中学1年生レベルの英語を正しく理解していないと感じます。一流大学を卒業した人でさえ、完全にはマスターしていない。英文読解はできたとしても、和文英訳となるととたんにミスが出はじめます。
 試しに、「彼はリンゴが好きです」を英語にしてみましょう。とても簡単な例文ですが、この間題に対する答えで多いのは、
He like an apple.
 あるいは
He likes apple.
 です。しかし、正解は、
He likes apples.
 どこが違うかおわかりですか? 答えは後ほどお知らせするとして、次に疑問形についてはどうでしょう。『彼女は親切ですか?』を英訳してください。回答の中で多く見られるのは、
Does she kind?
 しかし、正解は、
Is she kind?
 です。
 三人称の「s」や、リンゴを総称していう場合には複数形にする、be動詞とdoの使い分けなどといったことは、いずれも中学英文法でも初期の段階で学んでいるはずです。ところが、一流大学卒でも正しく英訳できる人は少ない。これはほんの一例です。

しかし、「中学英文法を勉強したのに、いっこうに話せるようになれない」という人も少なくありません。

市橋 そういう方は、英文法を理解しただけにとどまっているからです。理解した後、それを応用展開して使わなければ、英会話力は身につきません。先にも述べましたが、英文法をマスターするいちばんの近道は、英文法の例文を暗記することです。文法上の例文を暗記して、算数の九九のような状態にしてあれば、あとは単語をビジネス用語に替えるだけでビジネス英語になりますし、自分の言いたいことはその例文に当てはめれば何でも話せるようになります。

暗記する際、何かコツのようなものはあるのでしょうか。

市橋 ええ、やみくもに暗記すればいいというわけではありません。まずは、ひとつひとつの例文を、文法も意味も完全に理解すること。また、暗記する際には、英文を黙読するだけではいけません。文法的な理解をしっかり脳に刻みこむためには、小さな声でブツブツ言うのでもダメ。実際に話をするように口を開け、きちんと発音しながら音読することが肝心です。
 例文が九九のような状態になるには、1つの例文について最低80回、理想としては130回、音読する必要があります。その際には精神統一をし、各例文の状況を目に浮かべながら行うと効果的です。
 なお、音読するときには、あらかじめその同じ例文をネイティブ・イングリッシュでしっかり聴いて正しい発音、イントネーションを確かめてから行うのが理想的。英文法のテキストに付録としてついているCDを利用するといいでしょう。

どのくらいの量の例文を暗記すればいいのでしょう。これとこれだけは必ず押さえておくべき、という例文はありますか?

市橋 中学1年レベルの英文法からスタートして、それがマスターできたら2年、次に3年......と進んで、各文法について主要な例文を合計で200ぐらい暗記してください。ただ、200というのは一つの目安で、もっと多くの例文を暗記できればそれに越したことはありません。
 そして大切なのは、暗記した例文を日常生活の中でもどんどん使うことです。家族や友人と話をするときに英語を使ってみたり、見るもの聞くものを英語で考えてみる。そうすることによってだんだん、例文が自分のものになっていくのです。
 この段階になると、耳から入ってくる英語が聞き取れるようになります。また、アメリカ人と会話をしていても、言葉に詰まることなくスムーズに話ができ、こちらの言いたいことを相手に誤解されることもなくきちんとコミュニケーションが取れるようになります。そう、『聞き流しているだけで』リスニング力がつくのも、英会話教室で英語力を磨くことができるのも、すべてその土台、つまり英文法が完全にマスターできていることが大前提なのです。

語彙習得の際の落とし穴

まずは、英文法の例文をしっかりマスターする。ビジネス英語を含め、英単語の語彙を増やすのはその後でも遅くない?

市橋 ええ、遠回りに思えるかもしれませんが、まずは中学の英文法を。語彙を増やすのはそれからです。単語を覚える際も、たとえばビジネス用語であれば実際にビジネスの場でその言語を使うシーンを想定しながら、文章で覚えるようにすると効率的です。
 ただし、ここでひとつ重大な問題があります。あなたの使っている英語辞典に誤りがないかどうか、ということです。辞典が間違っているなど、考えたこともないでしょう。しかし実際には、誤りがたくさんあります。
 たとえば、『shipping company』。この単語の日本語訳を『船会社』としている辞典がとても多いのですが、実際には船だけでなくトラック、飛行機、電車による 『輸送会社』として広く使われています。なぜならshipは『船』という意味だけでなく、動詞で使うsendの意味も持っているからです。『just』は、『ちょうど』と訳している辞典がほとんどでしょう。例文として、It's just 5:00.とあるとしたら、その和訳は『ちょうど5時です』となっている。しかし、正しい訳は『まだ5時です』。『ちょうど5時です』という意味の英語は、lt's exactly 5:00.です。
 また、『ちょうど100ドルです』と言う場合は、$100 even.であって、just $100.とは言いません。
 justが『ちょうど』の意味で使われるのは、時刻や金額などの数字が出てこないとき。たとえば、That's just what I was going to say.=『それはちょうど、私が言おうとしていたことです』という場合なのです。こうした誤りは、挙げればきりがありません。『辞書と首っ引きで英単語を覚えたのに、それを使ったらアメリカ人の商談相手に誤解され、コミュニケーションがとれなかった』という話を、私はよく耳にします。

