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「若く見えるね」もセクハラに? 危険な上司の“アンコンシャス・バイアス”

守屋智敬

2019年06月26日 公開 2022年12月21日 更新

「若く見えるね」もセクハラに? 危険な上司の“アンコンシャス・バイアス”

<<親切心からやってあげたつもりなのに、相手はなぜか不満顔……。そんなすれ違いは、あなたの心の奥に潜む‟アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)“が原因かもしれません。

「普通はこうだろう」といった思い込みによって生じるズレは、社内のメンバーの士気を下げるだけでなく、ハラスメントやコンプライアンス違反のもととなることも。

組織風土などさまざまな企業の課題に潜んでいるアンコンシャス・バイアスについて、アンコンシャスバイアス研究所代表理事でコンサルタントの守屋智敬氏に聞きました。>>

※本稿は守屋智敬著『「アンコンシャス・バイアス」マネジメント 最高のリーダーは自分を信じない』(かんき出版刊)より一部抜粋・編集したものです

 

「普通はこうだろう」は危険

「無意識の偏見」「無意識の思い込み」「無意識の偏ったものの見方」などと訳されるアンコンシャス・バイアス。

グーグルをはじめとする世界の大手企業をはじめ、医療法人、学校法人、NAO、NGO、自治体などが、この企業のさまざまな課題に潜んでいるアンコンシャス・バイアストレーニングに取り組んでいます。

「アンコンシャス・バイアス? それって一体なに?」という人のために、まず、ひとつ実例を挙げてみましょう。

育児休業中のAさんは、来月からの職場復帰を楽しみにしていました。そんなある日、上司のC課長から携帯にこんなメールが届きました。

「来月からいよいよ復帰だね。ところで復帰先は総務部になりましたよ! 子育てしながら、営業での仕事復帰は大変だと思ってね。詳しいことは、また総務部の課長から連絡を入れてもらうようにしますね!」

Aさんはこの課長からのメールに落ち込み、悲しい気持ちになったといいます。というのも、Aさんは営業部以外の部署に復帰することなど想像したこともなく、お客様対応のために、突発の残業や出張もあるかもしれないけれど、そうなっても大丈夫なように家族と相談しながら復帰準備を進めていたからです。

入社以来、営業ひとすじ。成績もいつも良かった。上司はきっと私の復帰を待ち望んでくれている、そう思っていたといいます。

しかしながら、C課長の意識の置きどころが違ったのです。C課長には「子育てしながら、営業職での復帰は難しい」「Aさん本人も、営業に戻ることは望んでいないだろう」「今回、総務へ異動できることを、Aさんはすごく喜ぶだろうな」という思い込みがあったそうです。

「自分の考えは正しい」「良かれと思って」と思い込んで行動してしまったことが、結果としては、Aさんに悲しい思いをさせてしまったのです。
この‟無意識の思い込み“こそがアンコンシャス・バイアスです。

「普通はこうだろう」「いつもこうしていたから今回もこうだろう」という考え方は、すれ違いの原因になることがあります。万人に当てはまる‟普通“はありませんし、また、「似たような過去事例に照らし合わせて」判断しても、メンバーの気持ちや事情は、その時々、一人ひとり違います。

今回のケースでいくと、C課長は、過去に育児休業から復帰する社員全員から、「営業には戻りたくない。小さな子供がいるので、スタッフ部門に異動して復帰したい」と言われてきたそうです。この経験からAさんも同じだろうと決めつけてしまったのです。

こういった決めつけは、場合によっては、

「私は期待されていない」
「私は必要とされていない」
「私はいる意味がない」

といった思考につながり、知らず知らずのうちにメンバーのやる気を損ねてしまうため、十分に注意が必要です。とくに評価・育成・配置・昇進を考える場面で、無意識のバイアスに影響を受けがちです。そのことを意識して、リーダーは一人ひとり、その時々に向き合うことが大切なのです。

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