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「自ら望んで留年するアメリカの学生」から見える“日本と世界の差”



2020年12月29日 公開

柳沢幸雄(北鎌倉女子学園園長)

教室

2020年3月まで開成中学・高校の校長を務め、現在は北鎌倉女子学園の園長である柳沢幸雄氏。

同氏の著書『ハーバード・東大・開成で教えてわかった 「頭のいい子」の親がしている60のこと』では、50年近い教員生活の経験と、親としてアメリカでの体験を踏まえ、親が子どもとどう関わればよいかをアドバイスしている。

※本稿は『ハーバード・東大・開成で教えてわかった 「頭のいい子」の親がしている60のこと』(PHP研究所刊)より一部抜粋・編集したものです

 

自ら留年するアメリカの学生

今の日本の教育環境では、その学年で示された学習指導要領を1年間ですべて終え、生徒は学習指導要領の内容を、しっかりと理解することを望まれます。うまく理解できない場合、「勉強についていけていない」と、保護者も子どもも心配します。

ところが、アメリカの場合は、あっけらかんと、「今年度の授業についていけないので留年して、もう1年しっかり勉強します」と決める生徒や保護者もいるのです。

「わからないまま進級しても、その先も理解できなくなる。義務教育期間の子どもは学習内容を理解できるように教えてもらえる権利がある」という判断です。そんなことはなかなか日本ではできない、というのは当然ですし、そうしなさいと言っているわけではありません。

しかし、2020年の3月からの1年間は、特殊なのです。この1年間に起こることに、あまり思い悩まないほうがいい、というのが私の意見です。

日本人は、年齢によるスケジュール感が非常に明確で、「12歳になったら小学校を卒業して中学校に行く」というスケジュールをあえて変える人はほぼいません。

けれど、「アクシデントがあれば、留年してもいい、休学してもいい」。小さい頃、病弱だった私は6歳での小学校の就学を延期して7歳で入学しました。

日本では大学を卒業すると、すぐに就職するため、就職活動にもシビアに取り組みます。どうしてもどこかに就職しなければいけないと思うので、ともすると意に添わない就職先でもあきらめる、ということが起こります。

しかし、アメリカでは、「大学を卒業したらバックパッカーになって世界中を見てやろう」と、世界に飛び出す若者もいます。「就職は、世界を見てからでいい」と。

今の日本では、なかなか勇気が必要な行為かもしれませんが、そのほうが、社会を見据える大人になれるかもしれません。無理に就職活動をするのではなく、何か専門的な勉強をしたり、資格を取ったりしてから就職する、というのもひとつのやりかたといえるのです。

「こうでなければいけない」という思い込みをはずせば、この激動の時期も、もう少しラクに乗り越えられます。

いつもと状況が違う時期には、これまでの自分を振り返ったり、新たな時代のために知恵を絞ったりと、今までできなかったことをする好機です。楽観的に物事を考えることも、時代を乗り切る知恵です。

 

かつては盛んだった「日本のグローバル化」

我々は、自分の国の常識や文化などにとらわれず、他の国の文化も知る必要があります。そしてその先には、国境を越えた交流があるのだ、と考えるとよいでしょう。いわゆるグローバル化です。

このグローバル化は私なりに解釈すると、自分のいた小さな地域という概念を飛び越えて、広い世界に飛び出していく意味で、「広域化」と理解するのがよいでしょう。

そして、世界という視点ではなく小さな単位で考えると、日本では約50年前の「広域化」の現象が思い起こされます。その当時、日本には「集団就職」というものがありました。

各地の農村の中学校を卒業したばかりの若者が列車で上野駅に降り立ち、東京の企業や店舗に集団で就職しに来たのです。義務教育しか受けていない当時の農村の中卒者は、家庭の所得が低く、高等学校への進学は難しく、かといって地域にはよい就職先もない。

そこで、高度成長で潤っていた東京や大都市の企業へ就職し、経済的にも自立させようという親や学校の意向もあって、彼らは都会にやってきたのです。このような「広域化」は、日本においても海外においても、社会が不安定なときに起こる現象です。

ちなみに当時は、東北にいたら東北弁こそ自分の言語で、江戸弁は英語のようにわからない言語でもあったと思います。彼らは地域で農業をするよりはいいかもしれないという、不安の入り交じった期待を込めて、東京という広い世界に飛び出したのです。

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