英語辞典選びには慎重を要しますね。

市橋 ビジネスの場で使える英語を話したいと考えているなら、英和辞典・和英辞典よりも私の書いた『アメリカ英語表現辞典』、『アメリカ口語表現辞典』といった辞典を使ったほうがいいです。より正しい意味、表現が載っています。

英文法をマスターすることのほかに、ビジネス英語のレベルを上げるために抑えておくべきことはありますか?

市橋 日本とアメリカの文化の違いですね。これは、話し方に大きく影響します。
 アメリカは論理社会なので、何か主張するとき、伝えるときには三段論法で、まずは結論を言います。ところが日本では、結論を後に回し、枝葉の部分から話し始める。英語を使うときもその調子で話をしていると、相手のアメリカ人としては『何が言いたいのか。早く結論を言ってくれ』と、イライラしてしまう。そこへもってきて、意味を誤って単語を使うと話がますますちんぷんかんぷんになって、最悪の場合、商談が失敗に終わることになりかねません。
 また、日本は集団社会のため、みな強い自己主張を避けますが、対してアメリカは個人主義社会。まず自分の意見を示さないと魅力がない、個性がないと捉えられてしまいます。とくにビジネスの場では、遠慮をせずにきちんと自己主張をすることが重要です。
 ビジネス英語をものにしたい。そう考えるなら、英文法の例文を暗記しながら、ぜひ、こうした日米文化の差についても学び、研究してください。

 

市橋敬三 市橋敬三

(いちはし・けいぞう)

英語教育評論家、著述家、アメリカ研究家

長年の滞米生活によりアメリカ英語を身につける。オハイオ州の名門校マウントユニオン大学を、優等(cum laude)で卒業。アメリカ研究学を専攻し、アメリカの歴史、政治、社会、地理、宗教、そして、言語であるアメリカ英語を研究したあと、ニューヨークでビジネス界に身を投じた。これらの体験によりアメリカの真の姿を知悉している数少ない知米家のひとり。


<書籍紹介>

海外経験ゼロでも「英語ができる人」はどのように勉強したのか?

『海外経験ゼロでも「英語ができる人」はどのように勉強したのか?』

『THE21』編集部 編
税込価格 840円(本体価格800円)
企業は製造も市場も国外を向いている現在、なによりも必要なのは「英語力」を持った人材です。
 しかし、英語に苦手意識を持っている人も多いでしょう。「過去に何度も挫折しているし......」「学生時代に留学に行っておけばよかったな......」そう考えるあなた-本当に"使える"英語を身につけている人は、国内で英語をマスターしている現状をご存知でしょうか?本書では総勢25名の学習テクニックをご紹介。どんな働き方や、性格にもピッタリの方法が見つかることまちがいなし!

<著者関連著書>

英語がどんどん口から出てくる勉強法

『英語がどんどん口から出てくる勉強法』

市橋敬三(著)/PHP研究所/1,260円
英語の長文読解は得意だけど、リス二ングと英作文が苦手」「英語の文章は読めるけど、話すのはさっぱり」日本人に英語が苦手な人が多いのは、勉強の仕方が悪いからである。英語教育の第一人者が、日本の誤った英語教育に警鐘を鳴らす!

必ずものになる話すための英文法 Step7【上級編】

『必ずものになる話すための英文法 Step7【上級編】』

市橋敬三(著)/研究社/1,890円
「英文法を知っているだけでなく、使えるようにする」という黄金のメソッドを実践する本シリーズの最終巻。やや高度な使役動詞、感覚動詞、未来表現、動名詞、強調表現、分詞構文、仮定法などの文法事項もしっかりと使いこなせるようになる。「超入門編」「入門編」「初級編」「中級編」もおすすめ。

 


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