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社会

「ていねいな暮らし」に疲れた店主が開いた、不思議な「本屋」

山下賢二,松本伸哉

2019年09月12日 公開

「ていねいな暮らし」に疲れた店主が開いた、不思議な「本屋」

2015年、京都の名物書店「ガケ書房」の店主は店を移転・改名し、仲間と「ホホホ座」を新たに立ち上げた。ホホホ座は本屋であり、お土産屋であり、お菓子屋であり、「部屋」である……「店名を共有する」という不思議な仕組みで、数年で全国10店舗に。フランチャイズや拡大戦略をとらないのは続けるためにあえて取った「方法」だった。

※本記事は『ホホホ座の反省文』(山下賢二・松本伸哉著、ミシマ社)より、内容を抜粋して掲載したものです
 

編集集団・ホホホ座とは?(山下)

ホホホ座は、一般的には本屋だと思われていますが、その母体は4人の座員による編集企画グループです。

本はもちろん、雑貨・食品・音源・イベントなどを企画、制作、販売していく集団です。メンバーは、山下賢二(座長)、松本伸哉(顧問)、加地猛(ニューリーダー)、早川宏美(デザイナー兼イラストレーター)の四人衆です。

しかし、このホホホ座といういつまでたっても口に馴染まない名前を初めて聞いた人たちはたいてい、こう尋ねます。

「どういう意味なんですか?」

そういうとき、僕たちは決まり悪く、こう答えるのです。

「いや……それが、特に意味はないんです」

すると、質問した人は少し笑いながら、またまたぁみたいな顔。
そこで僕たちは急いで、

「実は……このホホホというカタカナはシンメトリーで、縦でも横でも一本線を書けば、文字が連なるんです。さらに漢字の座まですべて繫げることもできるんです」

と補足すると、なんとなく納得してくれます。

でも本当のところ、そこに意味はないんです。ホホホ? それに、座? 僕たちも言いづらいです。喉がむかつきます。電話で名乗るとき、幾度、名前を変えてやろうかと思ったことでしょう。

しかし、そこに至った経緯というのはもちろんあります。それには少しぞんざいな物語を聞いていただく必要があります。時間ありますか? この忙しいご時世に。

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