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“33歳の女性”を役員に抜擢した老舗「くず餅屋」 社内に生まれた「不満と団結」

2019年05月30日 公開

渡辺雅司(船橋屋 代表取締役八代目当主)

 

33歳の女性社員がナンバー2に!

選挙を実施した人事配置のほうが、社長の好みで決めるような人事よりもはるかに公平ですし、納得感があります。実際、最初はああだこうだと不満をこぼしていた人たちも、ほどなくしてこのシステムを受け入れ、モチベーションが上がっていきました。

たとえば、第1回の選挙時にこんなことがありました。佐藤が執行役員に就任した当時、彼女はまだ33歳でした。もちろん「船橋屋」には彼女よりも社歴の長い人間がたくさんいましたので、そのようなベテランを何人もごぼう抜きして、ナンバー2に大抜擢されたという形です。

当然、ベテラン社員のなかには、この佐藤の執行役員就任に対しておもしろくない者もいたと思います。人づてに退職したいという声も聞いていました。彼らの不満はよく理解できます。

ただ、あえて私はそこで彼らの気持ちに寄り添うわけでもなく、突き放して「挑発」しました。

過半数という圧倒的な支持を得ることができたのは、単に「好き・嫌い」という次元の話ではなく、佐藤恭子という社員の働きぶり、そして実績を周囲が正当に評価したことでもあります。

「納得がいかないのなら、佐藤を上回るだけの評価を得て、次の選挙で皆の信頼を得るだけの話。そのリベンジもしないで、文句ばかり言ってもしょうがないのではないか」。その一点で通しました。

結局一人も退職することなく、今では「船橋屋」に欠かすことのできない、リーダーとして活躍してくれています。つまり、選挙で敗れた人間も「周囲の評価」を真摯に受け入れたことで、リーダーとしての自覚や責任感が芽生え、成長できているのです。

「リーダー」は、組織に長くいるからとか、社長に気に入られているからといった理由でなるものではありません。組織のメンバーたちの「評価」が、その人をリーダーへと変えていく、その本質的な部分を「選挙」という「ワクワク」するイベントを通じて、みんなに知ってもらっているのです。

 

「船橋屋」が目指す「麦わらの一味たち」

船橋屋の商品開発研修の風景
(写真=内定者が主役の商品開発研修)

「リーダーズ総選挙」をスタートさせたのには、もう一つ大きな狙いがあります。それは、「船橋屋」を「麦わらの一味」にするためです。

ご存じのように、「麦わらの一味」とは『ONE PIECE(ワンピース)』(尾田栄一郎作)の登場人物たち。このコミックは、全世界で累計4億3000万部も発行されています。

「海賊王」を目指している主人公・ルフィが個性的な仲間たちと力を合わせて、さまざまな苦難を乗り越えていく冒険が描かれており、テレビアニメ化や映画化もされるなど、子供だけではなく、大人からも非常に愛されています。

「船橋屋」の組織マネジメントは、そのルフィが率いる「麦わらの一味」という海賊の組織をイメージしていただくと、非常にわかりやすいと思います。

「麦わらの一味」と呼ばれるように、この組織のトップはルフィです。しかし、他のメンバーたちとルフィのあいだには上下関係はありません。ルフィがリーダーシップを発揮して、メンバーを引っ張る場面はほとんどないのです。

あくまで彼らは「仲間」同士であり、「海賊王になる」という目標を掲げるルフィを仲間とみなして、そのビジョンに共感して「麦わらの一味」に籍を置いています。

「船橋屋」もこの「麦わらの一味」のような組織を目指しています。

つまり、トップがリーダーシップを発揮して、みんなを引っ張っていくようなものではなく、ビジョンに共有した「仲間」が自発的に動く。「リーダーズ総選挙」はその好循環を促すための仕掛けの一つなのです。

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「オーケストラ型組織」を引っ張るのは指揮者ではない >



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