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グーグル創業者・ラリー・ペイジ~名経営者の人材育成

2016年4月13日更新

グーグル創業者・ラリー・ペイジ~名経営者の人材育成

グーグルを創業、世界企業へと育て上げた優れた経営者・ラリー・ペイジの人材育成論を、桑原晃弥氏がご紹介します。

経験のない若者が世界的大企業をつくることができたわけ

2016年2月に株式時価総額でアップルを抜いて世界一になったアルファベット社(グーグルなどの親会社)のCEОラリー・ペイジはスタンフォード大学大学院時代にサーゲイ・ブリンとともに検索エンジン「グーグル」をつくり上げ、グーグルを創業、世界企業へと育て上げた優れた経営者だが、それ以前に企業で働いた経験は皆無である。

経験のない若者がなぜ世界的大企業をつくることができたのか。ラリーはこう分析している。

「経験がないのには、プラスとマイナスがある。僕らは予備知識がなかったから、これまでと違うやり方を試すことに抵抗がなかったんだ」

ラリーは世間や経営は知らなかったが、コンピュータに関する経験や知識は豊富であり、かつ常識を疑うという科学者の視点を持っていた。そのことがグーグルの創業期に大いに力を発揮している。

「20%ルール」の導入

創業期のグーグルの原動力はイノベーションだったが、ラリーはイノベーションを阻害するのは「多すぎる予備知識」と「秩序」と「中間管理職」だと考えていた。予備知識、つまり経験や実績は、安定した成長にはプラスに働くこともあるが、創造や改革にはマイナスに働くことがしばしばだ。

やる前から「できない言い訳」を考えるのではなく、「不可能に思えることにも、無視の姿勢で臨む」のがグーグルのやり方だ。一時期、エンジニアをチームに分け、各チームの主任がプロジェクトの進行やメンバーの管理に責任を持つという伝統的な管理手法を取り入れたこともあるが、あまりに官僚的としてすぐに廃止している。

代わりに取り入れたのが3~5人の小さなチームでプロジェクトを組み、「大学みたいに運営する」やり方であり、就業時間の20%を自分自身が望む研究や活動、プロジェクトに使っていいという「20%ルール」の導入である。

「エンジニアの楽園」から生まれるアイデア

人間が最も生産的になれるのは、自分にとって大切なことや、自分が考え出したことを行っているときだ。大きな情熱を持つことができるし、自分が仕事の主人公になれるからだ。さらにグーグルには良好なコミュニケーションや、無料の食事など手厚い福利厚生があり、そこはまさに「エンジニアの楽園」と呼ばれる場所だった。

そしてこうした楽園から生まれるアイデアを拾い上げ、醸成することで次々と製品を生み出し成長していったのがグーグルである。

企業には悪しきパターンがある

ラリーは「企業には悪しきパターンがある」ことをよく知っていた。

創業期の企業はアイデアを生むエンジニアやプログラマーが生き生きと仕事をできるが、成長するにつれ管理者が増え、利益は生むものの面白みのない企業へと変貌してしまう。せめて管理者や経営者が技術に強ければいいのだが、現実には無知なケースが多く、エンジニアやプログラマーは幻滅し、すぐれた人たちが去っていくことになるというのがラリーの言う「悪しきパターン」だ。

ラリーは、こう語っている

「大切なのは、現場の科学者やエンジニアに権限があるような企業文化だ。そして本当に彼らの仕事を理解している人物が管理者になるべきだ」。

だからこそ、意味のない管理職など置かず、エンジニアや科学者が少数のチームで仕事をすることで高度な創造性を発揮する文化をつくり上げようとした。イノベーションを生むにはイノベーティブな人材だけでなく、彼らの創造性を刺激するイノベーティブな文化が欠かせない。それがラリーの人材観である。

参考文献
『グーグル誕生』(デビッド・ヴァイス、マーク・マルシード著、田村理香訳、イースト・プレス刊)、『グーグル秘録』(ケン・オーレッタ著、土方奈美訳、文芸春秋刊)、『グーグル10の黄金律』(桑原晃弥著、PHP新書)

桑原晃弥(くわばら・てるや)

1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者、不動産会社、採用コンサルタント会社を経て独立。人材採用で実績を積んだ後、トヨタ式の実践と普及で有名なカルマン株式会社の顧問として、『「トヨタ流」自分を伸ばす仕事術』(成美文庫)、『なぜトヨタは人を育てるのがうまいのか』(PHP新書)、『トヨタが「現場」でずっとくり返してきた言葉』(PHPビジネス新書)などの制作を主導した。

著書に『スティーブ・ジョブズ全発言』『ウォーレン・バフェット 成功の名語録』(以上、PHPビジネス新書)、『スティーブ・ジョブズ名語録』『サッカー名監督のすごい言葉』(以上、PHP文庫)、『スティーブ・ジョブズ 神の遺言』『天才イーロン・マスク 銀河一の戦略』(以上、経済界新書)、『ジェフ・ベゾス アマゾンをつくった仕事術』(講談社)、『1分間アドラー』(SBクリエイティブ)などがある。

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