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マネックス証券社長・松本大の「話し方の極意」

2014年03月27日 公開

松本大(マネックス証券〔株〕代表取締役社長CEO)

『THE21』2014年4月号より》
写真撮影:長谷川博一

 

話したいことよりも相手が興味を持つことを話す

 

相手を観察しながら話し方を変える

 大手外資系投資銀行を飛び出し、ネット証券のさきがけの1つであるマネックス証券を創業した同社社長CEOの松本大氏。同社を成長させるとともに、政府の委員会の委員を務めたり、講演活動を行なったりと、金融の専門家として各方面で活躍している。なぜ、多くの人が松本氏を信頼し、その話を聞こうとするのか。“話し方”という面からお話をうかがった。

 「話をするときには、相手にある行動をしてもらいたいという目的があるはずです。行動するのは相手。ですから、話をするときの主役は、話し手ではなく、相手なのです。

 話し手は、相手に合わせて話をしなければなりません。そのためには、よく観察することです。

 たとえば、何かを説明するとしましょう。そのとき、相手がよく知っている部分を丁寧に説明しても、退屈するだけで、興味を失ってしまいます。また、まったく知らないことを延々と話しても、興味を持ちにくいでしょう。イライラしてしまうかもしれません。観察をしながら話して、興味がなさそうに見えたら、そのときに話している部分は早く切り上げるべきです。

 逆に、興味を示す素振りを見せれば、その部分について、より深く、詳しく話すべきです。相手に合わせて、話し方を軌道修正していくのです」

 相手に合わせて話し方を変えるのは、1対1の場面だけにかぎらない。大人数に向けて講演をするときでも同じだ。

 「私は、講演をするときはいつも、『どういう人が来るのですか?』と確認をしています。聴衆が好むテイストや興味、関心に、自分の話し方を合わせるためです。

 雑誌の取材でも、どういう人が読んでいるのかを確認してから話すようにしています」

 ときには、どのような話をすれば相手が興味を示すのか、わからないこともあるだろう。そんなときには、率直に尋ねてみるのも1つの方法だ。

 「10年ほど前に、ある有名なコンサルティング会社での講演を頼まれたことがあります。パートナー(役員)から新人まで、たしか約60人ものコンサルタントに向かって、なんでもいいから話をしてほしいということでした。これには困りました。みんな優秀な人たちですし、経験も豊富。新人は、経験は少ないとはいえ、かなりの勉強をしているでしょう。どんな話をすれば、彼らは耳を傾けてくれるのか?

 そこで私は、演台に立って最初に『どんな話が聞きたいですか?』と質問をすることにしました。そして、20ほど出てきた質問をいくつかのグループにまとめて、そのそれぞれについて話したのです。

 これは少しズルい方法かもしれませんが、満足していただける講演になったのではないかと思います」

 講演に関しては、聴衆が興味を失いやすい場面として、質疑応答がある。

 「質問者が自分の意見を滔々と語ってしまったり、先に出た質問を、また別の質問者がしたりすると、質問者以外の聴衆全員が興味を失ってしまいます。

 そうした質問にも個々に答えれば、その質問者にとっては満足な講演になるのでしょうが、話す相手として考えるべきは聴衆全体です。

 ですから、そのようなことが起こらないように、まずは質問だけを会場全体から聞いて、それから、まとめて答えるようにすることもあります。Q&Aではなく、Qを集めてからAをする、ということですね」

 

虚勢を張らずありのままに話す

 相手が話に興味を持てていないようならば、興味を持つように話し方や話す内容を変える。これが基本だが、ときには、それが難しいこともあるだろう。そんなときには、話自体ではなく、話をする自分に興味を持ってもらえるように工夫をすることが有効だ。

 「相手がまったく興味のない話に、テクニックでどうにかして興味を持たせることは、かなり難しいと思います。まずは相手が興味のある話をして、その話をする自分という人間に対して興味を持ってもらってから、ほんとうに話したいことを話すしかないのではないでしょうか。

 私がマネックス証券を立ち上げたときは、インターネット自体が現在ほど普及していませんでしたし、ゴールドマン・サックス証券という会社も一般的には知られていませんでしたから、『ゴールドマン・サックス証券出身の松本という人がネット証券をやろうとしている』と言ったところで、興味を持ってくれる人はほとんどいませんでした。話をしようにも、一部の経済紙くらいしか聞いてくれる人がいないわけです。

 そこで私か考えたのは、他の企業の信用を借りる、ということです。それしかないと思いました。

 インターネットが証券業界を変える。そのイメージに合うような、技術で人びとの生活を変えてきた実績のある企業。そして、誰もが知っていて、クリーンなイメージを持たれている企業。そう考えたときに思い当たったのが、ソニーでした。

 ソニーに出資してもらうことができれば、社会からの信用が得られて、多くの人たちに話を聞いてもらえるだろうと考えたのです」

 ここまでは、いわば戦略の話だ。これを実現するためには、当時のソニー社長・出井伸之氏を説得しなければならない。ところが、松本氏は出井氏に会ったこともなかったそうだ。初対面の出井氏に、どのように話をしたのか。

 「出井さんとお会いしたことはなかったのですが、出井さんと親しい知人がいました。ある日、その知人から、『今、出井さんと飲んでいるから来ないか?』という電話がありました。もちろん、一も二もなく、行く、と答えました。

 そのときに考えていたのは、自分を大きく見せることもせず、逆に小さく見せることもせず、ありのままに話をしよう、ということです。

 虚勢を張ったり、空手形を切ったりしたところで、見透かされてしまうでしょう。また、せっかくの機会なのに、卑下しても仕方がない。かえって失礼に当たると思ったからです。どういう事業を考えていて、それにはどういうリスクがあるのか、率直に話をしました。

 結果的には、その夜から数日後、改めて話を聞きたいと連絡をいただき、出資をしていただくことができたのです」

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