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「いじめを絶対にゆるさない!」が生み出してしまう“新たないじめ”

2020年02月21日 公開

工藤勇一 (千代田区立麹町中学校長)

 

トラブルを自律に結びつける

子どもたちの生活のなかでは、どうしたってトラブルは発生します。

そのときに、社会でよりよく生きていくためにも、子どもが自分の力で解決できる力を身につけること、一人の力で足りなければ周りの力を借りながら解決できるようになることが求められます。

子ども同士のトラブルに対して、どう仲良くさせるかといった観点から問題解決を進めるのではなく、このトラブルをどう子どもたちの自律に結びつけるかが最上位目標だということを、誰もが心にとめておかなければなりません。

たとえば、「一人だけ違うことをしていたのが気に入らなかった」というのであれば多様性について学ぶきっかけになるでしょうし、「ただふざけて遊んでいただけ」というのであれば、相手との距離感を考えるきっかけになるはずです。

いじめとふざけていることの境界線はとても曖昧です。

親しい友達とは多少ふざけて遊んでも問題になることはほとんどありませんが、そこまで親しくない人に同じようなことをすると、トラブルになります。

親しい友達に言っていいことと、親しくない友達に言っていいことは違うのです。

私たち大人だって家族や友人には気安く接しても、初対面の人に対しては丁寧な態度になるでしょう。

子どもたちはそうした距離感だって、学んでいる途中なのです。

「誰にでも優しくしなさい」という言葉はたしかに理想的な言葉かもしれませんが、人との距離感を教えるには妨げになってしまう気がします。

子どもが人間関係の壁にぶつかるのは当たり前のことです。この壁にぶつかりながら、さまざまな経験を通して、人との距離感を学んでいくものだと思います。

一番の理想は子ども同士でトラブルを解決することですが、なかには自分の力で解決できないこともあります。

その一つひとつのトラブルに対して、見守ってあげていればいいのか、大人が関わったほうがいいのか、関係機関と連携したほうがいいのか、警察などを含めた学校外の組織が介入しなければならないのか……、大人はそれを見極めながら、上手に子どもたちの自律を支援していくべきです。

 

子どもはそもそも未熟なもの

また、いじめる側の理論として、「やられるほうにも原因がある」というものがあります。

「あいつが嫌な奴だからやった」ということです。
もちろん、人間ですから「苦手な相手」「嫌いな相手」がいるのは仕方がないかもしれません。

ですが、相手のことを嫌いだからといって、攻撃してもいいのかというとそれは違います。

嫌いな相手を好きになるのは難しいかもしれませんが、その気持ちを表に出さないことはできますし、そうするべきです。

まだ小さかった息子が「幼稚園に嫌いな子がいる」と悩んでいたとき、私はこう言ったことがあります。

「お父さんにも嫌いな人がいるけれど、だからといってその人に意地悪はしないよ。きちんと挨拶もするし、本人に嫌いだと言ったりはしないよ」
このように、「みんな仲良く」という理想論ではなく、「心と行動は切り分けられる」ということを伝えることが大切ではないかと思うのです。

子どもたちの心に、無意識に人の好き嫌いを植え付けないよう、大人たちも気をつけなければいけません。

たとえば他の子について何気なく、「あの子、性格が悪いからね」などと子どもの前で口にしていませんか? こういった考え方の行きつく先が、

「やられるほうにも原因がある」という主張です。

たしかに、大人から見たときに、未熟な行動をする子どももいます。
ですが、本来子どもは未熟なものなのです。思ったことをそのまま口にしてしまったり、抑制がきかなかったりすることもあります。

子どもの性格が悪く見えるのも当たり前のことです。今はまだ、社会性を身につけるための成長途中なのですから。

とくにアスペルガー症候群の子どもには、空気を読むのが苦手で率直すぎる発言をしてしまう特徴があり、相手を傷つける言葉を悪気なく発してしまうこともあります。

でもその子が、性格が悪いとは言えないはずです。

大人が子どもたちの振る舞いを、もう少し温かく見守ることも必要ではないでしょうか。

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